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祝杯を上げよう

ガンナーズ・ライフでは飲食も可能だ。……腹は満たされないが

「乾杯!!」

第七突撃隊のプライベートルーム。4人はジュースを入れたコップを打ち合わせた。バトルタワー攻略を祝っての祝賀会だ。部屋の中央に木箱を並べてテーブル代わりにし、お菓子や軽食を置いている。

「それで、このストーナー63って強いのか?」

アランは自分の目の前に置いた戦利品について聞いた。

「その銃はパーツの交換でマシンガンからアサルトライフルまで色々カスタム出来るってコンセプトでアメリカが昔に作ったやつだよ。性能は……まぁ普通かな?」

ナナは彼に簡潔に教えてくれた。

「なるほどな」

アランは銃のステータスを眺めながらフライドチキンを頬張る。腹は満たされないが、味と食感はリアルだ。ストーナー63は5.56㎜弾のアサルトライフルで、M16と比べると重量がある。

「その銃は100連発のドラムマガジン付ければいいかもね。ウチはマシンガンいないからさ」

クッキーをつまみながらナナが言った。

「しっかしアランが羨ましいぜ。レア武器引き当てたんだからな」

「ジョーも色々手に入れてたでしょ?」

「まぁな。でも半分くらいは売却かな。リリーの方はどうだ?」

「あたしも服以外は売りかな〜」

4人はそれぞれ戦利品の話をしていた。だがアラン以外の3人は古参プレイヤーということもあり、ほぼ売却に回すそうだった。

「バトルタワーも制覇したし、次はどうしよっか?」

リーダーらしくナナが話を進めた。

「いつも通りでいいんじゃないか?その時のノリで決めれば」

「4人になったんだし、お金出し合ってこの部屋リフォームしようよ!」

「いいかもな、それ」

他に思い付くこともないので当面の目的はリリーの言った様にリフォームとなった。

「まずはどこを改造しよっか。アランは何かある?」

「そうだな……とりあえずは大きめのテーブルが欲しいな」

リフォームについて話していると、アランはメッセージの通知音が聞こえた。空間に浮かぶメニューを操作して、それを開く。

「どうかした?」

「いや……大したことじゃない。リアルの友達からだ」

4人はパーティーを続けつつ、今後の方針を話し合った。


 翌日アランは1人でログインした。待ち合わせ場所の武器屋で時間を少し潰していると、その人物が現れた。

「ごめん、待たせちゃったね」

「武器見てたから退屈はしてないよ。それで、何に付き合って欲しいんだ?」

現れたのはリリーだった。昨日のパーティの途中、アランはリリーからメッセージを受け取っていた。

「ちょっとしたお金稼ぎかな。とりあえず行こ」

そう言ってリリーは駆け出した。


 2人は廃墟の並ぶエリアに来ていた。そこには換金アイテムを落とす敵NPCが現れるという。半壊したビルの間を2人は武器を構えて歩いた。

「そろそろ言ってくれてもいいだろ?何のためにお金が欲しいのか。それに俺だけ誘った理由も」

「そうだね。実はナナとジョーにプレゼント贈りたくってさ」

「それで俺だけ呼び出した訳か」

「そゆこと」

ふと、彼女が足を止めた。

「リリー?」

彼女は振り返ると素早く飛び出し、いつの間にか背後にいた敵NPCに斬りかかった。ボロボロのローブを被って、ナタを持った敵はリリーの攻撃を防いでいる。

「手伝って!」

リリーは次々と刀を振るうが、決定打は与えられなかった。アランはストーナー63を構えた。

「今!」

リリーが飛び退いた瞬間に引き金を引く。100連発のマガジンを付けているのでフルオートで撃ちまくっても問題はない。逃げようとする敵に弾幕を浴びせ、瞬時に倒した。

「いい銃だな」

アランがストーナー63の威力を実感する横で、リリーは敵の死体を漁った。

「で、何かあったか?」

「お金と宝石……うん、あと6人倒せば溜まりそう!」

まだ6人もいるのか、と思ったが黙っておいた。


「前から気になってたんだが、リリーは銃使わないのか?」

「ん?M10なら使ってるよ?」

「それもそうなんだが……ほら、アサルトライフルとかそういうやつ」

