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104.涙

ママルに案内され、ローゼッタ達はユリの元へと駆けつけた。


そこには、首が落ちたメディウムと、ユァンが寝ている。

ユリは、ユァンの手を握っていて、そんな光景を見たローゼッタは息を飲んだ。


「ユァンは、なんとか息はあるで。ママルの魔法とポーションで、一命はとりとめたと思うのだが…」

「ユァン!……父さん………」



(このコープス、ローゼッタさんのお父さんだったのか……)



ローゼッタはユァンを膝枕してその頭を撫でる。

すると、ユァンが目覚めて口を開いた。


「お、ぉぉ…ロゼ…。俺は…、なんで…生きとるんじゃ………」

「ユァン!……よ、良かった………。ママル君のおかげだよ」

「…あぁ……そうか、確かに、傷が塞がっちょるなぁ………」

「父さんは、ユァン、君が?」

「あぁ、そうだ。…すまんかったな」

「いや、いいんだ。むしろ、君で良かった…」

「あぁ、伝えておかんと…、オスレイが、売国奴だったぞ、まだ城のどこかにいる筈じゃ…」

「そうか…」


「……………なぁ、ママルや」

「え、…はい」

「すまんかったな」

「えっと、何が?」

「わざわざ生かしてもらったが、俺は…もう死ぬ」

「は?!なんで!」


「ユァン!何を言っているんだ!!」

「もう、俺は、命を使い果たしたんじゃ。自分で解る。

いくら体を癒されようとも、もう、免れん」

「そんな!やめてくれ!!私はまだ、君に教わりたい事が、色々あるんだ…」

「どうしようもない。……命とは、限りがある。

俺はその生命力を使って、メディウムと相討つために技を放ったんじゃ。

……最後に、ロゼと話す時間をくれて、ありがとう、ママル」


「いや…ま、待ってくれ!何か!方法が…!」

(≪アンデス:不死≫だって既にかけてるのに!……。

肉体が破損しても、魂と精神はその影響を受けなくなる…、あの予想が正しかったとしたら、

魂や精神が死ぬなら…、意味ないってことか?な、何か他の魔法は……っ!)


「いいんじゃ。泣くな、ロゼ。俺は、この人生に満足した」

「わ、私は!まだ!!」

「メディウムと出会ってから、楽しかった…。幼いロゼの事を話す時の、あやつの顔、見せてやりたかったなぁ。

なあ、ロゼ、おんしが幸せに生きてくれたなら、それが俺や、…おんしの両親が、…生きた意味なんじゃよ。おんしなら、大丈夫じゃ」

「………わ、解らないよ……」

「解る時が、…くるさ」


ユァンはその目を閉じると、二度と息を吹き返さなかった。

超常現象的なスキルなんて言う物が存在するこの世界でも、

生き返るなんて言う事は不可能だ。


ローゼッタは静かに涙を流す。

ユリはその目を何度も擦り。メイリーは、皆の悲しみに当てられて、声を上げて泣いた。


だが、たった数分の後、ローゼッタは顔を上げる。


「………すまない…。ヴォヌエッタ王陛下と、オスレイ宰相を、探しに行こう」

そう言って立ち上がるローゼッタから覚悟が伝わる。


「ぁ、あの王様なら、うッ、た、多分っ。あっ。あっち、よ…。

スン……少しの、間しか、見れてないっから、あんまり、自信ない、けれども…」

「≪魔覚≫の効果ですね…、私の鼻も、ちょっと自信ありませんが…、多分合ってますよ…」


「助かる…、ありがとう」



――



オスレイは、ヴォヌエッタ王やコープス達を引き連れ、

大部屋へと移動していた。


「多すぎるんだよな…。でもまぁ、私が自由に使える兵士か。中々悪くない」


そんな事を言いながら、王を取り囲むように配置させたコープス達を眺めていると、不意に部屋の扉が開いた。


「な、なな!なんだお前ら!!ろ、ローゼッタ!!」

「オスレイ宰相……こんなところに……。いや、貴様っ…そのコープス達は…」

「で、出ていけ!さもないと、ヴォヌエッタ王を殺すぞ!!」

「王妃に王子、我が国の兵士達……それに、聖騎士だった仲間まで…………」

「聞こえているのか!!!」

「……もう、…………お前らには、うんざりだ…………」


ローゼッタは、ゆっくりと鞘から剣を引き抜くと、オスレイは声を張り上げる。


「先に抜刀したのは貴様だぞ!!かかれ!コープス共!!!」



しかし、ここのコープスの中には、聖騎士だった者を含めてもハイコープスはおらず、ママル達5人の手にかかり、直ぐに全てを殲滅した。



≪コーマ:昏睡≫で眠らせたオスレイとヴォヌエッタが横たわっている。

両者ともモンスターではない事は確認済みだ。


ママルはこれで決着かとも思ったが、そうも行かないと思い直す。


「ローゼッタさん。ここは任せます。外も随分騒がしい事になってたはずなので、加勢に行こうかと」

「あぁ…………ママル君……。そうだね……よろしく頼むよ…」


「………テフラとメイリーも、行って来るがよい」

「ユリさんは?」

「わしは、大して戦力にならんし、それにな…」


ユリは、心から心配している様な瞳をローゼッタへと向けていた。


「そっか……よろしくね」

「あぁ…」



ママル達は部屋を後にした。



「………のう、ローゼッタ…。部屋を移さぬか?」

「……………何故だい?」

「…室内を見回してみい。コープスの亡骸の数々。こんなところにずっとおっては、病んでしまうでな」

「……確かに、そうだね…」

「とは言え、その寝とる2人は、お主に運んで貰わねばならぬが…」

「良いさ…。そうだ、中庭に行こう…。外の空気が吸いたい」



2人を担ぎ上げたローゼッタは中庭へ到着すると、その芝生の上に2人を寝かせた。


「……こんな日だと言うのに、空は美しいままだのう」

「……………そうだね」

「……なぁ、その、………大丈夫か?」

「………………すっ………、すまないっ……少し……、時間をくれっ………」


ローゼッタは涙声でそう言うと、両手で顔を覆って、その場に蹲った。

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