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椙山の真実?

 爽やかな朝だ!

 とーってもいい夢を見た!椙山(すぎやま)とラブラブになってチューする夢!前世で死ぬ前にして貰えそうだったのにな〜あれは残念だった。

  雪哉は今日は出庁するらしく、早起きして香取くんと『真ん中の部屋』で何やら話している。私は聞いたらダメなのかな?さりげなくお茶を淹れて持って行ってみよう。


 お茶を淹れて『真ん中の部屋』に入ると2人が驚いた顔でこちらを向いた。

 

「何?私が聞かない方がいい話してるならすぐに出ていくから大丈夫だよ」

 見るからに私がいない方が良さげな雰囲気だけど一応確認してみた。私って少し意地悪なのかな? でも……うじうじと根に持つ位ならはっきり聞いておいた方が今後のためかなと思ったから。


「先輩起きてたんですね?先輩に聞かれて困ることじゃありません。ただ、まだきかなくてもいい話しもあるのでは……とは思ってます。本当の本音を言うなら、先輩はまだ明治(こっち)のやりように慣れていないから最初から巻き込んで心労を負わせるくらいなら、結果だけ伝えた方がいいかもという判断です。最初から聞いてもらって早く明治(こっち)に慣れてもらうという方法もあるんですが、雪哉(ゆっきー)が心配症なんで」

 明らかに顔を伏せていた雪哉が意を決したように顔を上げた。


「わかった。姉さ……綾も聞いて!」

「家の中では姉さんでも綾でもどっちでもいいよ?」

「いや、良くない。外でついうっかり何回か言っちゃったんだよ。姉さんって」

「長年の習慣って簡単には直らないよな。頑張れ雪哉(ゆっきー)。綾先輩、実は昨日、僕達が湯島の男坂の坂下から乗った人力車の車夫が八坂さんだったんですよ。ほら、先輩が拐かされた時車引いてた車夫です。雪哉(ゆっきー)が雪谷神社に連れて行ってもらって、俺たちの監禁場所を教えてくれた……」

「綾が妖刀から湯気の様なものが見えるなら、それは能力じゃないか、本当に幕末の生まれかって言ってた……」

「言ったね。で?」

「八坂さんは昭和の生まれで、第二次世界大戦の戦時中に米兵に殺されたんだって。亡くなったとき足をやられていたんで今生では丈夫な足と危険察知の能力を御神木に願ったって。成程だからなのか!って脚力を持っていて庭番も撒ける程速いらしい」

「……それが、私がまだ聞かない方が良かった事?」

「待って、先輩!続きがあります。八坂さんは戦争で亡くなったんで争い事には加担したくない主義なのに、図らずも内務卿の庭番の仕事を受けてしまったから、お詫びというか、バランスというか、俺たちの頼みを一つ聞いてくれる事になって……今、雪哉(ゆっきー)と話し合った結果、椙山さんに会いに行って貰おうかということになったんです」

「椙山班長に……それ私の関係者だよね?なんで私に内緒?」

「先輩!怒らないで冷静に聞いて!どう聞いても椙山さんは転生(この)事態に深く関わっているし、何か色んな事を知っていそうなんです。先輩の好きな人なら悪い人じゃないとは思います。でもね、ここは令和のような平和な世界じゃない。椙山さんが敵じゃないと断言できないんですよ?」


 私は二の句が継げなかった。

 確かに凄く殺伐としている。私が明治(こっち)にきて2日とたたず屋根裏に賊が侵入したり1週間とたたずに誘拐されたりするような環境だ。何もかもを疑う事をしなければ無事に生きていく事もできないだろう。


「……苦労したんだね。2人ともこんな世界に転生してよくここまての基盤を……本当に凄いよ」

「先輩、僕と雪哉(ゆっきー)は高2の時FPSの世界大会で優勝……とまではいかなかったけどわりと上位に食い込んだんですよ。だから語学が堪能と言われる程勉強したんです。スラングもバンバン解しますよ。そのゲームで慣れているんで『生き残り』に関しては一家言持ちなんです」

