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編集長に捕まってしまった・・・


  編集長に捕まってしまった・・・などと言うと

 「頑張れよ!」

と言われそうな気がするけどこれはそんな根性で乗り切れそうなお話ではなさそうだ。

 頭がいい人なのはわかるけど、どうしてもこのギラギラネトネトな眼光には慣れる気がしない。

 というか生理的に無理である!


「今まで女性編集がいなかった少年誌になんで女性の新入社員を引っ張ってきたかわかるか?」

 編集長が編集長らしい質問をする。

「さぁ……多様性の時代だからですか?」

「ちがうな。女性がいた方が編集部が華やぐからだ。二ノ宮は俺の縁故だが、お前は俺の好みの顔だったからだな」

 鳳が鳳らしい答えをしてニヤっと笑った。

 悪寒が走る。


「やめて下さい編集長!セクハラです!」

 無駄だとわかっていても抵抗してみる。


 柱に後ろ手を回され腰紐で縛られた。

「編集長がこんな悪代官気質だとは知りませんでした!尊敬していたのに!」

 別に尊敬なんてしたことはないけど。


 私は俯いて泣き真似をしながら編集長がいなくなるシュチュエーションにもっていこうと画策する。

 いなくなってくれさえすれば刃物かなにか生成して逃げられるからだ。


 居なくなる……厠に行ってくれれば……

 水分とらせるのはどうだ、お茶?酒?酒だ!


「編集長、部下を縛り上げてどうするつもりですか?どうせならお酒を振る舞うとかしてくださいよぉ」

 泣き真似から唐突にならないようにさりげなく悲しげに笑ってみせて呑みを要求してみる。


「編集長は優秀な手腕で編集長になった凄腕の編集さんだったんですね」

 私は変な雰囲気にならないように必死にヨイショをする。

「はっはっは 違うな。俺は栄光社の大株主だから出世が早いんだよ」

「でも椙山班長も編集長は凄い人だって褒めてましたよ?」


 発言権を持ってるほどの大株主だとは知らなかった。

 いったい何パーセント持ってるんだろう?

 私の苦し紛れの返事はかえって鳳の地雷を踏んだようで

「フン」と鼻で笑われた。

「す、ぎ、や、ま の言い方が甘ったるくて反吐がでそうだ。俺が気に入って配属させた女子社員を奪いやがって!アイツといつから懇ろになってたんだ?明治(こっち)では男になって残念だったな!」

「えっ?!そんな!残念なんて事は!そもそも私たちは……」

「ふーん。残念じゃない?あっちは女でこっちは男で両方楽しめてラッキーとか思っているんだな?そいつは羨ましいこって!」


 上司であった人に後ろ手で縛り上げられているこの状態で、話しをすればどうにかなるのではなんて空想だった。


「あぁ、酒が呑みたいんだったな」

 残念ながら部屋に酒が常備されていて部屋から出てはくれなかった。

「酒、呑みたいんだろう?」

 鳳が一升瓶から湯呑みに酒を注ぐと自分の口に含み、私の口を手でこじ開けて流し込む。


 無理無理無理無理無理!

 生理的に無理〜!


 入れられた酒を口を閉じずに全部溢した。

 マジきしょい!

「すみません!アルコールアレルギーなんですっ!」

 とりあえず怒らせないようにいい訳はしておく。

「ほう?」

 私に構わず一人で呑んで早くおしっこに行けよ!

 愛想笑いしている私の顎を掴み

「全部溢したのか?酒がもったいないだろう?」

 とわたしの唇から胸元まで舐め始めた。


 そのままびしょびしょになった袴を脱がせて着物の合わせをひらく。

「おい松戸、なんだこれ?」

「あ、これはですね、どうしても(ふんどし)が無理だったので、褌の生地で短いステテコを作ったんですよ。前開きのここのとこに紐つけて結んでいるだけなんですが便利ですよ?うちはみんなコレ履いてます。編集長にもお作りしましょうか?」


 長めのトランクスのようなやつで、平ゴムが手に入らないので基本的に紐で結ぶようなパンツを作って愛用している。

 褌はムリ。

 サッとパンツを下ろせば用が足せる時代に育った我々は尿意がきてから褌を外そうとすると時間がかかりすぎてちびる。

 袴だけでも厄介なのに……

 明治(こっち)に来てから最初に作ったのがコレで、雪哉と香取くんも欲しがり、今では椙山も八坂さんも愛用している。通算で100枚以上は縫っている。椙山のお風呂屋さんで売りたいという野望もあるので暇に明かして縫っていたからストックも結構な数だ。

