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作戦会議

 一人一人潰れていって私と椙山と雪哉だけになった。

 雪哉は殆ど喋らないで日本酒を舐めているし、だんだんと気まずくなってくる。

 私、先に寝ちゃおうかな……そしたら雪哉と椙山はどうするのかな……

 どちらかと言うと雪哉が意地をはって頑張って起きているような雰囲気だ。


「俺もう無理!寝る。綾、布団の場所教えて」

 椙山が急に欠伸をしながら立ち上がった。

「雪哉くんごめんね。お先に……」


 布団の場所なんて押し入れに決まっている。わざとらしく欠伸して布団の場所を聞くのは私と一緒に私の部屋に移動するためだろう。

 ……細かいところまで策士!


「雪哉お先に!いつまでもちびちび飲んでないで早く寝なよ?」

 仕方ないから私も引き上げることにした。


「綾……」

 雪哉がお酒で紅潮した顔で私の顔をみる。と、目が合うなり逸らされてしまった。

 この仕草は知っている。

 雪哉が小さい頃から悔しくて仕方ない時にするヤツだ。

 私は雪哉を立たせるとハグして後ろ頭をポンポンした。雪哉の部屋に連れて行き布団に寝かせる。

「そんな顔しないの。また一緒に寝ようね」

 軽く頭を撫でてあげる。

「綾……キスして?おでこでもほっぺでもどっちでもいいから」

 普段は甘えてもそんな事言わない雪哉が縋るような眼で私を見ている。


 なんてかわいいの?!私の弟!!

 おでこにキスしようとした瞬間に雪哉が上を向いて唇が合わさる。

「雪哉?」

 雪哉はふふっと笑って布団に潜ってしまった。


 こんな悪戯にひっかかるなんて……と思いながら

「おやすみ」と言い残し一旦『真ん中の部屋』に戻ると、私の部屋に行ったはずの椙山が腕組みをしながら一部始終をみていたらしく少し眉間に皺をよせていた。

「あ……」と私が言うと黙って肩を抱いて私の部屋に引き込んで、後ろ手で襖を閉め唇を奪われる。


 これはどうしたものか……

 弟と何してんだと責めるように口付けが深くなっていく。ヤバい!これ以上したら続きが求められてしまう。

 必死で椙山の背中をポンポン叩いて身体を離して貰った。

「彰人さんダメです!他の皆と唐紙一枚しか遮断されてないんですよ?聞こえちゃいます」

 囁くように文句を言うと椙山は私の耳元で

「綾と君の弟は本当の兄弟なの?」

 と聞いてきた。

「母は同じです……」

「えっ……異父兄弟なのか?すまない。変なこと聞いた」

 急に慌てて誤ってきた。

 ちょっと落ち着いたかな……


「気にしないで下さい。父も同じなんで……」

 私が舌をだすと目が点になった椙山に

「あ〜や〜!」と非難声で言われ、布団に押し倒された。

「何か言いたい事でも?」

 私がとぼけて言うと

「言いたいことはない。お仕置きが必要なだけだ……」


 敷布団に横になった私に掛け布団をバサっと掛けると、椙山は布団に潜って好き勝手に私を可愛がり始めた。

 えっ?ちょっ!ヤバいって!

 ヤバいヤバいヤバい〜!!

 これはお仕置きじゃなくて拷問にちかい。


 あっさり波にのまれた私は疲れて寝てしまったようだ。気づいたら朝で、彼の腕枕で眼を覚ました。


 椙山はまだ寝ている。

 朝の光の中で彼の整った横顔を見つめる。

 編集部で出逢って淡い恋心を抱いたのが遠い過去のようだ。


 実際は遠い未来なんだけど……


 思いっきりはだけていた寝間着の前を掻き合わせ、そっと布団を抜け出して厠に向かう。

 廊下にでようとすると、 ふと『真ん中の部屋』から声が聞こえた気がした。襖を開けると香取くんと雪哉がロシア語で内緒話をしている。


 「おはよう」

 私にはロシア語はわからないので何を話しているのかわからなかったけれど二人は明らかにビクっとして、とり繕うように

 「おはよう」と言った。


 まぁいいや。言いたいことは色々あるだろうけど、私たちは好き嫌いを言って敵や味方に分かれている学生の派閥とはわけが違う。好きでも嫌いでもお互いの長所を生かしあっ 私は今ここにいる人たちは全員大好きだけどね。私は今ここにいる人たちは全員大好きだけどね。

