椙山の攻撃
……元凶は姫野先生だったと言う事は、編集長よりも人となりがわからなくて対策立てられない。
「つまり姫野先生は誰の子孫なんですか?」
「安倍晴明だよ。学生のころ自分のルーツについて調べていたところ何代だったか前に土御門という性を見つけてそこからスピリチュアルに目覚めたらしい。スピリチュアルと言っても精神世界というよりは呪術とか占星術とか黒魔術とかそっちの方だと聞いている」
「聞いている……ってそんな話するほど仲がいいんですか?」
椙山に ふっ……と笑って流し目された。
嫉妬しているとか思われてそう……悔しい……まぁ事実だけど!
「聞いたのは鳳さんからだ。姫野先生の遠縁にあたるらしい。」
あ、編集長が親戚だったのか……
「えっ、じゃあ編集長はやっぱり敵側に分類されませんか?」
「可能性はゼロではないと思っている。だけどあの人は姫野先生がゴリ押しで少年誌移動を希望しているのを最後まで反対していたし、酒飲みながら愚痴も聞いた。愚痴というよりは相当な悪口だったけどな、表向きは編集長が呼んだことになっているから他言無用だ」
「相当な悪口ってw相当気になります!」
「だろうな。でも聞かないでおけ。聞いて得するようなことでもないし、編集長の人格を疑いたくなってしまうかもしれないだろう?」
椙山が上目遣いでクスっと笑って短い口づけをしてきた。
なんだろう?令和においてこの人はさりげなさを装ったできる男系で、他の編集の先輩たちよりも垢ぬけているというかスマートというか、つまりイケていた。
なのになんでこんなに明治にいるとこんなに粋な雰囲気を醸し出すのだろう?
マジでめっちゃかっけぇ!
「なんでそんなに明治になじんでるんですか?明治のほうが好きなんですか?」
「そうだなぁ、やるべきデカいことがあって明治に居るわけだけど、どうせいるなら楽しんだ方がいいだろう?令和とどっちがいいとかは言えないけど明治はわりと好きだなぁ。好きだと思えば力まないで浸かっていた方が馴染むと思わないか?そこでの自分らしさというか明治でしかできないことを楽しめばいい。その方が柔軟な発想もできるし。というのが俺の考え方だ」
なるほど。だからこの人は令和でもイケてるんだ。
時代に流されないように必死になるより、流れを楽しむから。それは時代の話だけじゃなくて仕事においても環境においてもすべてそうなんだろう。エリートほど力まないで、その分の力を別の有意義なところに回してるんだろうね。
見習いたい。無理だけど…… はぁ。とため息が出た。
「なんだ?どうした?幻滅したか?」
「まさか!椙山彰人という人が明治に似合いすぎてて怖いなぁと思っただけです。かっけぇ~~~~!!!って思ってますよ」
椙山の大きな手を自身の目の辺りにあてて笑う。
口元しか見えない彼が
「離れがたくなるだろう……」と呟いた。
「それはそうと、彰人さん!」
私はあることを思いついて元気な声をだした。
「煽るのも上手いが、空気ぶった切るのも上手いな……」
椙山が驚いて顔から手を放す。あ~なんて色っぽい手なんだろう……いや、今はそうじゃなくて。
「明治にはどのくらいの人が他の時代から転生してるんですか?なんでこの時代なんですか?」
「それな……まぁ、これは俺の仮説なんだが……」
「全然間違っていてもかまいません。私には訳が分からなすぎるから彰人さんの考えが聞きたいです」
「安倍晴明の母親は葉狐という妖狐でお稲荷さんの化身とされている。宇迦之御魂神という神で神社に祀られていることが多い。……ここまでいいか?」
「あ、えっと難しいですね。一応最後まで聞くので理解できなかったら後でかいつまんでください」
「あはは。了解!つまり安倍晴明は呪術者だが神の血もひいているんで仏教というよりは神道に通じているんじゃないかと思う。つまり姫野もその血だ。あいつの本名を知らないからあいつがどこの神社とつながっているのかわからないが、自分が欲しい異能のために神社の御神木を媒体にしたのではないかと思う。わかりやすくするなら能力の受け取り窓口って事だ。それがどういうを方法を使ったのかはわからないが、同じ条件を満たせば他の者にも同じ事象が起こってしまうという事に気づかなかったんだな。だから我々も自分がつながっている神社の御神木から神託のような異能をいただけたわけだ。」
「そこは感謝ですね。何の力もなく立ち向かえる相手ではなさそうですもんね」
「まぁ、そうだな。俺もこの力を得られなければお前をこの時代に連れてこられなかったわけだし。……本当に巻き込んですまない。危険な目にあわせている自覚はあるんだ。放置しているように見えるかもしれないが、綾がそれを乗り越えられることも……あぁ、これは言わないでおく」
「なんですか!教えてくださいって言いたいところですけど、まぁいいです。必要になったら教えてください。じゃあ、どのくらいの人が明治にきてるんですか?っていう質問については?」
「それは俺にもわからない。姫野が光栄社を爆発させただろう?どのくらいの人が巻き込まれたのかわからない。あの日 俺はあの時間に爆発するのを知っていたからできるだけ多くの人に退社を促したんだが、警備の吉原も巻き込まれたんだろう?それと……あの事件以外でもどうやら姫野が関係している殺人事件の被害者は明治に来ている。綾の弟くんたちがそうだ。だが、八坂さんのように全く違う時代からも来ているという事がわからない。もしかしたらだけど姫野が何か呪術によって世界を歪めてしまっているなら……いやこれは推測の域というよりこじつけに近いからこれも今はやめておこう。とにかく思っているより多い人たちがこの明治10年に集結しているように思う。弟さんたちが来たのが明治7年だったか?八坂さんが来たのは明治になってすぐだったらしい。もうちょっと早ければ江戸幕府が見られたのにって残念がっていたから」
「私がどうやってこの場所にきたかわかりますか?」
「どうやって?手段のことか?八坂さんに負ぶってもらったんじゃないのか?」
「それは上野広小路からで、そこまではスクーターを生成して乗ってきました」
「あぁ、そうか。そう聞いたな」
「どうせなら暴走族のような音出すとか、何か、明治になくて昭和以降にはありそうな音で釣れないでしょうか?転生者を。味方は多い方がいいのでしょう?」
「面白そうだな。何がいいか考えてみよう」
「じゃあ今夜帰るところからなんかやります?」
「今夜?帰るのか?」
「帰りますよ!夜には腫れもひくでしょうから……」
「無理だ。あと1週間はここで過ごさないか?蜜月のように……」
突然また甘い声をだされてドキリとする。その流し目ずるい!
「無理ってなんですか?」
「このあとまた腫れるかもしれないだろう?」
さっき椙山の顔を覆っていた大きな手が私の頬に触れる。
これどういう感じ?からかわれているの?それとも本気?
「綾とやっと想いが通じたのと、その膨らんでいくフェロモンの相乗効果で平常心を保つのが難しいんだ。次いつ会えるかもわからないしせめてあと3日くらい……」
「そんな……私だって彰人さんといたいけど、編集長の接待が先だし、健吾くんの問題もあるし、そっちを先にかたずけないと」
「それは優秀な弟くんたちがいるから任せればいいだろう?どうしても今日帰りたいのか?」
椙山がさらに身を寄せて顔を近づける。
私だってやっと会えて通じ合った相手だ。他のことを優先したくはないけれど、そういうわけにもいかない。
「綾……」
「ダメです!まだ痛いし!」
「強がるな……勃ってるぞ?」
あぁぁぁぁぁ。。。そうだった!
私、下半身まるだしだったよ(泣)




