生き別れ
ふっと写真立てが目に入る。
「え?」
沙良は目が釘付けになっていた。
自分の記憶の中のよりは若々しいが……そこには「母親」が写っている。
「先生……その写真……」
沙良は震える声で尋ねた。
「あ、これね。私の母なんですよ。去年の夏前ぐらいでしょうか、亡くなったみたいです。私は生き別れみたいな境遇だったので」
「……生き別れ?」
沙良は震えていた。
「私は養子に出されたんですよ。ってこんな面白くない話をしてごめんね」
沙良は黙ってしまった。そんな話一回も聞いたことない。しかし、写真は確かに「工藤百合絵」だった。別な写真だが、若かりし頃の母は知っている。それそのままだった。
「あの……一つ聞いてもいいですか?」
「どうしました?」
「先生って養子になる前ってなんていう苗字だったのですか?」
「ああ、昔は『工藤』って言いましたよ」
その言葉で沙良の時が止まった。
「あ、工藤さん同じ苗字ですね」
彬人は嬉しそうに同じ苗字を指した。
「あの……お母さんってお名前聞いてもいいですか?」
「え? 別に構いませんよ。『百合絵』ですが……」
工藤百合絵
全てが繋がった。
沙良の知らない事実だが、全てが繋がっていた。
沙良はどうしていいのか分らず涙がこぼれる。
それを見て彬人はおろおろしてしまった。
「どうしました? 何かありましたか?」
ティッシュボックスを差し出され、涙を拭う。
「ごめんなさい、ちょっと混乱して。その……私の母も『工藤百合絵』って言うんです。写真が母そっくりというか……母そのものなので混乱して。私そんな話一切聞いていないのでどう捉えていいのか」
「工藤さんって……」
「私の母も去年亡くなりました。同じ頃です」
その言葉で彬人は止まってしまった。
「そんなことってあるのでしょうか……」
考え難いと言いたそうな表情だったが「偶然というより必然だったのかもしれないです」そう言いながら優しく抱きしめる。
沙良は困惑していた。今まで聞いたことがない。しかし……あの写真は母だった。




