フラストレーション
宗一郎が不在と言う中、母屋は今や戦場と化していた。
蒼の部屋を中心に、ありとあらゆるものが破壊されつくされている。
数名を以外は後方支援を行い、場を鎮めるべくナツを筆頭に「交渉」していた。
その中心には蒼がいた。今や声も届かないほど「荒れて」いる。このような事は久しくなかったのだ。
「蒼様、そろそろお静まりください」
蒼を取り押さえようとナツが動く。しかし、その行動に対して、蒼は攻撃を止めなかった。
ここまで荒れると、自我を取り戻すのには苦労することを知っていた。きっかけが必要なのである。ナツを含め猛者共五名でかかっても苦戦する事態に発展していた。
各々素手で立ち向かうが、なかなか直接的なヒットには到達しない。憂さを晴らすように周りを破壊しながら蒼は猛者共の攻撃を『かわして』いた。
ここまでくると、自我よりも破壊の快楽の方が勝ってくる。
蒼は自分の不甲斐なさ、彬人にしてやられた悔しさで自暴自棄になっていた。フラストレーションが爆発したのである。
大概は自分の敗北時からくる「焦燥感」であった。
沙良を失うかもしれない焦り……それがここまでだとは自分でも思っていなかった。
無性に「自分」に対して腹が立ったのだ。
八つ当たりがエスカレートしていくと、ドーパミンに支配されていく。行為が快楽へ結び付けられていくのだった。
成長と共に押さえていた衝動だが――。
今回限りは悪循環がこの状態を「引き起こして」しまったのだ。
ここまでくると、蒼の骨の一本二本は奪ってでも止めなければならない。下手したらバーサーカーと化した蒼は人さえも殺しかねないからである。




