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運命の重なった時  作者: MEGko
その偶然は必然へと続く
30/224

①本職

 それは夜半過ぎの頃の出来事だった。


「なぜ工藤百合絵を殺した?」

 港にほぼ近いコンビナートのいち倉庫で蒼の声が響く。蒼は静かな声で尋ねた。しかし、男の反応は無い。

 パンッ! と鈍い音が響き渡り男の左大腿部から鮮血が噴き出す。

 遠くで汽笛の音や、稼働している工場の音がする。しかし、この辺りは静寂に包まれていた。ライトと言えば車のヘッドライトのみが、蒼の背から拘束された男を照らしている。男はドサッとその場に倒れると、苦悶様でうめき声を発していた。

「誰の差し金だ?」

 蒼は再度尋ねた。苦しそうに呻きながら男は蒼を睨みつける。

 パンッ! と鈍い音が響き渡り次は男の右大腿部から鮮血が噴き出した。

 拳銃の音と低い男のうめき声が漏れる以外は直ぐに静寂に包まれている。

 しばし無言が続き、その男を静観していた蒼が、その沈黙を破るようにため息をつく。

「……あとは任せた。もうこいつは吐かないな」

 そう傍に居た者に告げた。

 ネクタイを緩めると蒼は諦めたかのように踵を返しその場を後にする。


 ――鮮血が流れ続けているその男は、既に事切れていた。


 この出来事が「仕組まれたもの」だったことに気づくのはまだ先のことだった。



 ❖❖❖

 夜遅く沙良は目が覚めた。

 あまり中途覚醒することはないのだが、珍しく「音」で目が覚めたのだ。

 その音を確かめるように、カーテンの隙間から外を覗く。

「こんな時間に?」

 何気に不思議な光景だった。いや、単に屋敷の裏に組の車が停車しただけのことである。停車自体は不思議ではなかった。その停車した車から出てきたのが蒼だったのだ。

 ネクタイはしていないが珍しくスーツ姿な格好なのが違和感だった。そしてカーテンの隙間から見ている沙良と目が合った。

「こんな夜中に何だろう?」

 沙良は不思議に思った。

 思って……何故かこれ以上は触れてはいけない気がして、カーテンを慌てて閉める。

 急いで布団へ潜り込むと、明日この事を聞こうかどうしようか悩みながら、何時しか眠りに落ちていた。


 次の日、予備校へ通う車の中で沙良は疑問をぶつけてみた。

「蒼くん……昨日はお出かけ?」

「ああ、ちょっと〝仕事〟でな」

「仕事……」で沙良の言葉が止まる。普段は一緒に予備校へ通っている蒼の〝仕事〟とは、やはり「ヤクザ関係」なのだろうか、と戸惑っていたのだった。

 そんな仕事内容など、映画や巷の知識しかない沙良は正直言って「よくわかんない」というところである。


 それ以上は何となく聞けない雰囲気だった。


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