朝焼けの勝利
お久しぶりです。リアルの方が立て込んでおり、久しぶりの投稿となります。
学校の占領からゲーム時間で1夜明け、あの放送を聞いたプレイヤーが何人か仲間に入れるように頼みに来ていた。
「入っていいぞ」
校長室でナナとアランが面接し、フリードが門番のような仕事をしていた。リリーとジョーはこの日入ったメンバーや、これまで対人戦をあまりして来なかったプレイヤーに説明と訓練をしている。
「失礼致します!名前はダグラスと申します!この度は貴殿らの同盟に入れていただきたく、ここに参りました!」
スキンヘッドで大柄な男が名乗った。言葉は丁寧だが、声も大きく迫力は充分だ。
「ダグラスだね。私はリーダーのナナ。面接の前に、そこのマットで靴の泥を落としてね」
「マット……でありますか?」
彼は自分の足元を見る。そこには壁から外された教祖の肖像画があった。
「そう。それだよ」
彼は怪訝そうな顔をしながらも、肖像画で靴の泥を落とす素振りをした。
「それから2回くらいジャンプもしてね」
真意が見えない、と言う表情で跳躍した。
「ありがとう。じゃあ座って」
「失礼致します」
ダグラスはキビキビとした動作で椅子に座った。
「すまないな。スパイ対策に絵踏みさせてるんだ」
アランがそう言うと彼は納得したようだった。ナナが面接を進める。
「それじゃあ、反乱突撃隊に入りたい理由を教えて貰えるかな」
「リアルに戻れないことで落ち込んでいた自分は、先日のスピーチに感銘を受け、自分も行動すべきと思ったからであります」
「なるほどね。ウチはそこまで厳しくしないけど、ある程度は命令に従って貰うつもりだけど大丈夫?」
「本業が自衛官ですので、慣れております!」
あの気迫と動作はそれが由来か、とアランは納得した。それにしては典型的過ぎる気もしたが、キャラ作りをしているプレイヤーも案外多いようで、彼も慣れつつあった。
「教団と教祖についてどう思う?」
「信仰の自由はありますが、このように人のことを巻き込むのであれば、口が悪いですがクソ野郎だと思います」
「なるほど。最後に、クソ教祖に何か言うとしたら?」
「いつかリアルのお前をブン殴ってやるから覚悟しやがれ!で、あります」
ナナは笑顔で「合格」と伝えた。これまで10人程面接しているが絵踏み、教祖と教団への罵倒などを行って教団側のスパイかどうかをチェックしているだけだった。後は一応命令に従えるかの確認だ。基準は緩く、不合格は1人も出していない。
「これからよろしく。校庭でAK持ったハンサムな人が説明してるから、そこに行ってね」
「了解致しました、指揮官殿!」
敬礼をすると、ダグラスは一礼をして校長室を後にした。
「今ので最後だ」
フリードが中に入って来る。
「やっと終わった〜。でもこれから編成考えないとな……指揮官も楽じゃないよ……」
ナナも緊張していたようで、ベレー帽を取ると机に突っ伏した。
それから2デイ、ゲーム内時間で2日が経過した。学校を占拠出来たのは想定外の戦果であり、またちらほらと入隊希望者が訪れるためナナは面接と今後の方針を考える必要があった。
「ナナ、屋上でお弁当食べよ」
リリーは弁当箱を持って教室に入って来た。
「それいいな。俺も一緒に行くわ」
いつの間にか学ランに着替えていたジョーが乗り気で答えた。当の彼女は、机の上に広げた地図を見て考え込んでいた。
「2人で食べて来ていいよ。私は今後の作戦を考える」
「おいおい、たまには休憩しないとだぜ?」
「当初は南部を拠点にカルトに遊撃戦を仕掛ける予定だったから、ここの占領は予想外だったの。作戦練り直そうと思って」
ナナが教室に残るとなると、2人もそこで昼食を食べることになった。
「ナナとリリーはともかく、なんでジョーまで制服着てんだよ?」
「雰囲気だよ雰囲気。学園モノのアニメみたいでなんかいいだろ?というか、アランも着たらどうだ?」
「俺はいいよ」
