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131.相対

仮屋に戻ったママル達4人は談笑している。



「そういや、神様の話に戻るけど。色々解ったけど、結局巫女とか、社がどうして存在してるのかは解んなかったね」

「うむ…、だがまぁ、よい」

「そうなの?」

「いや、勿論知りたい事は知りたいが。何と言うか…、今はこう、一件落着した平穏が心地よい」

「ま、それは解るな。まじで」


「そうですねぇ…。はぁ…」

「テフラさん、どうかしたんですか?」

「いえ…、その…、私も結構強くなってると思ってたんですけど、役に立たなかったなぁって」


「私もっ…、なんか…、ちょっぴり心配になっちゃった…、これからの事とか」

「それは当然、わしもだな…」


「まぁ、アルタビエレみたいなのはそうそう出て来ないと思うけど……」

「言わんとする事は解るが、何も確証のない話だで。しかもママルは以前よりも強くなったのだろ?」

「まぁ…、そうっちゃそうね…」

「…なんだか歯切れが悪いのう」


「やっぱりあの反動があるからですかね?」

「いえ、それは良いんですけど…、と言うか、ごめん、そこの話じゃなくて。

一応、閻魔王スキルに、皆を強化する奴が、あるっちゃあるんだけど…」


「何っ!詳しく聞かせろ!」

「お願いします!」

「ママルちゃん!お願い!駄目ぇ?」


「いや、駄目ってか。まぁそうだね、とりあえず渡しておこうか…、

何か、念が篭っている様な道具とかない?」


そうして、ユリはシイズを発った時にルゥから貰ったお守りを。

テフラは故郷からずっと身につけているネックレスを。

メイリーはナイフを取り出した。


「まぁ、こんな所かのう…」

「…言葉で言うとちょっと嫌な感じだけど。今から、これらを呪具にする」

「…と言うと?どうなるのだ。使うとお主の様な反動が?」


「俺にね。その呪具で呪う対象は俺になる」

「はぁ?」

「なんですかそれ…」

「や、やっぱりやらなくていいわ!」


「まぁ、だから、結局皆使ってくれない気がしたんだけど、でもやっぱ持っといてよ。それだけで結構、なんて言うか、俺が安心出来るからさ」


すると、3人は顔を見合わせた後、ママルの様子を伺う。


「いざって時の護身用的な感じでさ。お願い」

「まぁ…、そうだな……」

「…解りました」

「それでママルちゃんが安心するなら…」


「じゃぁ。………≪ガーディア:羅刹印≫」

ママルがそれぞれの道具にスキルを唱えると、呪印が浮かび上がる。

それは浸透する様に染み込み、消失する。



「それぞれ身につけて、握って、そうしたらスキルが宿ると思うから、そのスキルを使ったら、意識的に止めるまで、各々の能力が色々変化した状態になるハズ」


言葉に従い、それぞれが呪具を身につけて握った。


「ふむ…」

「………理解しました」

「…呪力って、モンスターになってた時に感じた物と、やっぱり近いのね…」


「俺の事は置いといても、呪力の、悪感情エネルギーに気持ちが引っ張られる可能性もあるから、ホント気を付けてね」


「まぁ、そこは大丈夫じゃないかの?」

「いやいや、なんで?危険性は解るでしょ」


「根拠はないんですけど、皆さんがいたら、きっと大丈夫かなって私も思います」

「っ!!」


なんとも真っすぐなテフラの言葉に、ママルは赤面してしまった。


「難しいのはよく解んないけど、心が、安心できる場所にあったら、

私ももうモンスターになんてならないと思うわ。

私が嫌な子になってたら、ちゃんと叱ってね?」

「うむ。様子がおかしかったら、互いが抑止力になればよい」



(魔法薬等の事は抜きにして、実際、他者への攻撃欲は、自身が満たされない感情が起源になりやすい。例えば幸せな家庭、友達なんかの環境を築き、それに満足している人がモンスター化する事は考えづらい。

欲とは、何か足りないものを埋めようと生まれるものだから……。まぁ、十分な物を手にしているのに、それに満足出来なくなる奴らってのがいる事が問題なんだけど。…てか、なんか呪力について理解が深まった感覚があるな…)


「ま、じゃあ、その、そんな感じで…」

「はい」「わかったわ!」




「了解だで、…で、それはそれとして気になったのだが、

その閻魔王とか言うのになる前後で、スキルの他に何か変わったことはないか?」


「なったってか、元々そうだったのを理解したって感じ」

「肉体と精神のズレ…、己が何者なのかが、ずっと少し曖昧だったと言った所か…」

「……まぁ、そんな感じ…」

「ふむ…」


「それで。………いや……、やっぱなんでもない」

「……おい、お主よ」

「いや!まじで!なんでもないから!ホント」


「ママルさん…、もういいじゃないですか…、そんな…」

「お主が心配していた、わしらとの力の差もある程度は埋められたのだろ?何を抱え込む必要があるのだ」


「いやっ!ちがくて、てか!まじで!いいから!ホント…」

「ママルちゃん……」



3人の、なんとも切ない表情を見て、数分の後、

ママルは観念したのだが、どう話したら良いかが解らない。


「あの…、いや、ってか…、普通に、その…。そもそも話し方がムズいって言うか…」

「ゆっくりでよい。話とくれ」


「………いや、てか待って!その、そもそもシリアスな感じの奴じゃないから!この空気がもう違うって!」

「?……どういう事だ?」


「いや、だからさ、その、俺は、俺がこの、ママルって言う存在だと、

自分の根っこからきちんと理解したワケ、この世界に生きているって言うか」

「あぁ、それは解っとるで」

「いや、だから、……解ってないって」

「?……………どういう…」


すると、メイリーが大声を上げた。

「解った!!ママルちゃん!女の子になったのね!!」

「は?」

「………えっと」


「まぁ、そんな感じ…、ってか、要は、性自認てのが、変わった…気がする…」

「…き…気がする、とは、どういう事なのだ?」


「いや、解んない」

「解んない?」


「いや、だからさ……、別に、俺の性格とか、考え方とか、趣味趣向とかは、何も変わってないし…」

「………?」


「も、もういいでしょ!思ってた事も、話しづらかった理由ももう言ったし!終わり!」




(この場合、やはり同性愛者って事になるのだろうか。

としたら、以前の俺は何て言うんだ?

いや、めんどくせぇ、どうでもいいや。

こんな言葉なんて、誰かが勝手に決めた枠組みにすぎない。

俺の気持ちを表す言葉なんて、俺しか持っていないんだから)



そもそも、性別とは何をもって決めるのだろうか。

勿論、生物学的な話ではなく。


例えば、何もない世界に、自分と言う存在がポンと生まれた時、

男も女もない、ただそう言う形の、そういう仕組みの生物が居ると言うだけだ。


全員が同じ力であれば、力の強弱と言った概念は存在しないだろう。

喜怒哀楽が存在しなければ、感情と言う一つの言葉で足りてしまう。

男がいなければ、女と呼ぶ意味はない。


何かをカテゴライズする事は、常に相対の中にしか意味はないのだ。


そしてママルの現状を正しく相対的に見る事が出来る物など、存在しない。

少なくとも同じ種族すら、他には1人もいないのだから。



「な…なんか、すまんかったな…」

「私から見たママルさんは、以前から変わってませんよ」

「ずっと可愛いわよ!」


「や、やめて……、もう、この件について何も言わないでくれると、助かる…」

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