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私を桜田門に連れてって

挿絵(By みてみん)



雪哉が数十分毎に抱きついてくる。


「雪哉?」

「だって姉さんにまたこうして甘えられるなんて思わなかったから嬉しくて!」

 まるで大きなイッヌだね?抱きついてクンカクンカしてくるから私も背中をポンポンしてあげたり、おでこや鼻にキスを落とす。雪哉はこんなに甘えっ子だったっけ?

 小さい頃はいつも2人でいた。寂しくなるとくっついてきたり、夜中に泣きながら私の布団に入ってきたり、とても可愛いかった。中学に入った頃に少しだけ距離をおかれて寂しいおもいをしたので、久しぶりの弟からのハグはめちゃくちゃ嬉しい。


 姿形が変わっても私の弟めちゃくちゃ可愛い!

 唯一無二だよね。この子に逢えただけでも死んで良かったと思えるよ〜。


 手を繋いで丘を降りて川沿いを歩くと渡し船があった。

「これが矢切の渡しだよ、姉さん!」

 おぉ!これが!野菊の墓にでてくるやーつ!

「姉さんって?おにぃちゃん達男の子だよね?」

 渡しの船頭さんが私たちをじっと見てきた。

「あ、わたしは姉吉と言う名前なのです」

 咄嗟にアホみたいな嘘を吐いたけど…

「へーそうなんだ」と言われジロジロ見られるだけで済んだ。

 アブナイアブナイ。


 江戸川を渡ったら急に後ろ髪を引かれる感じがしたので

「なんか忘れてる事がある気がするんだけど」と呟いた。

 一人暮らしが長くなって独り言が増えたみたいだ。

 

「あ、松戸神社かな?」

「松戸神社?昨日言ってたね。参拝するべきだったかな?」

「あぁ……、うん。いずれ来なければいけないけど、今じゃないと思うよ。とりあえず街道にでて乗り合い馬車に乗らないと今日も うちに帰れなくなるよ」

「桜田門は?」

「あ、そうだね。姉さんを連れて行くのはいいけど、大丈夫かな…… 」

「あっ、そうだ、姉さんと呼ぶのはやめて?」

「うん、そうだなぁ、僕もこの時代ではユキナリってよばれてる。姉さんはアネキチ?」

 雪哉がニヤニヤしながら肩に頭を乗せて私の顔を覗いてくる。

 

 ああもう!かわいすぎる!抱きしめて投げ飛ばしたい!

 

綾之介あやのすけでも綾三郎あやさぶろうでもいいから、綾って呼んで」

「どうして?」



 私は歩きながら、私が死んだ日に何があったのか雪哉にすべて話した。最後の椙山班長との事も、家族に話すのは恥ずかしかったけど全部話した。


「だから,彼と会えた時に私だってわかるように綾って呼んで欲しいんだよね」

 話し終わるや否やまた雪哉がガバっとハグしてきた。

「姉さ……,綾はそいつと再会したら僕と一緒に暮らすのやめてそいつのとこいくの?」

「雪哉?」

「僕がいない三年の間にそんなヤツと!」

「えっ?椙山さんとはお付き合いしてないよ。むしろ私が大学の時に彼氏ができた時、雪哉喜んでくれたよね?」

 

 雪哉どうした?なぜ泣きながら怒るの?

「(そのフェロモンマシマシで蔭間の宿なんて冗談じゃない!飢えた狼の群れに羊を放つようなもんじゃないか!)」

「え?なんて?聞こえないギリギリの声で言うのやめて」

「(あぁ、このフェロモンは僕のせいだから、文句言うのはおかど違いなんだけど)はあぁぁ〜」

「聞こえるように言ってってば!そもそも椙山さんが転生したかわからないし、したとしてどこにいるかも……」

「姉……綾と一緒に死んだんなら転生したよ。たぶん。そいつは今、町田にいるんじゃないかな」

「町田?なんでわかるの?」

「町田に……椙山神社っていう神社があるから……まぁ、関東だしそのうち会えるよ。それより死に別れた最愛の弟をかわいがってよ!」

「最愛の弟w 自分で言っちゃうとこがかわいい!」


 水戸街道にでて乗り合い馬車に乗った。日本橋までは3里(12キロくらい)ほどらしい。矢切の船頭もそうだけど、さっきから会う人会う人みんな私の顔をジロジロ見てくる。何だろう?何か変なのか、無遠慮に他人を見る事はこの時代の人達の普通なのか、全くわからない。言葉使いが変とか言われないよう人前では喋らないようにしてるにも拘らずだ。東京にいてカルチャーショックを受けるとは!


 日本橋で馬車を乗り換えて雪哉が友人と住んでいるらしい紀尾井町に向かう。桜田門の横を通る。

(あぁぁ~ あそこにいらっしゃるのよ♡ 斎藤一氏がっ!)

 去年 廃刀令が施行されたので、警視庁の側をウロチョロするためには刀は家に置きに帰ったほうがいいと雪哉が言う。

 

 とっとと刀置いて戻ってきて斎藤一の出待ちをするのだ~!


 

前話に引き続き いとこが挿絵を描いてくれました。

10/29 誤字脱字、わかりにくい言い回しを改変しました。

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