もどかしさ
「二人でこうやってのんびりアウトドアもいいかも」と蒼は食後にお湯を沸かして入れたドリップコーヒーを飲みながら、沙良を見守っていた。
沙良は食事が終わると、近くの草むらへダイブするように入って行く。気分はまるで犬の散歩である。
沙良の姿を見ながら、蒼はふっと月島彬人の言葉を考えていた。本当は探りを入れたいのだが、それは叶わない。祖父の命令は絶対であるため、動くことはできなかった。
(そういえば、最近大学で『気配』を感じるのは……)
と思い出した。明確なものではない。それは本当に微かな「気配」だって。自分に対してなのか、沙良に対してなのか……それが特定できないことがもどかしい。
一度探ってみようかと思ったのだが、相手の距離が一定範囲内には入ってこない様子であった。
「何なんだ? ほんとアレは……」
上手くいかないことに苛立ちを隠せずにいた。動こうとすると、時間があれば女の子たちが話しかけてくる。蒼は身動きが取れない状態でもあった。
「沙良と同じ学部にすればよかったかも……」
一応、組のことも考えて法学部を選択した自分を呪うときもあった。しかし、私情でそこまですることはできない。大学へ行くと言い出したのも自分のワガママなのは十分に承知していた。
「蒼くん―! 見て見て!」
草まみれになりながら沙良が草むらから出てきた。
「ほらー椎茸みつけたの! 凄いでしょ! たまに自然の椎茸とか聞いたことあったんだけど本当にあったのよ!」
もう宝石を見つけたかのようにはしゃぎ喜んでいる。そんな沙良を見るたびに蒼は、小さいことで考え過ぎだな、と反省していた。
近寄ってみて椎茸というキノコを手に取ってみる。
「本当に食べれるのか? 俺まだ死にたくないぞ」
と言ってみたが、蒼はなんだかおかしくてなってきてしまい吹き出してしまう。
沙良は「もうっ!」と言うと拗ねてしまった。
「ごめんごめん」となだめて機嫌を取る。
蒼はそんな些細なことがとても嬉しかった。
たまに「椎茸」は自生していることがあるらしいです。私は見つけたことがありません(笑)




