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122.協力

――ママルらがロォレストへと出発して少しした頃。


「ユリさん…、その、落ち着きましたか?」

「…あぁ……、その…、すまんかったな…」

「いえ………」

「……………この件に関して、問題点は2つある」

「えっと、ママルさんが1人で行っちゃった件、で合ってます?」

「あぁ、そうだ、すまん。わしの事はいいのだ。……つまり、わしが。テフラやメイリーでさえ、ママルと例の男の戦闘能力に大きく開きがある点。そして、その男の事を忘れてしまう点」

「そうですね」

「前者については…、正直、一朝一夕でどうこうなるものでも無いと思うが…。

問題は、後者についてだな…」


ユリがそう言いながら、ママルが書いたメモを見つめた。

テフラとメイリーにも、同じ物を渡してある。



「ママルは見たから覚えていられる…。つまり、ただ、一目見るだけでよいのだ…」

「まぁ…そうなりますね…」

「……もし、今回、決着したらそれでよいのだが。そうならなかった場合、

わしらも、せめて一目見るくらいは、するべきなのだと思う」

「………それは私も考えてました。ただ見るだけであれば、ちゃんと状況を見極められたら、危険を回避しながらでも出来そうだと………ただ…」

「?」

「いえ、その…、ママルさんの話を聞いて、初めて考えたんですけど、と言うか、こんな事、考えたくないんですけど。あくまで敵の力の強さと言う意味で…」

「…うむ」

「もしママルさんが敵対したら…。そう考えると、ちょっと…、実際…、近寄るのも…、怖いかもしれないなと…」

「…………確かに…そうだな…」

「…………敵の能力が解らないから、寄るのも怖い、だけど、知るためには寄らなければいけない……。本当に厄介だし、もっと色々知っているママルさんは…………辛いんでしょうね」

「…………………………」



ドンドンドン!!

いささか乱暴に部屋の扉を叩く音が響いた。

テフラが扉を開けると、そこに居たワップイがまくし立てる。


「出たぞい!ギガントアリゲーターだ!ぬしら!協力しちょってくれ!出来るんだろい!」

「!勿論です。行きましょう、ユリさん」

「あ、あぁ…そうだな」

「人数が減っちょるが!大丈夫なんか?!」

「大丈夫ですよっ」


外に出ると、ギガントアリゲーターと槍を持ったリザードマン達が睨み合っているのが遠くの池に見えた。リザードマン達は胸まで池に浸かっている。

そしてギガントアリゲーターは、ワニだと言うのに、体高でもリザードマンの倍はあろうかと言うそのサイズと、執拗にリザードマンを狙う様から、既にいくつかの村を壊滅させているのだろうと予想が出来てしまう。


「お、大きいですね……」

「しかも池の中だでっ!これは…、どうしたら」

「……ユリさん、理障壁で援護して下さい」

テフラはそう言いながら桟橋の方へ走ると、ユリはそれを追いかける。


「も、勿論そうするつもりだが!はたしてまともに防げるものかどうか…」

「いえ、私の足場を下さい。飛び移ったらその先へと。以前ママルさんが話していた、空中移動です」

「っ!…………、だが、ミスったら、池に落ちるで!お主は水の中では…」


全身が毛に覆われている獣人は、当然に水を多く吸ってしまい、

攻撃力や敏捷性は低下し、体力消耗は大きく上がってしまう。

海水浴をした時の実体験だ。



「私だけを見ていて下さい。そうしたら、ユリさんなら出来ますよ」

「……………解った……ま……、任せろ……」


返事を聞くなりテフラは飛び出した。

その軌道上に、垂直に展開された理障壁を、まさに壁を蹴る様にして再度飛ぶ。

数度繰り返し、稲妻の如き軌跡で一気にギガントアリゲーターへと接近すると、

そのままの勢いで≪廻穿脚≫で蹴りつけ、もう一度空中に飛び≪理障壁:物理結界≫の上に着地した。


激しい水しぶきが上がる。



「おい!なんだ!!」「ワーウルフだ!村長から聞いた!」「助っ人か?!」」


「ユリさん…流石、完璧です…。皆さん!まだ仕留め切れていません!一旦離れて!」

「グロロロロッ!!!!≪噛牙≫」

ギガントアリゲーターはテフラ目掛けて、大きく口を開けて飛び出したが、

テフラは理障壁から飛び降り、≪尖裂爪≫で上顎にカウンターを浴びせる、

するとギガントアリゲーターは空中で仰向けにひっくり返った。


(巨体だから皮膚も筋肉も厚く、鱗も気力防御も硬い。けど!)


テフラの足元に改めて展開された理障壁を、一瞬踏みつけて縦に半回転しながら軽く飛び上がると、

その上方に再度理障壁が展開された。見るからに強度が違う。詠唱した魔法だ。


その上方の障壁へ両足を付け、屈む。力を溜め、≪瞬爪≫を発動。

全力でギガントアリゲーターに向かって飛び出す。


気力を込めた右爪を突き出し、さながら人の弾丸の様にギガントアリゲーターの胸部を貫くと、そのままテフラは池の中に突っ込んだ。



心臓が貫かれたギガントアリゲーターもまた、仰向けのまま池に落下する。


「…な、何が起こった?」「ワーウルフはどこいった?」


動揺するリザードマン達を前に、テフラは池の中から顔を出す。

「ふぅ…。勢い余っちゃった…」


そう独り言を呟くテフラをみて、リザードマン達は呆然としている。



「あ、このワニは倒しましたよ」

「お…、おぉ~~!!」「本当に死んでるぞ!!」

「胸に穴が空いている!」「姉ちゃん!とんでもねぇな!!」

「い、いえ…、私の力だけじゃ…」




――その日の夜、ギガントアリゲーターの肉を使った料理で宴が開かれた。


「ユリさん、凄かったですね」

「お主もな!」

「思い通りの位置に障壁が出て来て、凄く気持ち良かったですよ」

「なんか、たまらん感覚だったな。まるでわしも強くなった様だったで」


「ズルい…」

2人のやり取りを見ていたメイリーが独り言のように呟くと、すかさずプラムが援護する様に慰める。

「メイリーさんも凄かったですよ!」

「そ、そうかしら?えへへ…」


「そっちも大変だったみたいだのう」

「メイリーさんについて来てもらって、本当に助かりました」

「えへへへへ」

テフラは、そんなメイリーの頭を撫でる。


「………ママルも、うまい事やっておったらよいのだが…」

「…そうですね……」

「…うん………そうよね…………」

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