ピストルを買おう
所持中の銃は無くしても武器庫から呼び戻せる。カスタムもそのままに。
アランをメンバーに加えた第七突撃隊は低難易度の基地やモンスターとの戦闘を数日していた。ナナが上手く避けていたこともあり、カルトからの妨害もなくこのゲームに慣れてきた。この日、アランは同盟のプライベートルームに入ったが居るのはナナだけだった。
「2人は?」
「ジョーはバイトで、リリーはリア友と遊んでるってさ」
ナナ達と少し遊んで分かったが、彼女らはそこまで上手いプレイヤーではなかったようだ。あくまで並程度の実力を持つエンジョイ勢、といった感じだ。
「それなら今日はどうする?」
「今日はね……買い物に行こう!」
ナナに連れられ、アランは店に入った。武器を専門に扱う店で、店内なら手に持つことも出来る。
「凄い数の銃だな」
「きっと好きなのが見つかるよ。ちなみに、万引きしようとすると出口で銃が引っ掛かるからね」
「したことあるのか?」
「検証でね」
アランは店内の様々な銃器を見ていた。正直、多過ぎてどれを選べばいいのか分からない。今のM16も、初期武器から適当に選んだだけだ。
「どう?気に入ったのあった?」
「あんまり銃詳しくないんだよな……まぁでも、とりあえずは拳銃が欲しいな。オススメあるか?」
「ピストルなんて接近戦くらいでしか役に立たないから、見た目とかで選んじゃってもいいよ」
アランは台に置かれた様々な拳銃を眺めていた。
「これなんか良さそうだ」
しばらくして彼は1丁のリボルバーを選んだ。木目のグリップと、銀色に光る銃身やシリンダーが美しい。
「コルトパイソンじゃん。確かそれは4インチモデルだったかな?」
「確かマグナムってやつで威力が高いんだっけか」
名前と、威力が強いことは以前から知っていた。銃を持つと空中にステータスが見えた。確かにダメージの値が高くなっている。
「これにするよ。マニアじゃないけど、リボルバーってなんかいいよな」
アランはそれをレジに持って行った。拳銃にしては高価だったが、所持金は充分だった。
「ライフルはどうする?買うの?」
「後ででいいかな。弱い訳じゃないし」
2人は森のエリアに移動した。試し撃ちも兼ねて、手頃なモンスターを狩るのだ。アランはM16を背中に背負い、コルトパイソンを握っていた。いつの間にかゲーム内時間は夜になっており、暗い森は静かだった。
「手に持つ感触があるって、いいな」
「でしょ?私なんかゲームだけじゃ我慢出来なくて、同じモデルのエアガン買ったもん」
その時、ナナが足を止めた。
「そこの茂み、動いた」
「やるか?」
「ちょっと待って」
パイソンの撃鉄を起こしたアランをナナが制する。彼女はライフルを腰だめに構えると、フルオートで掃射した。すると茂みから3つの緑色の影が飛び出す。
「ゴブリンってファンタジー世界のモンスターだろ?」
「このゲームには色々いるんだよ!」
子供程の身長で、緑の身体と尖った耳が特徴のそのモンスターは、槍やナイフを持って真っ直ぐに向かって来た。アランはパイソンの狙いを付け、引き金を引く。轟音と強烈な反動があり、1撃でゴブリンが吹き飛ぶ。2匹目も同じように仕留めた。3匹目は、ナナが片付けた。もう少しで槍の先端がアランに届く所だった。
「助かった」
「ああいう時は左手でハンマー起こして撃つと早く撃てるよ」
ナナはその動きを再現して見せた。
「今度練習してみる」
アランが次の標的を探そうとしていると、ナナが引き留めた。
「ゴブリンはお金多く持ってるからさ、漁った方がいいよ」
アランが引き返し、死体の前でしゃがんだ時だった。
「今夜この森は俺達の狩場だ。悪いけど譲ってくれないか?」
青い腕章を付けた2人の男が現れた。
「カルトの連中だ……」
ナナが小さく呟いた。
「どうする?」
「返答はアランに任せるよ」
2人は目配せをした。そして、アランは行動を決めた。
「で、どうする?」
男の1人がそう言った時、アランはパイソンで彼を撃ち抜いた。念の為2発撃ち込む。もう1人が驚いてる隙に、先程教わった方法でハンマーを起こし、もう1人にも2発食らわせる。最初の男は即死したが2人目は重傷状態になり、地面に倒れる。
「クソ!撃たれた!俺の近くだ!」
彼がそう叫ぶと、森の奥の暗がりから3発のライフルが吠えた。
「伏せて!」
2人はその場に伏せる。
「私が誘うから、敵の発火炎の辺りを狙ってみて」
ナナはそう言うと近くの木の後ろまで這って行った。アランも転がるようにして位置を変えた。ナナは伏せたまま拳銃を抜くと左手に持ち、身体から大きく離して撃った。この暗さでは相手のマズルフラッシュを頼りに狙うしかなく、ナナの狙い通り、敵の弾は大きく空を切った。アランは敵の銃が発砲で光った辺りを狙い、7、8発ほどM16で連射した。すると、確かな手応えがあり、撃破の通知音もした。
「まずは1人だな」
すぐ横に移動すると、先程まで居た場所に弾が飛んで来た。
「1人やったよ!」
今度はナナが仕留めたらしい。残るは1人だ。
「どこいるか分かる?」
「ああ、もう見つけた」
小声で聞いてくるナナにそう答え、アランは立ち上がる。そして、重傷で地面に倒れた仲間を蘇生させようとする男をパイソンで撃ち抜いた。腹部にマグナム弾を受けて倒れた彼に、もう1発撃ち込んでトドメを刺す。重傷状態の相手も同じようにして終わらせた。
「敵殲滅、だね」
草むらからナナが立ち上がる。
「こんなことはよくあるのか?」
「この辺りはあんまり見かけないから油断してた。これでも、まだ続けてくれる?」
敵の死体を漁りながら、ナナは振り向いた。
「当分はな。前にも言ったが、やられて終わるのはどうにも悔しいから」
そうは答えたものの、今回のようなことが頻繁にあれば流石に参ってしまうだろう。そんな中でも、ここまで続けてきたというナナには、強い意志のようなものを感じた。
「そう言えば、ナナの銃はなんて名前なんだ?」
何気なく彼女にそう聞く。
「私のはFALってやつだよ。まぁ銃身を短くしてるからオリジナルではないけど」
「へぇ。どこの軍隊が使ってるんだ?」
「FALは50年代にベルギーで作られて、カナダとかイギリスを初めに西側の色んな所で使われたんだ。最近でも途上国では現役だったり、アメリカの民間でも……ってごめん。オタクの悪い癖出ちゃった」
普段以上に饒舌に喋った後、彼女は苦笑した。薄々勘付いてはいたが、彼女は生粋のガンマニアだった。
作業台で愛銃をカスタムしよう!