 香取くんが改まった風に口を開くのですこし身構えてしまう。

 「うん。なに?」

 「実は昨日初めて聞いたことが多くて僕たちかなり頭の整理が必要なんです。たぶん椙山さんには八坂さんがきちんと全部報告していると思うんですが、こっちは足りていない情報が多かったので……あまりよくはないとおもうんですが、ちょっと紙に書いて整理してもいいですか?」


 「はぁ……だよね。私も書いて見直したいことがいっぱいある。どうする?残る紙に書く?それとも私があとで消えるヤツ生成する?」

 「あとで消えたら困る場合もあるので普通の紙にしましょう。あとで無い方がいい状況になったら燃やせばいいので、普通にペンとインクで書きますよ。いいですか?」

 「うん。あ、整理する前に朝餉の準備したほうがいいかな?」

 「雪哉が飯炊いて味噌汁作ってくれています。大根を買ってきたので大根の味噌汁と、大根と魚の煮つけです」

 「すごーい。朝から頑張ったね。雪哉」

 「……まぁね」


 「まず、元凶(ラスボス)から情報を浚いたいんですが鳳さんじゃなく姫野さんって方なんですね。どんな人なんですか?」

 

 「私がわかる情報を箇条書きで書き出してみるから、あとで整理して」

 私は声に出しながらそのまま書いてみる。


 「姫野りか。あ、これってPN(ペンネーム)なんだけど本名は椙山さんも知らないって。年齢……ん~20代後半から30代キレイなおねぇさん系……漫画家は2年前から。ってその前は何していたんだろう?渋谷に住んでて、部屋にはでっかい水晶玉があった。初連載でアニメ化……アシスタントはイケメンばっかりらしいよ。あ、吉原健吾くんも元アシらしい。被害にあった先輩アシが栄光社の警備員やってて、で彼も警備員だった。健吾君曰く、今は椙山さん狙いだとか……ん?その狙いって恋情なのかな?陰謀なのかな?そして、安倍晴明の子孫にあたるらしい。こうして改めて分析しようとすると何もわかってないね……」


 「安倍晴明……ってことはお稲荷さんの、ほら何だっけ玉藻前(たまものまえ)?殺生石にされた……」

 雪哉が言うと香取くんが

 「違う違う、葉狐(くずはのきつね)だよ。神様じゃなかった?」

 う~ん……とうなっていたら椙山が起きてきた。

 「宇迦之御魂神(うかのみたま)ってお稲荷さんの化身の妖狐だよ。姫野と鳳は遠縁にあたるらしいけど、鳳が安倍晴明の子孫って話は聞いたことないな……」


 「じゃあ姫野って人を殺生石に封印するってわけにもいかないんですね」

 香取くんがちろっと舌を出す。

 「僕が鳳さんにそういう話はしない方がいいんですか?鳳さんが元凶(ラスボス)と思ってたんですが違ったんですよね?」

 雪哉が椙山に質問すると椙山が

 「君の安全のためには絶対に言わない方がいいな……あの人の人となりはもう雪哉くんが嫌って程わかっているだろう?」

 椙山が初めて接待中に殺されて明治(こっち)に来た時に何をされたかの説明をした。

 「じゃあ鳳さんはまんまと自分が欲しい能力を得たのに、帰るための能力は椙山さんに取らしたんですね。業腹というかある意味すげぇな……」

 香取くんが驚いている。


 そうか、香取くんだけ鳳編集長に会った事ないんだもんね……

 「そのうえパラレルワールドの検証もしたらしいよ」

 「えっ、どんな?」

 「編集長が奈良のご先祖様を殺して、自分が消えるか試したんだって」

 「ええぇ~?!消えたらどうするんですか?ってか普通は消えますよね?自分が産まれてこれなくなるんですから」

 「消えたら椙山さんの能力でどうにかする予定だったらしい」

 

