↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/32

White Angels

購入した航空機は、飛行場から何度でも呼び出せる

 その日、アランはヘリコプターに揺られていた。陽気なBGMとローターの回転音が心地よい。オペレーション・ゴールドラッシュは無事に成功し、反乱突撃隊は武装ヘリ3機を手に入れることが出来た。機銃とミサイルを装備し、歩兵用の後部座席や、ドアガンと呼ばれる機関銃も搭載されている。今日は試運転も兼ねて境界線から離れた拠点を攻撃する予定だ。3機は縦に並んで進み、ナナやアラン達のヘリは真ん中だ。

「ナナさん、ターゲットが見えました。攻撃開始しますか?」

先行してた、いちごマンのヘリから通信が入る。

「了解。各機攻撃開始。散開して、対空砲火に注意して」

彼女がそう言うとヘリが攻撃体制に入る。


 目的の場所は森の中にある広い村だった。中央には木造の大きな建物があり、周辺にも小さな家が何軒も見える。また村周辺には赤い花畑が広がり、作戦中でなければゆっくりとした時間を過ごせそうだった。


 ヘリはそれぞれ機首を下げると、機銃やロケット砲で攻撃を開始した。地上では逃げ惑う教団信者が何人も見える。大規模な拠点で、車両も複数確認出来た。

「1番機、東の方へ向かって。3番機、西の車両を蹴散らして」

ナナは指示を出しながらドアガンのM60を掃射している。

「アラン!反対側頼むぜ!」

「分かった!」

隣に座っていたジョーが肩を叩く。アランはナナと反対の窓際にいたので、機銃に付くと地上を攻撃する。銃は固定されているので反動はほぼ無い。だが、ヘリが大きく揺れており狙い撃ちするのは至難の技だった。

「コレ当たってんのか!?」

「まぐれで当たりゃいいんだよ。それに、所詮は牽制射撃だしな」

ジョーに振り返ると気楽そうに答えた。アランはなるべく複数人いる場所を狙って掃射した。無論敵側の応射もあり、弾が機体に当たる音が何発も聞こえる。

「ナナ!こっち側から激しく撃たれてる!」

「パイロット、その方向にロケット掃射!」

ナナが指示を出すとパイロットはヘリを急旋回させ、応射のあった場所にロケット弾を撃ち込んだ。爆発が起こり、敵が文字通り吹き飛ぶのが見えた。

「ナイスショット!」

ジョーが高らかに歓声を上げた。喜んだのも束の間、アランのヘリのすぐ近くを何が高速で通り抜けた。弾丸はこのようにはっきりとは見えない。

「RPG!!見張り台の上だ!!」

村の端、木で組まれた塔の上で敵が筒状の物を肩に乗せるのが見えた。アランは無線機に叫ぶと自分も精一杯機銃をその方向に向ける。対戦車ロケットを撃ち込まれれば、ヘリは一撃で木っ端微塵になってしまう。

「僕がやります!」

いちごマンが答えると、ヘリを移動させ、至近距離から機銃掃射を食らわせた。


「総員RPGに警戒して!他にもいるかも!」

ナナが無線で注意を促した時だ。突然3番機が狂った様な挙動を見せ、建物に墜落した。ヘリは爆破炎上し、乗員の全滅は目に見えて分かった。

「またRPGか!!」

「ヘリは爆発の前に落ちてた……パイロットが狙撃されたんだ!」

ナナが原因を特定した時、自分達の機体もコックピットに穴が空いた。

「狙撃手に狙われてる!」

パイロットが叫んで機銃を乱射しながら機体を回した。そこに容赦なく激しい弾幕が浴びせられる。

「白いヘリ!天使だ!!」

アランは叫ぶと振り落とされないよう機銃にしがみついた。

「テールローターをやられた!不時着するぞ!」

パイロットの声と共に、機体は花畑に向かって急降下して行った。


 ほとんど落下するように不時着すると、村の方から何発もの銃撃を受けた。アラン達は素早く脱出し、敵から離れる。だがパイロットはその猛攻を浴びて死んでしまった。草花に隠れて村から遠ざかり、少し土地が低くなっている場所で合流した。

「何人生きてる?」

ナナは生存者を数えた。彼女の他にアラン、ジョー、リリー、フリード、副操縦士が今は生きている。後からいちごマン、ダグラス含む1番機の5人が合流した。

「これからどうする?」

「何もせず死ぬのは避けたい。なんとか生き残る道を探そう」

ナナは地面に伏せながら退路を考えていた。今は隠れられているが、この辺りは遮蔽物が少ない。前方の村に行けば車は手に入るだろうが、それは敵陣に突っ込むことになる。後方は敵こそいないが、そこに行けば相手に背中を晒すことになる。

「草に紛れながら、大回りで村を目指そう」

ナナが伏せながらその方向を指す。アランは少しだけ身を起こして村の方を双眼鏡で覗いた。

「マズイぞ……」

そして血の気が引くのを感じた。


 村の方から、白ずくめの戦闘服を着た集団が向かって来る。

「天使だ……」

そう伝えると皆に緊張が走った。

「墜落の直前にヘリが見えた。遠くに降下して、徒歩で向かって来たんだろう。パイロットを狙撃したのもそいつだ」

アランは先程見たことを口にした。

「ねぇ、どうするの!?」

リリーは動揺していた。

「やるしかないだろ。奴らだって、無策では突っ込んで来ないはずだ。牽制射撃しながら、移動するしかない」

アランはゆっくりとストーナー63を2脚で構える。幸い、天使はまだ気付いていない。数も見えている限りでは10人程だ。

「合図したら一斉に撃って、なるべく数を減らそう。ある程度減らしたら、アラン、ジョー、ダグラスは私と支援射撃。残りはゆっくり村の端まで移動して、車で逃げて。エンジン音がすればそっち向くはずだから、私達は徒歩で逃げよう」

