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94話 ケオブルメイル

「それで国の名前はどうするのかしら?」


 国の名前かぁ。確かにいつまでも辺境の一領主って自己紹介説明するのもあれだしな。

 だが急にそんなこと言われてもな………。


 うーん………そうか、いままでもこれで通してんだから、あえて変えなくてもいいのか!


「決めました!」


「却下よ」


「却下ですね」


「まだ、何も言っていないのですが」


「言わなくてもわかるから却下よ」


「言わなくてもわかりますので却下ですね」


 く、なんと言う理不尽!


「せ、せめて聞くだけでも」


「時間の無駄よ」


「次を考えてください」


「そこをなんとか!」


「はぁ、わかったわ。聞くだけ聞いてあげるわ」


「そこまでおっしゃられるのであれば」


 よし、チャンス到来。このボール確実にゴールしてみせる!

 二人ともこの俺の新たな発想に驚くがいい!


「辺境の国」


「却下よ。もうあれねセンス0といったらセンスという言葉に失礼なくらい最悪ね」


「却下ですね。そもそも思考を放棄したことを、まるで新しい発想かのように発言することが最悪です」


 こ、心が、心が痛いっ!


「さっさと次を考えなさい」


「次をお願いします、市長」


 えーと、えーと。

 たしかここは元々ただの荒地ならば


「荒野の国」


「却下よ、真面目に考えてるのMy Lord」


「却下ですね。あまりこの手は使いたくなかったのですが………」


 ぎゃああああああ。

 いい年した男の短パン裸サスペンダー!


「あはははははははははははは、なにこれ? 駄目、これは駄目よセリス。あははははははははははは」


「市長、次はコレが街の中を走りますよ」


 !?


「こういう風に」


 いやああああああああっ!

 ちょっと恥ずかしそうな顔の短パン裸サスペンダーが、直立不動で進んでいくううううっ。


「あはははははははははっ。死ぬ、私死ぬわ」


 ああ、こ、心が心の中のなにかがゴリゴリと削られていく。


「市長、次を期待しています」


 !?


 そうだ、まだだ、まだ俺には希望がある!


「あははははははは、なにその恥ずかしそうな顔。あはははははは」


 き、希望が………。


「市長、外に放ちますよ」


 それだけは……それだけはっ!

 考えろ、働け俺の脳細胞! なにか失ってはいけないものを失うことになるぞ!


 辺境、荒地は却下だから……えーとこの土地の特徴、特徴。

 即死、死に戻り、凶悪………駄目だ、ネガティブなイメージしかでてこない。改めて考えても理不尽だらけの土地だな本当に。


 っと、駄目だ、ネガティブに引っ張られるな。そこに引っ張られれば待ち受けるのは悲劇しかない。


「あはははははははははっ、最強、これが最強だわっ」


 最強、そうだ最強と言えばソフィアさんだ。


 …………ソフィアタウン。


「ふう。市長、そろそろ外に放ちましょうか」


「まった、いえ、まってください。私の実力はまだまだこんなものではないはずです!」


 考えろ、考えろ、考えろ。


 この街には誰がすんでる?

 ソフィアさん、紅さん、ロカさん、セリスさん、鳳仙さん、ラクィーサさん、ムジィーカさん、ガッツォさん、マーリダーレの皆さん、ジャーメレナさんとその配下の皆さんだ。


 どんな街だ?

 水の女神像があって大量の水があって、水の中に建物の大半があって、水も陸も自由に行き来できて、多種多様な人達が普通に暮らしてる変わった街。地形やら種族特性やらに左右されない無茶苦茶だけどある種の理想郷……


「…………ケオブルメイル」


「あら、今度のはなかなかよさげね」


「たしかに、今までの中では悪くはありませんね」


 おお!


「何よりもこれ以上の妙案が出てくるとは思えないんだけど」


「それは……確かにそうですね。市長のお力ではこれが限界かもしれませんね」


 色々酷い言い種だが……今はそれよりもっ!


「早くアレを止めてください!」


 俺の中の何かが死に絶える前に!


「おやぶー、あはははははははっ」


「ロカさん? 何事で、ぶっ。え、英雄どの、くくっ、こ、これは一体?」


 ロカさんとファウスティーナさん!?


「な、なんか走ってるんだぞ、あははははははははははは」


「くくっ。こ、これは新しい兵器かなにかでしょうか?」


「兵器、確かに兵器だぞ。あはははははは、死ぬ、ボク死んじゃうぞ」


 ああ、俺の中の何かが


「あはははははは、ロカ笑いすぎよ」


「そうですよ、ぶふっ。ろ、ロカさん。くくっ」


「二人だって笑ってるんだぞ、あはははははは。こ、こっちにきたんだぞ、あははははははははは」


 死んだ。


 …………。

 ……。


  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「なるほど国名ですか。たしかに、実質二つの国を配下に置く国がいつまでも無名とはいきませんね」


「はあ、ハバメヤメだけじゃなかったのね。というかファウスティーナの国はよく文句を言わなかったわね」


「宰相さんから特に異議はでませんでしたよ。それにレンドンドさんからも特に何か言われた覚えはないのですが」


 うーん、たしかにマーリダーレの時は少し脅しもいれたけど……宰相さんもそれなりに嬉しそうににしていたし、レンドンドさんなんかも嬉しそうにしてた気がするんだが。


「下手に暴れられるより、細かいことは見逃しておとなしくしててもらった方がマシってことね」


「英雄殿の戦力、そしてソフィアさん達のお力を目にしたのならば、両国の判断は当然でしょうね」


 うーん、むしろ元女王っていう厄介ごとを押し付けられてよかったって理由の方が大きい気がするんだがっ!


「脳天から真っ二つにするわよ、My Lord」


「既に脳天が割れるほどの衝撃なのですが」


 というかジャーメレナさん、いつの間に錬気を? ここ来たの昨日だろ?


「ふん、死んでも元に戻るのでしょうMy Lord。なら何も問題ないわ」


 いえ、それなりに痛いですし、一定時間ですが能力も結構下がりますし。問題がないわけでは……


「いつかその首叩き斬ってあげるから、楽しみにしていなさい」


  なんの予告ですか!?


「ジャメーレナ様はツンキルですね」


 セリスさん、なんでどや顔してるんですが? 全然うまくないですよ。


 ツンツンkillkill。

 痛い目にしか会わないじゃないですか!


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