姫野先生
昨年 栄光出版社の漫画大賞でラブコメ描いて漫画大賞を受賞した作家 姫野りか。
受賞作品がそのまま連載されメディアミックスされた奇跡の漫画家だそうだ。彼女の仕事場は渋谷駅から歩いて30〜40分位かと思われる少し古いマンションの2階にあった。思ったよりフツーで良かった。
友人のような色白ぽっちゃりかわいい系フリフリを予想していたのに、姫野先生は意外にも年齢不詳の綺麗なお姉さん系だった。
「姫野先生お久しぶりです。今回の作品は私椙山が担当させて頂く事になりました。 宜しくお願いします。こちらは新人編集の松戸です」
「松戸綾と申します、 姫野先生宜しくお願い致します」
にっこり優しいげに微笑む姫野先生に眼を奪われる。瞬間 成功者のオーラのようなものを感じ無意識のうちに班長の半歩後ろに隠れてしまった。
やばっ!班長は2秒位目を見張った後に、仕方のないヤツという感じの笑顔を向けてくれたし、先生の微笑みはまるで変わる事なく優しげなままだった。さすが奇跡の漫画家!懐の深さが違うね。
名刺,手土産をわたし部屋に案内された。なんか,想像と違い過ぎた!先生の仕事部屋はゴシック?というか、魔女の部屋のようで猫足のクローゼットの上には見たことない程大きな水晶玉が飾ってあった。ふと振り返った姫野先生は美しい笑みを少し困った風に傾げて椙山班長を見つめたまま
「ごめんなさい椙山さん。昨日読切のデットだったんでコーヒー豆を買いに行く時間がなかったのを今思い出してしまいました」
と空の瓶を振ってみせた。
「あ、では私が買って参ります」
駅までは遠そうだけど、寧ろこの緊張の場を離れたい。
「松戸さんでは地の利がなさそうだし椙山さんにお願いできないかしら?松戸さんは,先にネーム読んでてもらえる?」
班長がまた数秒目を見張った後微笑んで
「わかりました買って来ますね、 少し多めに」と言って出て行った。
班長は驚くと一瞬少しだけ目が大きくなるらしい。新発見!ちょっとかわいい!と思いながら姫野先生を見るとさっきとは別人のような、目力だけで人を殺せそうな無表情で私を見ていた。
「あっ、あの…… 先生?」
「あなたは椙山さんのなんなの?なぜここに一緒に来たの?」
は?え?二重人格?
いやいやいやいやいや 待って待って!
「あっ……大変失礼致しました。私は編集長より将来的に姫野先生の編集を引き継げるよう、班長から指導を受けるようにと……」
ん?ちょっと違う?まぁいいか、編集長令なのは確かだし。姫野先生が、今度は無表情というより凄く怖くて強い笑顔を私に向けた。
「私は予知夢体質なのよ。あなたが編集になる未来はないわ!怖い目にあいたくなければさっさと帰りなさい!そして椙山さんの気を引こうなんて決して考えないことね!」
玄関ドアに向かって幅寄せされる。
怖い!怖い!怖いっ!
10/29 誤字脱字、わかりにくい言い回しを改変しました。