アランは戦闘服から着替えてはいたが、それでもラフなシャツとジーンズだった。
この日はもう入隊希望者が現れなかったので、次の夜明けに作戦を決行することになった。夕方になって、ナナはメンバー全員を体育館に集めた。新入りが増え、教室には入り切らないからだ。ジョー、リリー、アラン、フリードは幹部としてナナの左右に立っている。
「今回の攻撃目標は北西にある小さな村。車で南側の道を通ったあと、ここから攻め込む」
ナナがプロジェクターを使って説明をする。
「攻撃チームは今回入ってくれた新入りを中心に編成する。攻撃チームは3分の1くらいを想定しているから、残りはリリーとフリードと待機ね」
最後に質疑応答の時間を設けたが質問は出なかった。
「それじゃあ、攻撃チームは夜明けまで待機。おやすみ、戦士諸君」
夜明け、アラン達は学校を出発した。ピックアップトラックや軍用車で安全な南部を経由して村へと向かう。その村はモンスターの狩場が近く、信者が常にたむろしているのだ。
トラックの荷台にナナとアランは乗っている。運転はジョーだ。ナナはFALを抱えながら、気持ち良さそうに歌っていた。
「何の歌なんだ?」
「昔の戦争で、反乱勢力側が歌ってた歌。今の気分にぴったりだと思って」
ナナの歌声をBGMに、アラン達は目標の村へと近付く。特別上手ではないが、悪くない歌声だ。アランはゲームだと分かっていても、夜明け前の空と涼しい風に気持ちが昂るのを感じた。
村はいくつか木の平屋がある、どこかのアニメやゲームで見るような雰囲気の村だった。見えるだけで10人は武装した信者が彷徨いている。狩りから戻ったのか、車が村に入るのも見えた。
アラン達は到着すると素早く荷台から飛び降り、散開した。
「攻撃開始!1人も逃すな!」
ナナの号令でメンバーが次々と前進し、驚いている敵を攻撃した。アランは荷台に残って牽制射撃を行う。隠れる場所を探そうと動き回る敵にある程度弾幕を浴びせると、自分もナナ達と合流した。完全な奇襲で、銃ではなく食べ物を抱えて走る敵がいたくらいだ。アランはナナの近くの岩を盾にして攻撃を再開した。走る敵をフルオートで掃射して追い詰める。脚に当たったところで弾が切れ、その敵は倒れたテーブルの陰に隠れたが、ナナがセミオートで10発撃つと貫通弾で撃破された。
「前に出るよ!」
ナナが前進すると他の面々も距離を詰めた。リロードを終えたアランも、腰だめで牽制しながら前進する。
ようやく信者側も体勢を整え、激しく応射するようになった。地面に伏せたアランの上を、何発もの弾が通り過ぎる。
「コイツを食らえ!」
ジョーが手榴弾を次々と投げる。爆発の衝撃で射撃が中断された隙に、アランは場所を変えた。すると偶然にも2人の敵の側面を取ることが出来た。やや反動に難儀したが立射のままフルオートで撃ち、素早く撃破した。念の為とマガジンを変えて、先程敵のいた場所まで進む。するとすぐ近くの建物の影から声が聞こえた。
「後ろに下がるから援護を頼む!」
「了解だ!」
激しい銃声も聞こえる。気付かれてはいないが、すぐ近くにいるようだ。意を決し、アランは飛び出した。すぐに6人程の敵が目に入り、無我夢中で撃ちまくった。3人倒したのまでは分かったが、反撃の弾を食らって後ろに倒れる。慌てて物陰に戻って包帯型のアイテムで治療する。
「今だ、突っ込め!!」
その時ナナの声が聞こえ、仲間が走り出すのが見えた。多少の応射は物ともせずに突撃し、一気に攻め込んだ。数も少なくなり、慌てた敵は逃げ出したが、総攻撃によって全滅した。
朝日が昇る。勝利の後に見る朝日はいつもより綺麗に感じた。最後に敵が逃げた先は平原になり、塹壕が掘られていた。一応そこも確認したが、敵はいなかった。この村も占拠したのだ。
「こういう勝利の積み重ねが大事なんだよ」
ナナは眩しそうに朝日を見上げた。アランもどこか、清々しい気分であった。




