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103.トドメ

「お…おんし…メディウムか…?」

「………………」

「俺じゃ!!ユァンじゃ!!ユァン=サイフゥ!!解らんか?!!」

「……………………」


薄暗い通路の中、フラフラと歩くメディウムを見て、ユァンは自分の目が信じられなかった。



「その姿…、コープスに……そうか…そうじゃったか…」

「グ……ゥゥ……ゥゥゥ……」

「…ロゼには、会ったか?」

「ゥゥ…ッ!!ゥゥ…ッッ!!!」

「まさか、傷つけちゃおらんだろうな?おんしがいつも自慢していた、可愛い娘じゃろ?」

「ぁぁァァァァアアアアア゛!!!≪ブルーム:乱花≫!!!」


ユァンは巻き起こる光弾の連射を躱しながら、≪巧緻操気≫を使用した。


「はっはっは!おんしの技は、ぜーんぶ知っちょる。聖騎士は皆大体同じ技を使うが、それぞれにクセがあるからな。何度も見た」

「≪クレセント:来晄≫!」


またもやユァンは躱す。

「生きてた時より、力強いな。だが、狙いの精度が甘くないか?」

「≪ホライズン:一閃≫!!」


超速の突進をも、ユァンはまた躱すと、

メディウムは内壁に激突し穴を空け、その先の部屋の中へと転がった。


「はっは!おんし!ヘッタクソじゃなぁ!!」

「………………は………は…」


「!!…………メディウム。なぁ、メディウムよ。こんな話、した事はなかったが、俺はな。おんしに、感謝しなかった日など無い」

「……………………」

「俺は、おんしのおかげで、こんな歳まで、楽しく生きて来られた。

ま、嫁さんが見っかんなかった事だけは、悔いておるがな。でもまぁ、これで良かったんかもなぁ。俺が死んだ時、悲しむ人は、少ない方が良い」

「……………………」


「実は、俺はもう結構ボロボロでな、もう数回しか、おんしの技も避けられん気がする。それに、俺の技は≪エイジス:蕾冠≫で止められてしまうじゃろう?

この戦いで、裏をかく様な真似は、あまりにつまらんしな…………。

何より。死して彷徨うおんしは、俺がとめるべきじゃ」

「……………………」


「だから、俺の体力、生命力を、全て気力へと変換して、≪エイジス:蕾冠≫を破る。≪巧緻操気≫であれば、そんな寿命を使う様な事まで可能なんじゃ、知らんかったじゃろ?おんしと共に逝けるのなら、幕引きとしては悪くない」

「………………≪エイジス:蕾冠≫」

「受けてくれると…感謝する…………………………。≪絶穿歩砲≫」


ユァンは構える。

全身の筋肉が膨張し、皮膚が僅かに張り裂け、骨が軋む音が聞こえる。

血流は高速で流れ、血管が浮き出る。

瞳は血走り、鼻血が流れ、強く食いしばった奥歯が割れた。


「ッッッつあーーーー~~~~ッ!!!!!」


その一撃は、ユァンのこれまでの技の何よりも鮮烈に、強力に、

常人では目で追う事など、まず不可能な速さで、破滅的に、

≪エイジス:蕾冠≫と、メディウムの首を貫いた。



――



「≪呪詛・播衰落(ばんすいらく)・輪転≫」

デテリオがスキルを唱えた途端、2人の黒魔術師が痙攣し始めた。


「下がって!!」

メイリーがそう叫ぶと、3人はまた後退する。

いよいよ壁際まで追い詰められてしまった。


「あの2人、多分、あのデテリオとか言うモンスターが使ってるのと、同じ感じになったわ」

「…?………………持続範囲魔法の拡散装置にしたと言った所だろうか…」

「効果範囲が見えないのが嫌すぎる…まずいですね…」

(これは…どうしたらこの技を破れる…)


離れた3人を見ながら、デテリオはニヤニヤと笑いながら話しかける。

「さぁ、3か所から発生するこの呪術、どうする?さっきのメディウムみたいに、穴を空けて逃げるか?そうしたら、追いかけっこなんかしたくねぇから街の方にでも行っちゃおうかなぁ?」


黒魔術師は、ゆらゆらとふらつきながら、徐々に距離を詰めて来る。


(くそっ…ふざけたスキルを…。他の呪術師のもそうだった。兎に角、訳も解らない内に、謎の状態が起こる……。ママルさんの呪術魔法は、そう言う意味ではずっと解り易いのに)

「そうか…。呪術は、無生物には効かない」


ママルとユリの会話を不意に思い出したテフラの呟きを聞いて、

ローゼッタは黒魔術師の1人に向かって鞘を思い切り投げつけた。

それは見事にヒットし、黒魔術師は後ろへと倒れ込む。


「遠距離物理攻撃を!」

ローゼッタの叫びに、テフラは即座に壁を破壊し、その瓦礫を投げつけ、

メイリーとローゼッタもそれに倣う。


なんとも原始的な、投石の乱打。

ハイクラス3人のパワーと速度で、それはまるで散弾銃の様に叩きつけられると、

黒魔術師2人はそれを受けピクリとも動かなくなった。

だが、デテリオにまでは1つも瓦礫が届いていない。


「気づいてんじゃねぇよ…。でも私には無駄だ。はぁ。もういい、お遊びは終わりだ」

デテリオは今度こそ、またもやズカズカと歩を進めながら、新たな呪術を唱える。

「≪呪詛・」


「≪パラライズ:金縛り≫」

「うっ…なんだ…痺れ…っ」

「≪バニシック:燃焼≫≪コレプト:腐敗≫≪エイジール:老化≫≪フラルト:虚弱≫」

(明らかに3人と敵対する呪術師……。容赦する必要はない)


デテリオの後方から、スキルを唱えつつママルが歩く。

その声はテフラのみ聞き取る事が出来、ママルの姿を見て安堵のため息をついた。

だが、メイリーとローゼッタは未だ緊張が解けない。


「あ、あっつ!い、痛っ!な、なん……だ?これ!!!霧!?これは!!」

「硬いな…レベルが高いのか……?もしくは呪術耐性か。防御魔法でも展開してるのか…」

「お、お前は!う、動くな!ア、アルカンダルの悪魔!!動いたら、あ、あの女共を殺すぞ!!!」


(……あの3人が、この状況からの敵の一撃程度を、どうにか出来ない訳はない)

「…………≪ワース:状態異常悪化≫」

「うっ!ぐっ!が…っ!な゛ん゛っ………でっ!」

デテリオは、その場に膝を付くように頽れる。


「まだしゃべれんのかよ…」

そうしてママルは、デテリオの元へと近づく。


「このまま何もしなくても、お前はもう死ぬ」

「い……ぃ゛や……だっ…ぁ!嫌だあ!!…だ、助けっ…ろォ……!」

「このまま死ぬか、楽に死ぬかは選ばせてやる…」

「じ……≪…た…嘆っ…ろ………、う…!……」

デテリオは、残る力を振り絞り、なんとか最後のスキルを発動しようと試みた。


「チッ……≪プロバアブソル:付着確定化≫≪レティス:沈黙≫」


デテリオは、それ以上声も出せぬまま、起き上がる事も出来ず、

激痛と無痛の入り混じる不快感に嘔吐しながら、

その場でモゾモゾと、芋虫のように5分程動き続けた。

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