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弟 雪哉

 姉さん、本当に会いたかった!


「雪哉?」

 弟に力いっぱいハグされて、このイケメンが本当に雪哉だと確信した。雪哉は小さい頃から頭脳明晰でとても優しい子だった。優しすぎて傷つきやすく辛い事があるとこんな風に私にしがみついて泣いていたからだ。


 3年前に雪哉が亡くなった時、実感もなく現実を受け入れられずに(あぁ、この子はいい子過ぎて神に召された)と思った。……無宗教だけどね。

 

 でも……そうか、本当に私の知らない世界に来てしまったんだね。改めて自分が死んで違う場所に存在していることを痛感した。


「雪哉、私も死んだんだよね? ここは天国とか地獄とかそんな場所なの?」

「ここはご覧の通り百四十と数年前の日本だよ」

「転生……したってこと?」

「一番わかりやすい言葉で言うならそうだね」


 百四十数年前・・・

 明治時代なのか・・・

 

「なんで雪哉はここに来たの?どうして私だってわかったの?私、性別変わっちゃってるじゃない?」

「いま僕は明治政府で働いているんだけど、政府御用達のね、陰陽師とか巫女とかがいてね。お告げをくれたんだ。 3日前に『3日の後貴方がこの時代に顕現し場所に貴方の姉が現れる』って感じの・・・」

「それが今日?」

「うん。今朝ここに若い男の子がいてこの小屋に入っていったでしょ?で、男の子だったんで僕も声かける自信なくてどうしようって思っているうち日が暮れて寒くなってきて、他に誰も通らないし、人買いのような輩が入っていったんで、これは賭けだって思って小屋に入ったんだよ。でも入って良かった!あんなやつらに姉さんが・・・」


 

 神様ありがとうございます!弟に再び会えて、啓示を与えてくださって助けていただいて本当にありがとうございます!無宗教だなんて言い切ってすみません!猛省します!


「で、ここはどこなの?」

「松戸神社の近く。松戸神社のね、水戸光圀公に縁の古~い御神木の銀杏の木に啓示が現れるのを、んだよ。今いるこの場所はあと数年で戸定邸って、徳川のお屋敷ができるとこだよ」

「徳川っ?!」

「そうそう、ちょうどこの丘の上にできるはずだよね」

「戸定邸・・・ってなんだっけ?徳川昭武?そうそうプリンス昭武だ!」

「さすが姉さん。でも存命の御仁だからね。徳川慶喜公も御存命だから。僕以外の人にめったなことを口にしないようにね」

 

 徳川慶喜ですって?!ご存命ですって?!そうだよね。ここに戸定邸ができたらいらっしゃるのだしね!なんかガンガンテンション上がってきた!見たいっ! 歴史上の人物興味ありまくるんだよね!歴女、と呼ばれるほどではないが歴史上の偉人は大好物だ!


 あっ、あれ?もしかしてもしかして!

 

 「ねぇねぇ、もしかしていらっしゃるのかなぁ~、ほらほら、幕末のぉ~浅黄色のぉ~だんだらのぉ~生き残り的なお方はっ!」


 すごく興奮して早口になっているのかもしれない、雪哉がちょっと真顔になってからくすっと笑った。


 「ごめんね、僕は新撰組には詳しくないんだ。だけど長倉新八氏はたしか松前にいるはず、斎藤一氏は警視局にいるから逢いたかったら逢えるね」


 マ~ジ~かぁ~!はぁぁ。斎藤一見たい!逢いたい!生きててよかった!!!


 あ、死んだんだったね。


 というか、


「ねぇ、さっき明治政府で働いているって言った?それって薩長の有名人ばかりじゃない、どうやって突入したの?」

「それはね、明治政府の通訳をしているアレクサンダー・シーボルト氏が帰国するんで代わりに僕が通訳の仕事をすることになったから。姉さんならわかるでしょう?どうせなら明治維新の有名人に逢ってみたいじゃないか!」


「シーボルト?シーボルトってあのシーボルト事件のシーボルト?」

「シーボルト事件はフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト。アレクサンダーはその息子だよ」

 もう有名人の名前ばっかりで頭が飽和してきた。通訳かぁ!そっか語学ならこの時代の人たちにイニシアチブをとれるかもね!


「通訳って英語?オランダ語じゃないよねまさか」

「英語だよ。佐幕、つまり幕府寄りだった人には、徳川慶喜がナポレオンと交流があったり徳川昭武がナポレオンと謁見したりしてるんでフランス語が堪能な者が重宝されて、明治政府、つまり薩長の方面は英語が重宝されるんだ。僕は一応両方できるし。」


 弟が優秀すぎて嬉しすぎる。雪哉と一緒にいれば餓死はしなさそう。

私は江戸川を見つめながらこの世界にきた意味を考える。やるべきことがわからない今、やりたいことを優先してもいいんじゃないかな?


 明日は斎藤一を見に行こうそうしよう!ごめんね椙山班長・・・ちょっとやる気を蓄えたら捜しにいきますからねっ!今日はもう日が暮れてしまったので弟とさっきの小屋で明日の日の出を待つことにした。


「ふふっ 斎藤一っ」

「姉さん、まるでコンサートに行く前の夜のようなアガりっぷりだね」

 寒かったので、小さかった子供のころのように  弟を抱きしめながら眠りについた。


 寂しい丘の上の掘立小屋の藁の上で ぴったりと抱き合って眠る少年2人って前世で好物だったイラストのようだね。

 


 

10/29 誤字脱字、わかりにくい言い回しを改変しました。

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