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126.裁き

アルタビエレは、その特性で自身の存在を消しながら、

神の元から情報や、その神の思考を、転移魔法を使い、盗んだ。


スキルと言う物の仕組み、生き物の仕組み。



そうか、そうなのであればと、この地に悪魔を呼ぶ方法が解った。


この世界を、悪感情エネルギーで満たす事だ。

そう言う土壌が必要なのだ。

海は神聖力で満ちている。悪魔が渡る事は出来ない。

まず、大地を全て染め上げる必要がある。



そのために、様々な方法を取った。

戦いを煽り、モンスターを増やし、低級悪魔の力も借りた。


悪感情エネルギーを使用できる、呪術師と言う存在を知り、その集団を作った。

世界各地で、仲間を沢山作った。



すると、徐々に、殆どの地で中級まで呼び出せるようになったが、

未だ彼女には届かない。



最後に残ったのは、ここ、アルルと言う大陸のみだ。


しかしアルル大陸は、他の地よりも神聖力が強い。

中々思い通りに、悪感情エネルギーを増やすことが叶わない。




そんな時、巫女と言う存在を知った。

その星霊力と言う物に目をつけ、1つの計画を練り実行した。


それは、こちらと異世界、2つの世界を繋ぐ穴を空ける事だ。


善性エネルギーは異世界へ、悪性エネルギーはこちらの世界へ。

消したり、書き換えたりするよりは、ただ入れ替える方がずっと簡単な筈だ。



そして穴を空ける方法も、同様に神から得た知識を元に構築できた。


星霊力。これは、個人と神の意識の通り道を開く力。



2つの世界、同一の座標に当たる場所に、星霊力を蓄える。


双方向から力を溜めさせて、一気に開放してやれば、エネルギーの通り道が貫通するはずだ。






1回目、両世界を開通した。理論は間違っていなかった。

巫女の肉体は結界術を宿した魔力で満ちていたので、

星霊力で貫通させた道を固定するため触媒として使った。


だが、うまく行ったと思った矢先、星の免疫機能とでも言うべき事象で穴は塞がれた、だがあまりにエネルギーが大きい。何度も出来る事ではない筈だ。



次の巫女の出現を待ち、世界を監視し続けた。



そして2回目に見つけたのがサクラだ。

今度こそと意気込み、巫女本人に干渉してしまったため、

彼女はアルタビエレの些細なミスから、その異常性に気づき、

神に報告しようとした。

だが、すでに契約済みだったサクラは、直ぐにアルタビエレに精神転移でその体を乗っ取られた。


半端に貯まった星霊力を保全するために、ロォレストの民達に神託と偽り神殿を建てさせ、それを守るために作った柱には、前回と同じく巫女の肉体を触媒として使う事で、神殿を守る強力な結界を作った。





3回目がユリだ。

気づけば、ロォレストの神殿内に星霊力が溜まっていたため、破壊を決行した。


もしかしたら、またどこかに巫女が現れたのだと思っていた所、

ヴェントでユリが確認出来た。


神殿の機能、巫女の成長に伴い大きくなる聖霊力の殆どを社へと溜め込む。

それが、巫女自身が生まれた社でなくとも機能していたのは、

アルタビエレにとっても僥倖だった。



それならば、今度こそ上手くいくはずだ。



神殿と社を破壊し、星霊力を解放する。

異世界側の方も、準備は万端だ。


アルタビエレ本人が破壊しなかったのは、

これだけ溢れた星霊力に下手に触れてしまうと、

神に自らの存在がバレてしまう可能性があったためだ。




――――――




「大分短く語ったが、これでおおよその事は解っただろ…?何しろ、1000年だ…、

…1000年だぞ!!!俺の!!この想いを!台無しにしやがって!!!あと、あと少しだったのに!!!」


「結局、サクラって子には嘘をついてんじゃねぇか…」

「あ、あの時は!……俺も、気が動転して!」

「つまんねぇ言い訳すんなよ…。てか…赤月には行けるんだろ?お前から会いに行けばそれで済むだろ」

「それじゃあ、駄目なんだよ!悪魔だから!彼女は、ずっと、楽しみにしていたんだ…、この星へ来ることを」


「悪魔……、彼女…………一応聞くが、その悪魔は、まさか、サキュバスとか言わねぇだろうな…」

「な…!なんで、知っている…っ!」




ママルは、呆気にとられた。

悪い予感が当たってしまった。

今、この状況で、こんな、バカみたいな話があるのかと。


聞くんじゃなかった。




「淫魔だろ。それ。お前、ただ、その悪魔の力にかかって、性欲を募らせてただけじゃないのか…?マジで…、いい加減にしろよ…………」


「……………………………は?」


「もう、いい…。終わりだ…、その1000年分の罪を裁く」

「な、何を言って……」

「≪ジャッジ:業秤(ごうのはかり)≫」


≪ライフ:浄玻璃鏡≫で写し取った罪が、エネルギーへと変換され、

水晶の元に圧倒的な呪力が膨れ上がった。


そのあまりに破滅的な呪力の奔流を見て、アルタビエレは叫ぶ。



「は!話した通り!おっ!俺を!殺さない方が良い!!!俺は!誰よりも魔法に詳しいぞ!!俺は!!ママル!!お前が以前居た世界にも行ける!!帰りたくはないか!!い、嫌だ!!!助けてくれ!!なぁ!!」


