表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

136/181

133.休憩

湿地帯は、水場は勿論、長く育った草や泥土も多く歩きづらい。

なので暗黒森を目指して一直線と言う訳にも行かず、ロォレストから暗黒森への避難民等が使ったのと同じルートをゆっくりと歩いている。


「途中、臨時で作った休憩所があるから、そこで一泊して、明日に暗黒森に入る。って感じでしたっけ」

「そうだ。日が沈む前には休憩所に着くはずだ」

「うむ…、ふぅ…。なかなかどうして…、疲れるのう」


「無理を言って、プラムさんに送迎して貰えば良かった気がして来た…」

「わしらが乗ってたフローターはムゥムェにあるのだ、流石にそこまで手間を取らせる訳にもいかん。プラムは家族も待たせておるのだしな」

「そうですね。…メイリーさん、大丈夫ですか?潜ってもいいですよ」

「い、いえっ、頑張るわっ!み、皆と、出来るだけ一緒に、いたいものっ!」

「こういった場所を歩くのは、平地を歩くのとは別の筋肉を使うからな。一旦休憩にするか?」


ジュニファの提案に、特にユリとメイリーの疲労を見たママルが答える。

「そうですね、一回休みましょうか」

「もう20分くらい歩いた所の林に良い場所があるから、そこまで頑張ってくれ」

「わ、解ったで」「が、頑張るわ!」


「ほんとにキツくなったら言ってください。私が抱えますので」

「う、うむ…」

「テフラちゃんにおんぶされたいかも…」

「お主…、それは疲労で言っとるのとは別ではないのか?」




一行は、件の林で1時間程休息した後、また歩き出し、

なんとか17時過ぎくらいに休憩所へと辿り着いた。


そこには樹の家がいくつか出来ていて、

元の樹がそれほど巨大ではないため、それぞれ2、3人が寝れる程度の大きさだ。


中心部にあたる地には、焚火の後が残されている。

「≪アライア:着火≫」

ジュニファが魔法を唱えると、木炭が赤く燃え出した。


「ママル、テフラ、悪いけど、適当に薪を集めてくべてくれ」

「解りました。あ、俺行って来るので、テフラさんも休んでて」

「あ、ありがとうございます…。ふぅ」


そう言ってテフラも、皆に倣い腰を降ろす。


「テフラも意外と疲れていたのか」

「ジュニファさんが言ってた通り、普段使わない筋肉を使った感じで…」

「はは、まぁそうか」


「はぁ~…、私…お腹減っちゃったわ…」

「食事は…、ママルが用意してくれるんだったか?」


「まぁ、そうだのう…、いや…、うむ…なんか」

「…全部やってもらってますね…」

「そう!ジュニファに改めて言われると、より実感してしまうわい」

「ジュニファさん、何か、いいお酒とかないですか?」

「うちの村で、ウイスキーを作ってる奴がいるな、私はあまり好きでは無いから、

詳しくはないけど、知ってるのはそのくらいだな」


「是非ママルさんに飲んでもらって欲しいです、後は…、私をまた撫でてもらおうかなぁ」

「……よ、よいのではないか?」

「?」



少しするとママルが帰って来て、焚火の横にドサリと薪を置いた。

「おまたー…、っしょっと」

「多いのう」

「まず適当にね、結構シケってるのもありそうだし、選んで入れてこ」

「そうだね、折角だし他のも乾燥させて、近くの家に保管しておくとするか」


「じゃあ飯出すわ、ジュニファさん、何が好きですか?」

「好きな物…?ふむ……、木苺とか、鹿肉、と言った感じだな」

「………なるほど…、じゃあ、シュラスコでいいかな」

「…なんだそれは?」

「肉の串焼き、パイナップル焼いたのもあって、肉の油をサッパリさせて無限ループさせるのが最高」


(ゴクリ)