作戦を立てるとナナは伏射の姿勢でFALを構える。他の面々もそれぞれ照準を合わせた。

「用意……撃て!」


 ナナの指示で一斉に撃ち始める。アランは最初の1人を倒すと、引き金を引いたまま次の敵を狙う。天使達は素早く地面に伏せると反撃をした。天使達にとって不利な状況であるが、射撃は正確でアラン達が逆に頭を上げられなくなった。まるで居場所を把握しているかのように弾が撃ち込まれる。アラン達も銃だけを遮蔽物から出す、ブラインドファイアで応戦する。当初の作戦のように、脱出することは困難だった。

「どんどん銃声が近くなってる……」

弾倉を変えながらナナが言った。その時、端の方にいたメンバーの1人が頭を撃ち抜かれた。

「隠れてる筈なのに!?」

隣にいた仲間が叫ぶ。

「スナイパーだ!あそこの草むらでスコープが光った!」

闇雲にストーナーを撃ちながらアランは叫ぶ。一瞬頭を上げると、狙撃手はまだそこにいるようだった。草の中に僅かに人の輪郭が見える。狙撃手は再び発砲し、また仲間が1人撃たれる。

「この野郎!!」

ジョーが身体を起こして狙撃手にAKを撃ちまくった。

「倒したぜ!ざまぁ見やがれ!」

そう言った直後、彼は他の天使達から集中射撃を受けた。ほぼ即死だ。

「頭なんか出すから……」

ナナは舌打ちした。その間も天使は攻撃を緩めなかった。僅かな隙を突いて命中させ、いちごマンともう1人が続けて死亡した。今はただ、接近させないように撃ち続けるしかなかった。かなり敵が接近していると分かると、アランは手榴弾を続けて投げた。運任せに乱射するよりは期待できる。実際、一度だけ撃破の通知音が聞こえた。ナナ達も同様に手榴弾で応戦していた。自分のが無くなるとジョーの装備から取り外して投げ続ける。その中で手榴弾の他に発煙弾もあることに気が付いた。


 手榴弾が無くなると、しばらくの間戦場は静かになった。アラン達は弾が残り僅かで、派手に撃つことは出来なくなっていた。天使達が全滅したり、撤退した気配ない。

「弾切れだ。ナナは?」

「ピストルが15発くらい残ってる」

生き残ったリリー、フリード、ダグラス、副操縦士もほぼ残弾は無かった。

「ここまでか……」

アランは吐き捨てた。天使達の実力なら、突撃すれば簡単にアラン達を全滅させられるだろう。そうしなくても、手榴弾を投げれば充分に効果のある距離だ。状況は絶望的だった。

「このまま黙って全滅は嫌だな」

「であれば、最後に1人でも多く討ち取って、散りましょう」

ナナに答えたのはダグラスだった。彼は64式小銃に銃剣を取り付けた。一度微笑むと、真剣な顔付きに戻る。

「……そうだね。最後の意地を見せてやろう」

ナナも腰のポーチからナイフを抜く。

「突っ込むならこれ使えんじゃないか?煙に巻いて、乱闘に持ち込める」

アランは先程ジョーから手に入れた発煙弾を見せた。

「最高。じゃ、準備はいいかな」


 皆が武器を構えて頷く。だがフリードだけは違った。

「リリー、お前だけでも逃げくれ。この突撃に勝機はない。ただ、終わり方を決めたいだけなんだ。お前1人だけなら……」

彼はリリーの目を見つめて言った。いつになく真剣な口調だった。

「ごめんだけど、私も一緒に行くよ。自分だけ逃げても何にもならないし、私は反乱突撃隊のナンバー3だからね」

リリーはそれを受け入れず、鞘から抜いた刀でフリードの剣を軽く叩いた。

「……そうか。なら共に行こう」

フリードも打ち返して答える。

「準備は良さそうだね。アラン、スモークを投げて。それから声は上げないで。私が出たら後に続いて」

アランは安全ピンを抜き、発煙弾を投げた。白い煙が広がってゆく。


 煙が最大まで拡散するとナナは飛び出した。アラン達も遅れて後に続く。真っ白な煙の中、不明瞭な視界でそれぞれが会敵した。アランは敵のマズルフラッシュを狙ってコルトパイソンを2発撃った。通知音で、倒した事が分かる。煙の先から攻撃する声や銃声が聞こえた。突然真横からM4系のライフルを持った天使が現れる。幸い視界の外にいたアランはゆっくりと狙いを定め、眉間を撃ち抜いた。直後、別の方向から銃撃されて後ろに倒れる。反射的に残弾3発を撃ち返す。倒れたまま装填し、撃とうとするとまた銃撃があった。急所は外れたが、重傷状態となった。彼は無我夢中で煙の中にパイソンを撃ち続ける。やがて、白煙は徐々に薄れた。


 視界が完全に戻ると、ざっと見て8人の天使が自分の方を見ていた。近くではナナとダグラスが倒れているのが分かる。天使達の様子から、自分以外が全滅したことを悟った。

「こんなに居やがったのか……」

最初には10人くらいしか見えず、これまでの戦闘でそれなりの数を倒しているはずだ。増援が来たのか、隠れていたのか。いずれにしよ、この数と実力の差を見てアランは反撃する気力も無くなった。2発弾の残った拳銃を構えた手を下に降ろす。天使の1人が銃を向けたまま近付き、頭に銃口を当てる。

「これで立場が分かっただろう」

「……うるせぇ」

目を逸らして乱暴に吐き捨てる。精一杯の抵抗だった。それを聞き届けると天使は引き金を引いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。