「……帰りたい気持ち…、そうか、そうだ…、確かに、俺の中に在ったんだ…。気づかなかった…ずっと、ゲームで遊んでたくってさ」

「じゃ、じゃあ…解いてくれよ!帰らせてやる!!」

「でも、もう、良いんだ。俺は、この世界に生きているから」

「な………なんで!良くないだろ!!親は!友達は!恋人は!兄弟は?!繋がりがあるだろ…?な……、なぁ!…帰りたいはずだ!」

「欠けていた記憶を思い出した。親は、死んでる。もう、良いんだって。お前は…、少なくとも、お前の能力は、凄いよ。1000年も魔法を研究して…、神様も欺いて。きっと、正しく使えていれば……」


「お!俺はっ!ママルを警戒していた…、だから、仲間にしようと思った!だけど!本当は!同じくらい、友達が欲しかったんだ!!!!俺と近いだろう強さがあって!繋がりを失って!異世界を知ってる奴と!!!解るだろ?!ママルなら!!」


「………………………………」


「いっ…、いっ…、生かしてくれるなら!…ああっあ!諦めたって良い!

俺が、自分で、尻拭いをする!!簡単だ!俺の力なら!!解るだろ?!

わ、悪かった!俺が全部悪かったんだ!」



その時、≪ライフ:浄玻璃鏡≫による別の効果が表れた。

アルタビエレの舌から鎖が伸びると、引き抜くように強い力が加わる。

それは、嘘をついた証だ。


「んおっ?!オ゛っ!ォェアッ!!ッ!!!!」


ブヅンッ!


「ア゛ッ……ア……」


「……じゃあな……≪インフェルノ:煉獄焦熱(れんごくのしょうねつ)≫」


解き放たれた地獄の炎は、罪人の悪感情エネルギーに反応して、更に激しく燃え上がった。アルタビエレの体感時間が、引き伸ばされて行く。

実時間ではものの数十秒が、数百年に及ぶ煉獄の苦しみへと変わる。



(あ!熱い!痛い!アツイあついアつぃ!!どうして!俺が!!)

呼吸をするたびに、体内が焼ける。

声を出す事も出来ず、だが体を動かして藻掻くことすらままならない。


(苦しい!いたい、あつい、死ぬ、死……、これが、死)

尋常ではない苦痛に苛まれながらも、狂う事も、気を失う事も出来ない。


(嫌だ…っ!死にたくない、死にたくない!!俺の、仲間はどこだ!助けろ!!)

どれほど何かを願っても、何一つ叶う事は無い。


(いつまで、燃えているんだ……あつい…、いたい…、くるしい…、こんな奴に……関わるんじゃなかった……、せめて、赤月で、死にたかった……、俺は……、俺が、生きた意味は…、でも…)

後悔、生への執着、絶望、全ては意味をなさない。


(熱い、痛い、苦しい、辛い、熱い、熱い、痛い、苦しい、痛い…………………。

…………………………熱い…………………………。

……………………………痛い……………………………。

………………………………苦しい……………………………。

…………………………………辛い…………………………………。

………………………………………………………………………………。

……………………………………………………………………………………。

…………………………………………………………………………………………。

………………………………………………………………………………………………。

……………………………………………もう……………………………………………、

………………………………………………………………………………………………。

もう……、もう許してくれ…、もう、死なせてくれ……………。

………………………………………………………………………………………………。

俺が………………………………………………………………、俺が悪かった……)





アルタビエレの命が燃え尽きる寸前、≪アカーラ:金縛法≫による鎖は、(ほど)けるように霧散した。

消し炭となった肉体はその場に倒れ込むと、粉々に砕け散る。


そして、それを見届けたママルもまた、地に倒れ伏した。


「お、おい!ママル!!」

「ユリさん!まだそんなに走らない方が!!」


プラムの静止を無視して走り出したユリが、ママルの体を抱き起す。


「熱っ!!…お主!真っ赤ではないか!!おい!お主よ!!だ、誰か!こんな体温!死んでしまうでな!!」

「み!水を!≪フレシェット:湧水≫!」


「ママルちゃん!テフラちゃんも無事だったわよ!」

「皆大丈夫でしたよ!あとは!ママルさんが!!」

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