 「FPS?ネトゲのサバゲーみたいなやつ?」

「まぁそんな感じです。だから凡ゆる敵攻を想定して罠をはったり、攻め入ったり攻防したりはお手のものなんです。先輩そんな泣きそうな顔しないで下さい。大変だったけど結構楽しかったのも事実なんです。僕達2人一緒だったら最強なんですよ!」


 相変わらず香取くんの語り口は軽くて安心させてくれる。ゲームではなく本当に命が脅かされて苦労しなかったはずはないのに。でも雪哉と香取くんが基盤を作ってくれていなかったら私はすぐに死んでいたはず。椙山が絶対な味方かと問われれば肯定する自信もない。昨夜みた楽しかった夢もしゅるしゅると萎んでいった。


 説明を香取くんに丸投げして思案顔のまま雪哉は出庁して行った。

 

「先輩、僕達3人は見張られているので椙山さんに会いに行けません。下手に会いに行くと椙山さんが敵に知られるからです」

「うん。それはわかってる。香取くんも椙山さんと会ったんでしょ?」

「それなんですが、自分は花街のフェロモンでやられちゃってヘロヘロだったんです。意識が半分以上飛んじゃって……自分フェロモンに弱いみたいです。ご存知かとおもいますけど」

 はははっと香取くんが照れ笑いする。かわいい!

「じゃ、香取くんもフェロモンに慣らさないといけないね。ハグする?」

「いえ!先輩。ハグは嬉しすぎますけど自分何するかわからないんで!」

「ペロペロなら構わないよ?私、仔犬好きだし」

「仔犬っ?!」

 あっ、ヤバい。余計な事言った。あれがファーストキスならかなり傷つけてしまったかも!

 香取くんは下を向いて懐から手拭いをとりだした。えっ、泣かせた?と焦っていたら、徐に手拭いをマスクの様に口に巻き……

「ハグお願いします!自分も慣れておかないと、いざというとき困るんで!」

 と両腕を差し出してきた。ホントヤバい!超かわいいっ!私は香取くんを思いっきり抱きしめて、小さい頃の雪哉にしていたように軽く揺すった。

 はぁぁ癒されるぅ。

 香取くんが真っ赤になった。男として、初めて彼女にキスする時ってこんな感じなのかな……真っ赤になった香取くんの顔を見ていたらついうっかり手拭いの上からチュッとリップ音をならして鼻か口の辺りにキスしてしまい、香取くんを失神させてしまった。マジごめんよぉ!



 次の日も雪哉は出庁して、そして八坂さんと共に帰ってきた。

 やる事早すぎ!

 椙山の話しを聞けるんだと思うと色んな意味でドキドキする。『真ん中の部屋』に集まってお茶をだすと、私達3人は一斉に八坂さんな方に身をのりだした。


「昨日、松戸くんに頼まれてすぐに蔭間の紹介所に行ってきたよ。いやぁ〜あの椙山さんって人は凄いねぇ。椙山さんの話しは驚くような事ばかりで!とにかく伝言役として間違えて伝えない様に頑張らねーとな」

 八坂さんはお茶を一口飲むと話を続けた。

 

「まず椙山さんに、俺の事を100%は信用できないから話せない事も多いと言われた。当たり前の判断だな。だから松戸くんに言われた通り『松戸くんのお兄ちゃん、前世はお姉ちゃん?……を腕に抱いて一緒に死んだそうだな』って言ったんだ。『これは味方じゃないと知らない情報だろう?』って。そしたら椙山さんがこう言った。『全ての元凶は前世で綾も知ってる人物だ』と。だから『敵でもその情報は知り得る』と。そいつが、大昔の……シャーン……ちがうシャマーン……えっと、なんだっけ?」

「シャーマン?」

「そう、それ!さすが松戸くんは勘がいいな。元凶の奴は古来有名なシャーマンの子孫で何とかって力で内務卿やらを操っているらしい。それ以上は言えないと。でも、たぶん俺は味方な気がするからと、ある程度は教えて貰えたよ。椙山さんは能力の『時渡り』で松戸くんの兄ちゃんを連れてきたらしい。以前の戦いで負けそうになって、体制整えて再戦の為に松戸くんの兄ちゃんの助けが欲しかったそうだ。君たち3人剣道が凄いらしいな。」

「凄くなんてないですよ。え?3人って?椙山さん私の弟たちの事も把握してるんですか?」

 椙山が雪哉と香取くんに会ったのは数日前なはず。なんで前世の情報まで持っているの?