 白熱して話していたら八坂さんも起きてきたので一旦みんなで雪哉の作った朝ごはんを食べた。

 「じゃあ、僕と椙山さんが会っているって話も鳳さんには言わない方がいいのかな……」

 雪哉が大根のお味噌汁をつつきながら悩んでいると

 「う~ん……あの人を味方だとは考えない方が安全なんだよなぁ……色々と気も回るから、俺と会って話をしているとか余計なことは一切言わない方がいいかもしれない。なんか企んでいるとか疑いそうだ。俺が上野にいるってことも知らないし、八坂さんと一緒にいることも知らない」

 椙山が言うと

 「曲者って言葉があんなに似合う人は他にいないでしょうね。あの人も転生者だったなんてこれっぽっちも気づきませんでしたよ。最初から明治政府の重鎮みたいにしていましたし」

 と八坂さんもいう。


 凄いね、編集長!あなたのことを気に入ってる人はいないみたい。

 「じゃあ鳳編集長から姫野先生の情報を入手するのは難しそうなんですか?」

 私が問うと椙山が

 「もしも必要になった時に行動できるのは綾だけかもしれないな……それより吉原健吾を仲間に入れたふりをして鳳のところに行ってもらった方がいいんじゃないか?あいつ女性に転生したんだろう?美人だったか?」


 「なんで美人かどうか彰人さんが気にするんですか?」

 「それは鳳が面食いだからだよ」


 なんだ、そうか……


 「女性接待はいつになったんだ?」

 なぜかちょっとごまかすように椙山が私に聞いてくる。


 わかるわけない。

 あなたのとこにいたんだから。

 「いつになったの?」

 「鳳さんはいつでもいいと言っています」

 「吉原から呼ぶ予定の女性は月曜か火曜が都合よいと言っていました。美女でしたよ、化粧濃いけど……」


 ん?香取くんもうその人に会っているの?なんで?

 ま、いっか……


 「じゃあ次の火曜にしてもらえるか?その時に吉原健吾も連れてきてもらいたいんだけど、この家に入れたくないし、八坂さんの隣の部屋に連れてきて、ついでに見張ってもらうかな……鳳に遊女紹介する時、まず酒を呑みに行くだろう?雪哉くんと吉原健吾と綾も行ってきてくれないか?雪哉くんが綾と一緒にいるのに会わないのは不自然だし、大勢いる時に顔合わせしておいたらいい。あと、吉原健吾も転生者らしい。姫野に殺されたって言ってもらおう」


 「やっぱり爆弾犯は姫野先生なのか……じゃあ健吾くんには何て話をしておけばいいですか?」

 「身売りしたくないなら助けてあげる~ついてきて~。とか言えばいいんじゃないか?」

 「それだけですか?彰人さんのこととかは?」

 「気が変わったら困るから余計な情報は与えずに連れ出してしまえ。後で俺が話す。その時に雪哉くんと香取くんも連れてくればいいだろう?事後報告よりその場にいたほうがいい。情報は鮮度だ、表情からも色々わかるしな」


 今日は金曜だからこの後、雪哉は内務省に出向き、鳳に火曜に座敷を用意すると伝える。

 夕方には香取くんと私は吉原に出向く。健吾に火曜に遊女を手配してもらい、私が足抜けの誘いをかけるという予定になった。


 夜にはここに戻り、今日の様子を共有する予定だ。


 「しかし、姫野はどこに隠れているんだろうな……」

 椙山がぽつりと呟いた。

 ほんと、それな!

 

 

 

 

 



 

 

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