「木村政彦は、なぜ力道山を殺さなかったのか」増田俊也氏著 の感想
柔道史上最強ではなかったかと思われる木村政彦。
が、彼の人生の中で最も有名な出来事は、力道山との対戦。
勝敗を決しないプロレスのつもりでリングに上がった木村に対して力道山は、試合途中、突然激昂して、木村を滅多打ちにする。
増田俊也氏著「木村政彦は、なぜ力道山を殺さなかったのか」を読んだ際の感想で、5年前にフェイスブックに書いた文章です。
2017-134 木村政彦は、柔道史上最強の男であったのだろう。力道山という人物と交差してしまったばかりに、彼の人生の中では、本来、挿話に過ぎないことが、最も有名な出来事になってしまった。
戦前、確固たる基盤を持っていた武徳会と、寝技重視の高専柔道が消滅し、戦後、講道館のひとり勝ちとなり、元々は、ひとつの流派、家元であった講道館が全柔連とイコールである、という柔道界は、かなり特異な形である、ということが分かった。
木村政彦とエリオ・グレイシーとのマラカナンスタジアムでの対決、木村の勝利。グレイシー一族が木村に寄せる尊敬の念。
立ち技重視で、打撃のない、講道館柔道。
嘉納治五郎が、打撃技、間接技、寝技を統合し、今のヴァーリトゥードゥにも通じる、実戦であっても、最も強い柔道を志向していた、というのは興味深かった。
講道館中心史観とは別の柔術の歴史も知ることができた。著者の増田俊也氏は、北大柔道部で、高専柔道の流れを汲む寝技中心の七帝柔道の経験者。
ほぼ700頁の大作だか、読みごたえたっぷりでした。格闘技とその歴史に興味を持たれている方には、お薦めです。