 難易度で言うならエプロンと大差ない。


「へぇ、コレは楽そうだな。この紐を解くと……ポロンとおでましになるんだな。へぇ、本当に男になったんだな。松戸にこんなものがついてるなんて許せないな」

 酒でベタベタになった私のモノを鳳がてで弄ぶ。


「他人のコレを触ったことはなかったが、なかなかいい眺めじゃないか?」


「あらぁ叔父様!この可愛い子はだぁれ?」

 突然うえから甘ったるい声がして気づくと目の前に姫野りかが立っていた。


 これが報告にあったタイムリープのトンネルからでてきた……という事なのか?ならずっと私達をどこかから監視していたのだろう。


「はぁ、またお前か。いつも覗いているのか?いい趣味だな。コイツは松戸だよ。椙山と一緒に編集で行かせただろう?お前が現れて禿を連れ去った座敷にもいたぞ」


「あぁ、椙山さんと来た若い女性編集ね。なんで男の子に転生したの?男になりたかったの?それとも椙山さんが男になって欲しかったのかしら」


 姫野が舐めるように全身をジロジロ見てくる。

「可愛いわね。なかなか私の好みだわ。女の子みたいな顔しているのにここは意外と立派なところも凄くいいわ」


 姫野の登場のせいで、今にも私を陵辱そうだった鳳が冷めたいつもの編集長の顔に戻った。

「コイツは俺の部下で、俺が狙ってたんだぞ?また勝手に連れていかれたら困る!それにどうせ椙山のお手つきだ」


 なんだろうこの状況!

 編集長と姫野りかが私を取り合ってる?


 どんな究極の選択だよ!


「椙山さんが?へぇ〜 いくら誘惑しても靡かないと思ったら彼は男色だったのね」

 姫野が私の頬に触れる。


 鳥肌がたつ……

 彰人さんは男色なの?たしかに私が女性だった時は口付けもしてないけど、私を愛していたって言ってくれたはずでは?


 姫野が私の唇に指で触れてそのまま下に向かって指を這わせる。

 椙山に対する疑心暗鬼と姫野に触れられている不快感で気がおかしくなりそうだ。

 姫野は私の身体に指を這わせながら目は私の下半身の一部分を凝視している。


 もうだめ!

 もう限界!


 編集長は酒を呑みながら私を弄る姫野を見ている。

 姫野は私の下半身を凝視……

 今でしょ!

 私は縛られている左手を右手の下にずらし右手に日本刀を生成して,勢いよく腕を抜いた。

 結ばれていた腰紐がはらりと斬って落とされた。


 突然現れた日本刀に鳳と姫野が怯んだ隙にとびずさり、勢いよくぶん回す。

 数回ぶん回しても当たらなかったので走って逃げた。

 唖然として固まっている2人を尻目に玄関まで突っ走り、外に出るや否やスクーターを生成して逃げた。


 数キロ走って追ってこないことを確認してから電気うるさいスクーターは消し、静かな電気自動車に生成しなおして神田の本部に戻ってきた。……が誰もいなかった。


「どういう事?なんで誰も居ないの?」

 私は緊張の糸が緩んで誰もいない不安をよそにそのまま崩れ落ちるように眠ってしまった。


「おい、綾 起きろ!」

 畳の上で眠っていた私を起こしたのは椙山だった。

「こんな暗いなかで半裸で寝ていたら風邪をひくぞ」


 私は椙山から、姫野が現れる危険のある鳳の居所と吉原健吾が思った以上に近くにいる事を危惧して八坂さんの家に避難させた事、私を迎えにここに戻ってきた事を説明すると

「それにしでめ何があった?なんでそんな格好なんだ?」

 と私の肩を抱いた。


「彰人さん……」

 椙山の顔を見ると安心して涙が零れた。

 甘えなのだろうか、ここにもし椙山以外の人が一緒に来ていたら私はきっと泣かなかっただろう。

 椙山に縋り付いて泣きながら鳳に捕まったところからの一部始終を話した。


「やっぱり姫野が現れたか」

 椙山は一度私の身体を離し

「だから身体がベタベタなんだな……風呂に入りたいか?湯で拭うか?」

 椙山が私の眼を覗き込み

「それとも俺に舐められたいか?」

 と言ってニヤっと笑った。


「あの二人に綾の大事なところを見せて、そのままフルチンで外を走ってきたなんて、お仕置きが必要だと思わないか?」


 フルチンで外を?!

 気づかなかった……たしかにそう。

 ここが令和だったら捕まってたね私!


 椙山は私に

 舐めるように口付けをすると

「思ったよりいい酒だな」

 と言って舌をだした。

 ……心労が酷くて笑えない。


「今日は特殊能力もいっぱい使ったから疲れただろう?俺が綺麗に舐めとってやるから、そしたら二人で一緒に風呂に入ろう」


 椙山との行為に癒しと幸せを感じながらも、頭のなかに姫野の男色なのでは?と言った声が過りモヤモヤした気持ちになった。

 

 私の幸せな気持ちを返せ……

 

 

 

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