「わ、私もそれが良いです!」「わしも食べてみたい」「私も!」

「じゃあ、折角焚火あるし、これで温めて食おう、沢山出すわ」




皆が食事を楽しんでいる。


「そういえばママルよ、お主の能力、自分で解ったとか言っておったが、

そのアイテム袋とは結局どういう物なのだ?」

「…………あ、あんまり言いたくないな」

「ど、どういう事だ……?」


皆が食事の手を止めた。


「い、いや…、まぁ、気にしないで、ほら、まじ旨いっしょコレ」

「ホント美味しいですよ、いくらでも食べられそう、エールが飲みたいなぁ」

「ママルちゃんありがと~~」


「いや、本当に美味しいし、凄いな…、と言うか、露骨すぎる話題反らしだな。

こんなものは魔法でもないだろ、気になるな…」

「だな、ママルよ、白状せい」


「…………ちょっと待って、一回言い方考えるわ」

「なんだそれは」


「…………………………神様が作った物。だな!」


要するに、言ってしまえばアイテム袋の中身まで含めて、ママルと言う存在の一部なのだ。

ママルの肉体が生成された時、同時に出来た、ママルの精神が作り出した物。

アイテム袋から取り出すと言う行為をした瞬間、アイテムの素となるママルのエネルギーから生成される。

他に例えば、食べ終わった食器が消えるタイミングは何てことは無い。

ママルが食べ終わったと思ったら消えるだけだし、

収納できないのは、アイテムの素のエネルギーに再分解すると言う機能なんか無いためだ。

装備品に限っては、ママル自身の肉体に近いため可能だが。


そしてアイテムは自分の一部であるにも関わらず、消費されるだけで再生しないのは、そう言う物だと思い、そう言う物として作られたからだ。



「それは…つまり…、いや、そうだな、うむ…」

「神の食事など、流石に不敬じゃないか?と言うか、冗談だろ?」

「いえ、冗談って訳じゃないと思いますが…」

「神様ありがと~~」






――――



「ローゼッタさん…すみませんでした…」

「いや…、オレットが謝る事ではないよ…、そうか…、聖騎士だけで、9人も…」

「亡骸はロォレストで埋葬しましたが、遺族の方々の意向によっては」

「解っている…、全面的に、叶えてあげてくれ……」

「ハッ!」


オレットが部屋を後にすると、ローゼッタは1人、思いを馳せる。


(悪魔…、本当にいるとは…、ママル君達の行いは、思っていた以上に、世界にとって重要なのかもしれないな…。

そんな中、ただ1つの、この国に拘る私は、愚かなのだろうか…)


それから、亡くなった聖騎士達それぞれへの思い出を反芻する。


「……………………くそっ…………………」


だが、後悔や憤怒に時間を割いている暇など無い。

仕事は山積みで、結局ロォレストに行く事など出来なかった。


ローゼッタはここ一か月近くで、あまりにも大切な人達との別れを経験しすぎた。

だがその一方で、大切にしたい出会いも確かにあった。


(また、ママル君達に会いたいな…)


すると、抱えの侍女が部屋の扉をノックする音が聞こえた。

「……入り給え」

「…ローゼッタ様!こちらを」


そう言って一通の文を手渡され、ローゼッタは真剣な面持ちで黙読すると、

安堵の声が漏れた。


「…………………良かった…………」

「あ、あの…」

「後日、国王陛下と共に、サンロック国の王都、アルカンダルへ赴く」

「し!承知しました…、しかし、あの…、大丈夫なのでしょうか…。

サンロックですよ?最近国王は変わったらしいですが…」

「…きっと大丈夫さ。そんな気がするんだ……」


そう言って窓から見上げた空は、とても澄み渡っていた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

第10章完結、そしてこれにて【第一部・完】とさせて頂きます。

とは言え、変わらず続けて行きます。

一旦、週一更新に戻ります。


宜しければ、ブクマや評価等して頂けると励みになります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