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運命の重なった時  作者: MEGko
イブの夜に舞い降る雪
20/224

①〝桐生〟復活

 朝から沙良は不安を抱えていた。


「今日から桐生くんバージョン……」

 車内でつい呟いてしまった。隣にはご機嫌の蒼が座っている。


「ん? なに? 俺ってイケメン?」

 鼻歌交じりで意味不明な返答をする蒼。本気でご機嫌モードである。

 はいはい、と沙良を含め全員それ以上は突っ込まないようにしていた。


 蒼はあの苦労していた恰好からおさらばできて上機嫌なのである。そんなこととは露知らず……とりあえずご機嫌な蒼の傍で沙良はなんとなく不安に陥ってしまっていた。


 いつもの路地裏で送迎の車を降りて大通りへ出ると、そこから予備校まで距離は無いのに各場所からの視線を感じる。


 予備校に入ってからも周りのざわめきが遠巻きに聞こえていた。それを無視して教室階へ向かう。


 教室へ入ると「お前……誰?」から始まり、あれよと言う間に蒼に対して人だかりができた。

「あの黒崎くん! 信じらんない!」

「期待のホープがイケメンとかありえねー」

 クラスはちょっとしたパニックである。沙良は人だかりから離れるように席に座ると沙良の友人・梨絵が近寄ってきた。


「あの黒崎がねー、イケメン過ぎて僻みも起きんわ」

 朝、コンビニで買ったであろうコーヒーを飲みながら沙良の横に座った。程無くして蒼が沙良の前の席に座る。

「蒼くん朝から人気だね」

「って言うか、同じ黒崎とは思えん」

 沙良がねぎらうのと同時に、梨絵が率直な感想を述べる。

「なんで急にその恰好になったん?」

 梨絵は蒼に詰め寄った。

「まーそこは企業秘密」

 サラッと返す蒼に対して沙良は「企業秘密……確かに」と妙に納得していた。

 その日、今日の講義はいつになく沙良と蒼の傍の人口密度が高かった。



 ❖ ❖ ❖ ❖

 蒼や沙良は、予備校ではランチタイムにデリバリーを使っている。


 ここの予備校には教室でもオープンスペースでもどこでもお昼は食べていいシステムとなっていた。朝の送迎時にだいたい食べたいものを伝えていたら、蒼専属の倉田が手配してくれる。今までは蒼が配達員から受け取って教室で食べていた。


 しかし、今日は朝から予備校全体は浮足立っていたのだ。それも蒼が〝黒崎〟を止めたからである。そのことで、蒼は玄関から戻ってくるのがいつもより遅かったのは、何となく理解できた。

「いや、まじ最悪……」

 不機嫌そうにお昼を持って戻ってくる蒼。時間は出かけてから優に30分は経過していた。

「捕まってたの?」

 心配そうにのぞき込む沙良。

「しゃーないじゃん、この黒崎だもん。それは覚悟の上でしょ」

 お昼を食べ終わった梨絵がニヤリと笑う。それを見て蒼はムッとしていた。分かっていたことである。蒼にとって普段からこんな調子なのは自覚があった。


 しかし、予備校ではみんなが志望校に向かって一喜一憂している場所でもあり、また娯楽がない。だからなのか余計に蒼のルックスに女の子は喰い付いていた。

 それが少し異常なことに、覚悟はしていたがイラッとしていた蒼だったのだ。

「いただきます」と言うと、受け取ったお昼を食べ始めている沙良。蒼もふてくされながら弁当に食いついた。


「明日からまた〝黒崎〟に戻ろうかなぁ」

 弱気になる蒼。

「いや、もう面が割れてるから無理っしょ」

 サラッと梨絵が返す。そのやり取りを見て沙良はクスッと笑った。


「私は〝黒崎〟くん好きだけどね」

「沙良の惚気―? でもそれはモノ好きよ」

 梨絵が揶揄う。傍で蒼は諦めたかのようにため息をつくと、もう既に弁当を食べ終わっていた。


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