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吉原の禿

いろんな方向から考えてみたけれど、女性に転生した健吾君をここに捨て置く判断はできなかった。あの爆発に巻き込まれて死んだのならばどう考えても彼(彼女)は被害者だからだ。

 椙山が元凶(ラスボス)は『私も知っている人』と言った。ならば鳳編集長じゃなかったとしても健吾君も知っている人。という命題が成り立つ。


「健吾君さぁ、自分が事故で明治に転生したとか、鳳編集長も椙山班長もいるよって聞いて、すんなり受け入れっれちゃうの?これの真実はどうなの?誰が悪いの?とか聞くのが普通じゃない?能力はどうやって得たの?」

「俺だって混乱しましたよ!警備員の休憩室に居たら急に爆音が聞こえて壁倒れてきて押しつぶされたんです。頭が割れるような頭痛が来て、ああ死んだな……って思ったら寒っ!ってなってここに居たんです。少し先に明かりがいっぱい見えて、気づいたらこの桜の木が光っていて、なんとなくですけど願いを言えば叶いそうなそんな気がして……」  

 「願いが叶いそうな気がして、健吾くんは何を願ったの?」

 「何が起こってるかわからなくって、どこにいるかもわからない時に欲しいもの……それは千里眼スキルかなぁって……」

 「千里眼……面白いもの願ったね!何ができるの?それ!」

 だまって聞いていた香取くんが目をキラキラさせて会話に入ってきた。


 「あ、弟さん……じゃあないんでしたっけ?俺とタメの……」

 「あ~ごめんね紹介しなくて。彼は香取聖太朗くん。私の高校の後輩で弟の親友なの。で、こっちの彼女は栄光社の警備員やっていた吉原健吾くん。歳はそうだね、弟たちと同じだったね。警備員になる前は漫画を描いてたんだって」

 「先輩!今弟たちって言いました?僕も弟カテゴリーに入ってるんですか?家族ですか?」

 警戒してしかめっ面だった香取くんの顔がパァっと輝いた。

 「そりゃあ弟みたいなもんだし、一緒に住んでるんだから家族でしょ?」

 香取くんは大げさに嬉しそうだ。

 「千里眼が欲しい。とは思いましたけど、本当に得たのか、もし得られたとして何ができるのか全くわかりませんでした。でも街明かりの方を見た時に、『ここは明治であそこは花街だ』って声が聞こえたんです。そして昨日、『明日、吉原神社に松戸 綾(まつとあや)がくるって聞こえました。え?綾さんがこの世界にいる?って思った時にまた声がして『ここはあの爆発をおこした者が仕組んだ世界で、元凶(ラスボス)は江戸城にいる』と……この声は質問すると何でも答えてくれるわけじゃないんですが、『そっちの方角は危ない』みたいに質問しなくても聞こえることもあるようです。あと少しだけ先の未来を夢でみます」


 「なんか千里眼っぽくないね。それはそうと、今日は時間がないんだ。色々情報交換もしたいんだけど、実はね私達……いや、私か……私、内務卿の御庭番に命を狙われているの。それで行動にも制限がかかっていて……その御庭番をどうにかできる能力があるのが編集長で、「どうにかしてください』って言ったら、『どうにかしてやるから女連れて来い』ってなって、イマココ……」

「なるほど!わかりました。鳳さんは接待は必ず高級クラブだって聞いてます。鳳さん吉原(ここ)に連れてこれますか?それとも遊女連れだしますか?」

 「連れ出せるの?」

 「信用がないと無理です。俺が交渉しますよ。金もらえれば。少し待っていてください」

前世、健吾だった少女が走って花街へと消えていった。


 

「香取くんどう思う?私たちの件に深くかかわっているし、食べるのに困って身売りしているのなら助けてあげたいんだけど、私も実は収入ないし、雪哉と香取くんがいなければ私もごはん食べられなくて身売りしていたかもしれないと思うとなんとか助けてあげたいんだけど、香取くんと雪哉と椙山さんと相談する必要があるよね?」