建物を探索しながら2人は話していた。途中NPCを2体倒した以外は何もない、不気味な程静かなエリアだ。

「私はこのスタイルが好きだから貫いてるだけだよ」

「じゃあ他にいいゲームあるんじゃないのか?接近戦メインの……」

そう言うとリリーは立ち止まって振り返る。彼女は悲しそうな顔をしていた。

「それ、よく言われるんだ。前いた同盟もそれで追い出されちゃったし……」

いつもの天真爛漫、と言った感じの彼女には珍しく声が暗かった。

「でも、あたしはこの世界が好きなの。この世界で、刀とサブマシンガンのスタイルで戦いたいの……。上手く言えないし、もっと剣が活躍するゲームがあるのも知ってる。それでもこの世界観が好き。……分かるかな?」

「……」

「私は、このスタイルでどこまで行けるのか知りたいんだ」

「その、悪かったな」

「分かってくれればいいよ。それでね、もうすぐ記念日なんだ。ナナ達が、私をメンバーに加えてくれた日の。だから2人にプレゼント贈りたくて」

刀を納めると、彼女は悪戯っぽく笑った。

「そう言うことか。じゃあ、早く終わらせて買いに行こう。2人に気付かれる前にな」



 数時間後、ナナとジョーがログインした。

「2人が先にいるなんて珍しいな。もしかしてデートか?」

「そんなんじゃねぇよ」

ジョーの軽口に笑って答える。

「今日はどうしよっか。リフォームの買い物に行くか、もう少し稼ぐか……」

「その前にちょっといいかな?」

リリーが2人の前に出た。


 アイテムリストからプレゼントの箱を取り出す。手の上に、ラッピングされた箱が現れる。

「まずはこれ、ジョーに」

「お?なんだ?」

箱を開けると1本のナイフが入っていた。

「こいつは……」

ジョーはそれを眺める。一見普通の両刃ナイフだが、グリップにボタンと手榴弾の安全ピンのような物が付いている。

「スペツナズナイフかな?刃が飛び出すって言う……」

「そう!気に入ってくれるかな?」

「どれどれ……」

ジョーは早速安全ピンを抜き、刃を壁に向けてボタンを押した。すると刃が高速で飛び出し、壁に突き刺さった。

「こりゃいいな!ありがとうな!」

ジョーは大喜びで、刃を元に戻すと早速鞘に入れて腰に付けた。


「ナナにはこれ」

ナナもプレゼントを受け取る。箱を開けるとグリーンの、少し古い型の野戦用ジャケットが入っていた。

「おお〜」

彼女がジャケットの背中を見ると、中央には数字の7、その上には7th Assault Squad と黒で書いてある。

「7が好きな数字だって言ってたから、入れてみたんだ」

早速セーラー服の上に羽織り、鏡で確認する。

「最高だよ!ありがとう」

「ナナは武器色々持ってるし、隊長はカッコよくないとだからね!」

このジャケットと、ジョーのナイフを選ぶとこにもアランは立ち会った。既にリリーが決めていたとは言え、アランも嬉しかった。

「でもどうしたんだ?急に」

「そうだね。バトルタワー攻略記念……ならアランが貰ってないのは変だし……」

「2人とも忘れちゃったの?今日はあたしが第七突撃隊のメンバーになった日。だからそのお礼のプレゼントだよ。私に居場所をくれてありがとうって」

リリーは照れながら笑っていた。

「ああ、そういやそんな気もしたな。すっかり忘れてたわ」

「こちらこそ、リリーがメンバーになってよかったと思ってる。あ、もちろんアランもね!」

ナナは慌てたようにアランの方を見た。

「俺もなんとなくここの雰囲気が分かったよ。にしても、そんなに喜んでくれたならあの廃墟を彷徨った甲斐があるな。リリーは途中迷子になるし」

「それは内緒って言ったじゃん!」

初めは様子見のつもりだった。カルトに支配されたゲームなんてすぐに辞めるつもりだった。でも、気が付けば、アランはこの場所に居着いていた。そして、それが悪くないと思っていた。当分は彼らと一緒にいよう、彼は笑い合う中でそう決めたのだった。

一部の服には自分だけのデザインを描き入れることが出来る

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