「椙山さんが力を貸して欲しいと思っているのは兄ちゃんだけじゃなく、君たち3人にって事みたいだ。大変な戦いになるらしい。じゃないとパラ……パラプロワード?が元に戻らないそうだ」

「パラレルワールド?」

「おぅ、それだ!さすが松戸くんだな。ちゃんと説明できなくて悪ぃな。俺も理解できてねーから。あぁもうひとつ。御神木から能力を得た話は誰にでもするなと。その元凶の奴が、自分が神から能力を得るために開いたルート?とやらが閉じ切れなかったのを気づいていないから……だそうだ。まだ能力を得てないなら出来るだけ早く得てこいと。気づかれたら閉じられてしまうかもしれないんだと。あ、おすすめは、『増幅』か『コピー?』とか言っていたな。どこの神社だ?連れて行こうか?俺は今年いっぱいで一回廃業するんでカネは貯めておきたいんだ。特急料金もらうけどな」

 私達は無言で見つめ合った。たしかに能力貰えなくなるのは困る。

「私達が動けば見張りと追跡がつきますよ?敵に知れたら八坂さん危ないです」

 私が問うと八坂さんはニカッと笑った。

「あそこの赤線には椙山さんの仲間が何人かいるらしい。危ない事になったら脚力で敵を撒いて逃げ込んで来いって言ってもらった。危険察知は欲しい能力だとも……。仕事辞めて身を潜めるなら置き屋の布団運びとかどうだとも言ってくれた。それに男色は徴兵されにくいって噂があるんだと。本当か嘘か知らねーけど。……しかし椙山さんてすげぇ!色男、金と力は無かりけりって言うけどぜんぶ持ってるヤツもいるんだな」

 どうやら八坂さんは椙山の事が気に入ったらしい。

「また行ける機会があったら行ってくるよ。あ、俺元海軍なんで日本語のトンツー(モールス)ならわかるから!」

 と言って満足げに帰って行った。



「どう思う?」

 香取くんが沈黙を破って訊ねてきた。私に元凶(ラスボス)は誰なんだと聞いているのだろう。

「シャーマンっていうのが鍵だよね?歴史的に有名なシャーマンって?」

「聖徳太子とか?日本に呪術を輸入した人だし、玉虫厨子だか仏像だかにX線あてたら呪術用の小刀が入っていたという噂もあるし」

 雪哉もシャーマンが誰かを考えていたらしく、聖徳太子ではと言ってきた。昨今、聖徳太子はいなかったという説が有力だけど、厩戸王子が法隆寺を建立したなら今更いなかった事にする意味がわからない。というか、それを語れるほど詳しくもないけど。

 「雪哉(ゆっきー)は聖徳太子だと思ったのか。俺は卑弥呼を思い出した」

 

 う〜ん……

「あ、もし聖徳太子が正解なら編集長が奈良出身だった!」

 私がクイズの答えを見つけたように自慢げに言ったけど、雪哉に

 「待って!待って!それより第一優先があるよ!」

 と言われてしまった。

 

「そうだよね私が御神木に行くのが最優先だね!見張りを撒くためには夜陰に紛れて夜中にでる?それとも八坂さんに頼んだ方がいいかな?」

「どうせ全行程を歩くのは無理だ。敵襲もあるかもしれない。八坂さんに頼もう。明日夜中にこっそり家をでて日比谷まで歩く。日比谷で八坂さんと合流して松戸まで一気に行って貰おう。明日朝イチで登庁して頼んでくるよ。で、帰ってきて昼寝して備えよう!」

 

「みんなで松戸神社に行こう!」

 

 

 

 

今週はいつもの金曜~土曜頃の更新ができなそうなので先に出しました。

ヨヤクトウコウ…ナニソレ…


もしも原稿(おしごと)が早く上がりそうだったら金~土にもあがるかもしれません。

ソンナキセキ…オコルトイイナ…

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