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雪原の襲撃者

一部ライフルスコープは反射で位置を特定されやすい

「オペレーションゴールドラッシュを発動する!」

全体集会でナナが宣言した。

「待ってました!で、どんな作戦なんだ?」

ジョーが横からギャグを飛ばす。

「これから1週間の間、全力でお金を稼いで欲しいの。チームの強化のためにね」

彼女は続ける。

「ちなみに、連盟にお金を預けてくれれば何かしらの形で還元しようとは思ってる。戦車とか、戦闘ヘリとか」

その言葉にメンバーから歓声が上がる。

「稼ぐ方法は自由。モンスターを狩っても、カルトから強奪しても。あ、でも違う反乱組織から奪うのだけはやめて。敵はカルトだけで充分だから」


 こうしてオペレーションゴールドラッシュが開始された。それぞれが思い付く限りの方法で金稼ぎに向かった。アラン達も現在はモンスターを倒すためにマップ北東部の雪原エリアを車で走っている。フリードも誘ったが、どうやらソロで稼ぐそうだ。

 このエリアは一面雪に覆われた銀世界で、雪の他には工場や家らしき廃墟が点在している。

「この先だっけ?ツノ生えたシロクマがいるの?」

「うん。そろそろ車停めようか」

リリーも前に来たことはあるようだった。4人は車を停めて外に降りる。少し歩いた所に開けた場所があり、そこにモンスターが出るらしい。前は乱闘になって、車を壊されたとジョーが笑った。

「相変わらずここ寒いよね……」

リリーは降りてからナナにくっ付いていた。

「じゃあもっと防寒装備しろよ」

「だって可愛くないじゃん!」

ジョーの軽口に彼女は反論する。寒さまで再現されていて、アランは白い軍用コートを買って正解だと実感していた。

「そろそろだね」

廃墟を抜け、開けた場所に出る。しかしそこには、大破した車が何台も転がっていた。

「ここはいつもこんな感じなのか?」

「前はこうじゃなかったし、あれはプレイヤーの車だと思う」

「おい、死体があるぜ」

ジョーが指差す。アランは黒焦げになった車の近くを双眼鏡で見つめた。死体が点々と横たわり、その1人が青い腕章を付けているのが見えた。

「あの腕章……」

「うん。カルトのやつだね」

「にしてもここで何があったんだ?恐竜でも通ったってのか?」


 ジョーが辺りを見渡していたその時、遠くから車のエンジン音が聞こえた。2台の装甲車が、アラン達から見て左奥に見える高い丘へと向かっていた。丘には背の高い木が何本も生えている。

「あそこ、何か光らなかったか?」

アランは木の間に何かが光ったのを見た気がした。すると、その方向から2回銃声が聞こえた。大砲のような轟音だ。次の瞬間には片方の車が黒煙を上げて停車した。また同じ銃声が、今度は3発連続で聞こえた。まだ走っていた方の車が爆発する。

「なんだよあの銃!?」

車を3発で破壊する威力にアランが驚いていると、停車させられた車から青腕章の信者達が降り、車を盾にして丘へと発砲している。遅れていたのか、もう1台装甲車が合流した。だが、それもエンジンを撃ち抜かれて停車する。


 車を無力化すると、狙撃者は直接信者を狙い出した。銃声が聞こえる度に敵が倒れる。車の影にいながら、貫通弾で撃ち抜かれているのも見えた。

「多分だけど、アイツの銃が分かったよ」

巻き込まれないように隠れながら、ナナは戦況を見ていた。

「あの装甲車を3発で爆破出来るとなると、大口径の対物ライフルだね。光ったのはスコープの反射。それで、連射してるからボルトアクションじゃないと思う」

「てことはバレットM82か?」

「ジョー、惜しい。もう一つ上の威力があるやつ。PTRS1941、シモノフ対戦車ライフルだよ」

シモノフ対戦車ライフルは大戦中にソ連で開発された対戦車ライフルだ。セミオートで装弾数は5発。戦車を相手取るだけあって、歩兵や自動車に対しては過剰な破壊力を発揮していた。