 「禿ってまだ客取ってないんですよね?明治5年の太政官布告で芸娼妓解放令という法律ができたので足抜けできないことはないんじゃないですか?でも金か権力か若しくは両方が必要だったりしません?先輩はすぐにでも連れ出したいと思っているんでしょうが、一旦持ち帰りましょう。言いたくないですが罠ってこともありますから」


 そうだよね、知り合いだったら大丈夫って事はないからね……

 椙山班長にも相談したいし。

 そういえば班長も疑われてたね。


 15分とたたずに健吾が戻ってきた。

 「お金を積めば大丈夫そうですが1週間以上前に言ってほしいそうです。どうしましょう?連絡とれますか?」


 健吾と明日また同じ時間にここでと言って解散した。

 1時間もたたずに車夫のところに戻ると

 「ええっ?まだ3刻もたってないですよねぇ?お兄さん方いくらなんでも早すぎやしませんか?」

 私は曖昧に笑って人力車に乗り込んだけど、香取くんは不服そうだ。

 「早くてもいいから遊郭に行きたかったわボケェ」とぶつぶつ言っている、不憫な子だ。

 「健吾くん水揚げしてあげれば?」

 と冗談言うと

 「かわいい子でしたね……」

 という返事だった。

 ……もうからかわないでおこう……


 紀尾井町に戻ってきて、車夫に「明日もお願いします」というと。

「おおっ!若いねぇ」言われた。

 私は紙とペンを生成して健吾君の詳細を書いて

 「この手紙を陰間の紹介所に届けてほしい」と頼んだ。

 車夫は「なんと!男もいくんですか!」と言って去っていった。

 もう何とでも妄想してくれ!お幸せにっ!


 


 夜遅くなったので昨日作ったお粥に大根おろしと餅を入れたものを三人で食べてると八坂さんがやってきた。

 私のお手紙が消失する前に読んでもらえたらしく椙山からの回答の伝言を話してくれる。

 八坂さんが椙山の真似をして喋る。


「まず、綾は吉原健吾を助けたいというが、彼がそれを望んでいるのか?」

ええっ、それはどういう意味? 

 「食べるために仕方なくとか、知らない客に取られる嫌悪みたいなことも話してたんだから吉原から足抜けしたいと思ってるよね?香取くんどう思う?」

 「そういえば、仕事として知らない客と同衾する前に好きだった綾に抱いてもらいたいとか言ってたぞ!あいつ」

 香取くんが思い出し怒りしている。かわいいとか言ってたくせに。


 「食べるための身売りはかわいそうです。何か他の仕事見つけてあげたいけど……」


 「そうかわかった」八坂さんが椙山になり切って答える。

 何がわかったなんだろう。答えをいくつか用意しているのかな……

 「一応、椙山さんも会って話す機会を求めているから、遊女を紹介してもらうタイミングで連れて来いとおっしゃっていた」

八坂さんは再び椙山の真似をして話す。

 「だが、俺はあいつが気に入らない。俺の目の前で綾を口説いてたからな!姫野の手下の可能性もあるし」 

 

 「なんだとぉ~」

 雪哉と香取くんがゼロからフルスロットルで怒りだした。

 「うちには1部屋空いているけど、女の子はちょっとって悩んでたけど、無理無理!そんな奴無理っ!」

 雪哉が叫ぶと香取くんも同意した。

 「かわいい子だからかわいそうと思ったけどそんな危険な奴は無理寄りの無理だな!」

 「つまり無理っ!」

 最後は二人で叫んだ。


 いやいや、口説いたっていうより何か企んでたんだよね。

 それより姫野先生の手下?ってそれはないでしょう!

 あんなに嫌がっていたのに班長忘れちゃったの?

 

 


今週は仕事が忙しかったので短めでごめんなさい。

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