表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

123/182

121.一撃

ママルは目を瞑り、コ・イ・ヌールの元へ歩く。

中々に恐怖だが、おそらくこいつは、直接的な攻撃方法は持たない。

(まぁ、あったとしても噛みつくくらい?多分大丈夫だろ)


そして突き出している掌が、なんとも奇妙な感触のソレに触れると、スキルを唱える。

「≪ぺトロ:石化≫………」


石となったコ・イ・ヌールを、殴り砕き破壊した。

その死体は塵となって消えていく。

すると、魅了されていた人々は全員その場に倒れ伏した。



(よし。………アルタビエレ、奴本体は来ないのか…?

散々煽り散らかしたのも、さっさと片付けたいからなんだけど…)

ママルは警戒を解かずに、皆にポーションを飲ませて周った。


暫くすると、1人、また1人と目が覚めていき、

ジュダスは周囲を改めて見回すと、ママルを発見した。


「君は……」

「呪術師と悪魔は、倒しました」

「!!そ、そうか!…そうだった…、俺達は…」


同じように周囲を見回したジュニファは、悲嘆の声を漏らす。

「…柱が……」

「すみません…、これしか守れなくて」

「……いや…良いんだ…、残って良かった………」


オレットは、ふらつきながら立ち上がる。

「ママルさん…。すまない…あなたの到着を待つべきだった…」

「……いえ、あ、ってか、皆さん!まだ…、その、敵の本体が、また来るかもしれない。この場は俺に任せて、避難してください」


先程戦ったアルタビエレが使う魔法は、確かに強力で厄介だったが、

逆に言えばその程度の物ではあった。

ヴェントでは、戦闘になるなら更地になるとか言っていた。

魔法の規模感がどうにも合わない。


あくまで想像だが、他人の体を使っている間は、魔力だとかスキルだとかに制限がかかっていた可能性がある。

そんなのと皆を守りながら戦うのは無理だ。実際先程の状態でも人質として活用された。


「し!しかし!!」

「あっちの方の家に、サリサさんがいましたよ。無事を知らせてあげてください」

「そ、それは勿論だが!少なくとも、我々聖騎士が逃げるわけには」

「……すみません。その……、足手纏いになります」



それからいくつかのやり取りを経て、亡くなった人々を簡易的に埋葬した後、

ママルは1人、神殿の前で佇む。


(これでいい…。戦闘は、俺1人。その方が、安心する…。そもそも、あの人たちの肉体は回復させたけど、魂みたいな、そういう部分へのダメージは回復したのか怪しいし)



神殿の扉前まで来た。

軽く手をかけてみるが、微動だにしない。

あまり力をかけて、万が一壊してしまっては元も子もないので、

残る柱の方へ向かう。


(柱による結界…ね。ユリちゃんが使うのも結界術だけど、関係あんのかな)



ここは聖域だと聞いていたけど、普通の地と特に違いが解らない。

多分これまで聞いた話から考えるに、神聖力が湧いてるのだろう。

(プラムさんが言っていた、神聖力をヴェントに飛ばす装置と言うはどこにあるんだろ。神殿の中に入ってるのかな……)


ママルはまた色々と考えながら、柱を守る様に鎮座する。


だがそのまま、夜が来て、朝が来ても、アルタビエレは現れなかった。


(クソっ…。この状況…。最悪すぎるな…。ミスったか…。

そもそも、戦闘開始のタイミングがあいつに委ねられすぎている。自由に転移出来ると言うのは、戦闘において最強なんじゃないか…?

どうしよう…アルタビエレが一旦諦めたと判断するのに、何日待てばいい…。

ワンパン即死させられてビビったってんなら、それでも良いと言えば良いけど…)






――――プラムとメイリーが、ママルと別れた直後


「では、ムゥムェに戻りましょうか…」

「……そうね…」


フローターはその場で180度旋回すると、来た道を帰って行く。

「………プラムちゃん…」

「…はい。どうしました?」

「…………………なんでもないわ…」

「また、すぐ会えますよ」

「そ、そうよね!!」

「はい。必ず…。それと、メイリーさん、一緒に来てくれてありがとうございます」

「うん!……えへへっ…、どんどん頼ってね!」



―それから、道程を半分度過ぎた時。

プラムが遠方に野生の象を見つけて、メイリーに声をかけた。


「わあ、見て下さいメイリーさん、左手の方。象が居ますよ。大きいなあ」

「!!モ!モンスターよ!!近寄らないで!!」

「えっ!わっ……、って、こ、こっちに来ます!」

「!!」

「と、飛ばします、捕まって!!」

「……いえ、足場の安定する場所へ…、私が倒すわ」

「っ……、わ、解りました」



適当に目星をつけた、湿気の薄そうな地を目掛けてフローターを飛ばすと、着くなりメイリーは飛び降りた。

フローターは制動距離によりメイリーとの位置が離れ、メイリーは巨大な象を待ち受ける構えだ。



「…ゾウさん…。どうしてモンスターになっちゃったの?…可哀そうに…」

そう言いながら、掌を地面につける。


「ブオオオォォォォ!!!!≪踏荒≫」

象は走って来た勢いのまま、メイリー達を踏み潰すべく突進した。



「≪好餌掃骸(こうえはくがい)≫」

メイリーを中心に、まさに蜘蛛の巣といった具合にその魔力が広がり、

象はそれに触れた途端に足を止められると、広がっていた魔力が集い、包む。


四つ脚全てがほぼ覆いつくされ、鳴き声を上げながら暴れようと藻掻く象に向かって≪糸蜘血≫が放たれる。


その先端のナイフは象の頭部を貫き、一撃で絶命したのを確認したメイリーは≪好餌掃骸≫を解除すると、ほぼ同時に象は地に倒れ伏した。


そんな光景を見ていたプラムは驚愕する。

(!!つ…強すぎる…っ!一撃って…。あんな、気の抜けてる様なメイリーさんが…、以前聖騎士様達が戦ってるのを見た事はあるけど、それ以上の様な………。そんな人達が、心配されて、置いて行かれるなんて…ママルさんと、その敵は一体……)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