<賢者からのおくりもの> 完
『こんなふうに、いい話と思わせて引き込み、途中無茶苦茶にしてみせて笑わせ、最後は感動的にしめる構成がすばらしいと思いました。
僕も物語の賢者のように、あきらめない気持ちと優しさと賢さをもって、人生を生きていきたいです。』
僕は無事に、読書感想文を書き終えた。
けれど、それを提出した日の放課後、僕は先生から呼び出しを受けた。
「きみの提出した、『賢者からのおくりもの』の感想文についてだが……
というか、この本についてだが。
一体どこから入手したんだね?」
「えっと、街の古本屋で買いました」
ほんとうは先輩から借りたのだが、そのときに言われている。
この本は古本屋で偶然手に取ったと言え、と。
その通りに答えると、突然先生は言い出した。
「よし、君には単位をやろう!」
「ええええ?! って、まだ一年終わってないんですが……」
「いやいや、いいんだよ。
だが、このことはみんなには内緒だよ?
いいね?
その本のこと、その内容、すべて内緒にしてくれたまえ。いいね?」
「はあ……」
寮に戻って先輩にその話をすると、先輩は笑って種明かしをしてくれた。
「実はね。あの話は、先生が若いころに書いたものなんだ」
「そうなんですか?!」
「まあ俺も、偶然知ったんだけどね。
ただ先生にとってあれは黒歴史だったみたいで、あれと自分のかかわりを知られるのを極端に嫌がってるんだ。
俺としては、先生はそっちの道に進んだ方がいいと思うんだよねー……
というわけで、読書感想文で困ってる後輩がいたら、俺はこの本をすすめることにしてるんだよ。
早く先生も自分の才能に気づいて、自分が本当に求める道を進んでくれればいい。
先生には、ギフトがあるんだから。
こんな傑作なお話を書くことのできる、天の賢者からの贈り物がさ!」
その数年後、この話は映画化されることになる。
そして先生は再び小説を書き始め、先輩は先生のマネージャーとなった。
そのとき、僕は思った。
先輩は、先生の賢者だったのだろう、と。
<賢者からのおくりもの> 完
by 日向 るきあ
ささやかで、かなりアホで、ほんのちょっとだけほっこりする(かもしれない)お話にお付き合いくださり、ありがとうございました!
なお、あんな話で、映画化されちゃうのかーい! というのはツッコミどころですm(__)m