⑪絶体絶命
ワゴン車から結城だけ引きずり出される。出された倉庫で結城は全神経を集中して周りを伺っていた。
(人数は……他にもいるのか)
しかし、見えているのは彬人とその傍に控えているスーツ姿の男二人のみである。
(残りは各所でスナイパーというやつか)
笑えない冗談だと思った。この状況は絶望的と言っても過言ではない。
「報復かよ」
静かに彬人に聞いた。
「まぁ、いろいろと筋は通しておかないとな」
「……沙良ちゃんは関係ない」
咄嗟に結城が言葉を遮る。そして、その言葉に彬人が反応した。
「お前が沙良を気安く呼ぶな」
その瞬間蹴りが結城の胸部にぶち当たった。
呼吸が止まり掛かり倒れこむ。倒れこんだ結城の髪を彬人は掴み上げた。
その目は笑っていない。この異常な反応に、結城は呼吸苦の中で違和感を感じていた。
「何が……目的だ……?」
「目的?」
彬人はほくそ笑む。
「そんなの……沙良の幸せさ」
そう真顔で言った。そう言うと、彬人が「やれ」と合図する。
プシュと鈍い音と共に結城の片足に穴が開き血が流れた。
「ツッ!」と呻き痛みをこらえる。
「クソ……が!」
結城は呻いた。次の合図が来れば死ぬ。流石にこれは絶体絶命だと覚悟を決めた時……。
ガッシャァァァァァァァァァァァァァァァン!
凄まじい衝撃が走る。その時、倉庫の側面から大型トラックが突っ込んできた。
それを皮切りに、銃撃戦が始まる。
結城は痛みで意識が朦朧とする中、こちらに向かって走ってくる人影を凝視していた。
「蒼……兄……?」
「結城! お前生きてるか!」
慌てて両足の出血に対してネクタイで止血処理する。彬人の前には一人立ちはだかっていた。
「桐生のキリングマシーンを連れてきましたか」
やれやれ、と彬人は呟いた。と同時に中段蹴りがナツの腹部を狙う。それを寸でのところで受け流すと、今度はナツが回し蹴りで彬人を吹っ飛ばした。咄嗟に彬人は受けたが、受けきれない反動で後ろに吹っ飛ぶ。
その瞬間、ナツの背後からナイフが彬人を狙った。咄嗟に隠し持っていたグルカナイフで叩き落す。その間に蒼はナツと交代していた。
「獲物がナイフ同士とか面白くないでしょ」
クスクスと彬人は笑い、後退したナツに焦点を移し、グルカナイフを投げる。彬人の武器は紐の付いたグルカナイフで、自由自在に操る。ナツが隠し持っていた短刀で弾くと同時に、彬人はグルカナイフを引き戻す。その瞬間、蒼はその紐を掴むと自分の方へ引き込んだ。力の均衡で両者微動だにしない。
背後の銃撃戦はその間に、一つまた一つと音が消えていった。
「蒼くんだっけ? 久しぶりかな」
均衡の中、彬人の口が開いた。
「どれだけご無沙汰かは忘れましたけどね」
蒼が言葉を返す。
その瞬間、彬人が動いた。