 「ナナ、アイツをスカウトしよう」

その狙撃手の一方的な殺戮を見ていたアランはそう思い立った。

「アラン本気?」

「ああ。対物とか対戦車ライフルって扱いが難しいんだろ?それをあんなに上手く扱えるんだ」

「そうだね……とりあえず、話だけはしてみよう」

4人は戦場を迂回して丘に入った。ある程度歩いた辺りで銃声は聞こえなくなった。

「対戦車ライフルはとにかく重いからね。まだそんな遠くに行ってないはず」

「おい、この銃じゃないか?」

おおよそ狙撃手が居たであろう場所に到着した。アランはスコープ付きの大型のライフルを見つけた。

 そこには2m程もあるライフルが二脚で固定して置いてあった。しかし、肝心の狙撃手が見当たらない。辺りを見渡していると、後ろからリリーの小さな声がした。

「ナナ……助けて……」


 振り返ると、長い黒髪の女がリリーの喉元に後ろからナイフを当て、人質にしていた。雪に偽装する真っ白な服を着た彼女のもう片方の手には、拳銃が握られている。アラン達は慌てて武器を構える。

「武器を下ろしてください。貴方達と争うつもりはありません」

「人質取りながら言うなよ!あの対戦車ライフルは君のか?」

「ええ」

「俺達は君を仲間にしようと思って来たんだ。リリーも離してやってくれ」

アランは敵意がないことを示すために、ゆっくりと銃を地面に置いた。ナナとジョーもそれに続く。

「あのロクデナシ教祖について思うことは?信者でないなら、分かりますよね?」

「ああ、あの教祖はマヌケなクソ野郎だ。これでどうだ?」

呆れつつもアランは教祖を罵倒した。すると彼女は信者でないとようやく信用したらしく、リリーを解放して武器を収めた。

「教祖の罵倒が共通言語になってるな」

「私達は反乱突撃隊ってグループ。この前、学校を乗っ取って放送した」

ナナが今更ながら、と自己紹介をした。

「あの放送の……これは失礼しました。ずっと、ソロだったもので」

彼女はモナカと名乗り、身の上を語り出した。


「私はかつて、小さな神社で巫女をしていたのです。……と言っても勝手に住み着いているだけでしたが。ちなみに参拝客はたまにいましたよ。それはともかく、巫女をしたり近くで狩りをしたりして過ごしていたのですが、ある時から信者に目をつけられてしまって……」

「粘着PKってやつ?」

ナナが察したように言う。

「ええ。交戦エリアとは言え、何度も神社を焼かれ、数々の嫌がらせをされたとなると……。そのため、奴らに復讐を」

彼女の口調は穏やかだが、それでも強い意志が感じられた。

「それで、俺達の仲間になってくれるか?」

「彼らに打撃と恐怖を与えられるのなら、喜んで」

アランが手を差し出すとモナカは握り返した。

「なんか、アランってナナのサポート役が板についてるよね

「だな。俺達より向いててちょっと悔しいわ」

後ろでジョーとリリーが話していた時だ。少し離れた場所で爆発が起こった。


 爆音と共に黄色い煙が広がる。

「毒ガスだ!!」

言うが早いか、ナナは真っ先に丘を駆け降りる。アラン達も慌てて後に続いた。その間も位置を変えながら爆発が起こってガスが広がる。よく注意すれば、爆発の直前にジェット機が風を切るような音が聴こえる。

「アレはなんだよ!?」

「毒ガス搭載したミサイル!めちゃくちゃ高価な兵器だよ!」

「どうやら少し怒らせ過ぎてしまったようです……」

走りながらモナカは申し訳なさそうに言った。

「丘の反対に逃げましょう。見つかってなければ、私の車があるはずです」

モナカに先導されて、アラン達は毒ガスから逃げ切った。敵が正確な位置を把握出来ず、またミサイルも4発以降撃ち込まれなかったのが幸いだ。

 アラン達はモナカの車で安全な彼女の家まで避難した。そこは非交戦エリアのため、お互いに攻撃が出来ない。

「改めてよろしくね」

落ち着いたところで、ナナはモナカに右手を差し出す。

「こちらこそ。ただ……」

彼女も握手しようとしたが、途中で手を止めた。

「その前に、手伝って欲しいことがあります」

大口径対物ライフルは移動速度が下がり、サプレッサーが装備出来ません

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