はじめちゃんとでぇと?
特殊能力で根っからの男子達がテンションMAXになっているけど、女子の記憶がある性別不明の私はみんなより少しだけ冷めていた。なのに推しに手を握られて私のテンションは一気に天井をぶち破った。
私って自分じゃ気が付かなかったけど恋愛脳なの?
あっという間に制御不能になった私のフェロモンは、もの凄く濃いであろう状態で放たれたらしい。気づけば斎藤一に抱きつかれ、雪哉にはそこに割って入られ、香取くんは柱にもたれかかって悶絶している。もし使いこなせたら凄いのかもしれないけど、前世で女性だった時には女子力ゼロで、今生で性別迷子の私にどうこうできる代物ではない。
せっかく雪哉がくれたものだけれど、無用の長物すぎる……
「斎藤さま、すみません離れて下さい。離れて頂けないとこの能力がおさまりません……」
「すっ、すまない」
斎藤は離れてくれたけど、雪哉は離れない。
香取くんも顔を赤らめてはぁはぁしている。
おぉ、紅顔の美少年……
あ、いけない いけない そんな事考えてしまったら第二波がきてしまう。自重!
「これが、聴いていた雪哉殿の能力ですか!まるで麻薬のようだな。例えばですが、100人の敵に囲まれた時に私が抱きついたなら、100人の敵意を挫けるのではないだろうか? 当然 私が意識を保てれば……だが」
「斎藤殿?」
雪哉が眼を瞬かせながら考えこむ。
「大勢の敵に囲まれる……考えた事がなかった。今までは1人か2人の密偵を罠に嵌めてやっつければよかったけど、敵に大勢で囲まれたら、香取の能力ならワンチャン? いや、雷は局所の方が威力が高いし、竜巻きで飛ばすだけならば能力がバレてしまうこともあるし」
「雪哉殿、ワンチャンとは何か解らないが、敵が大きな組織に囲われている者、若しくは大きな組織を動かせる者らしい。 多勢で来られる事も考えておいた方がいい」
「あの、すみません。そういう話しは『真ん中の部屋』に移動してからの方がいいかと……」
香取くんの進言で『真ん中の部屋』にもどる。
「私は内務省が相手ならば表立って味方ができない。でもいざという時は助けると約束しよう」
「斎藤殿、ありがとうございます。毎日でなくても、剣術の稽古もみていただけると嬉しいです」
雪哉、稽古つけてもらえるなんて羨ましい……
「雪哉殿の剣術は筋がいい。綾乃介殿にもしごかれたと聞いたが、綾乃介殿も剣術を?」
「私達3人とも一緒に剣道をやっていたんですよ。でも所詮は竹刀です。真剣なんて持っただけで震えてしまいます」雪哉が恥ずかしそうに言う。
「雪哉殿、真剣とはそうしたものです。私も真剣で切り結ぶ時は流儀や型なんて考えずただ無心で刀を振るっているだけですよ。あぁ、3人とも剣道の経験があるのなら毎日素振りはやった方がいい。剣を持つ腕に動きを擦り込ませられるし力もつく。刀で押し合いになった時は力が強い方が有利だからな。……それと雪哉殿、綾乃介殿を次の休日におかりできないだろうか?二人で遊山に出かけたいのだが」
雪哉の顔が晴れから曇りに変わる。
「斎藤殿、それはどういう事でしょうか?」
「一日だけでいい、一緒にいたい。綾乃介殿の纏う色香になれておきたいんだ」
雪哉が返事をする前に香取くんが吹き出した。
「ぷはっ……あ、悪い。斎藤一殿が内緒で味方になってくれるために先輩のフェロモンを攻略しないといけないなら必要な事だよ、なぁ雪哉」
雪哉はすねた顔で答えない。
でもなぁ、推しとは離れた所から見て尊いものであって、一緒にお出かけしてしまったらダメな気がする。
「どこに連れて行って下さるのですか?」
一応行き先を問うてみる。
「上野の山に行きたいのだが。去年公園ができたんです。寛永寺の前に」
「行きたいです!」
推しが云々言ってごめんなさい。
行きたい!めっちゃ行きたい!
だって上野にいくなら通るよね?池之端!
危ないから行っちゃダメだと言われていたけど、知りうる最強の彼が一緒なら少しぐらい覗いてもいいんじゃない?
「よしっ!行きましょう!陰間茶屋!」
「いや、綾乃介殿……上野の山の公園に……」
「全然聞いてないね、姉さん……」
「先輩……そんなに会いたいんですか……彼に……」
上野まで行きたかったんですが、本業が忙しいので短くてすみません。




