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92話 防衛戦超次元反省会(side ジャーメレナ)

 

「ご主人さまはお休みしたみたいだし……みんな今日の反省会よ」


「承知したでござる」


「うむ」


「わかったぞ」


 この集まりは一体何?

 なぜ化け物5人と一緒に私はいるの?

 しかもなぜあの男が寝ている寝室なの?


「その前に新しいお仲間のジャーメレナちゃんよ!」


「お、この娘はあの時の娘でござるな」


「む? ソフィアは顔見知りか?」


「ボクもだぞ」


「ほらほら、ジャーメレナちゃん。みんなに挨拶を」


 ちょっと挨拶って、本当になんなのよこれは。


「ここは戦場じゃないわ、すぐに命を取られることはないはずだから緊張しなくても大丈夫よ」


 はずって。

 そうね、ここにいる誰か一人でもその気になれば私の命なんて造作もなく消されるのは確かね。


 それなら!

 無駄に気を使っても仕方がないわ。


「私はジャーメレナ。今日の戦で敗れてこの……そういえばこの国、名前はなんて言うのかしら?」


「まだ名前はありませんが……たしかに人も増えて交流も始まりますし、そろそろ市長に名前を考えてもらわないといけませんね」


「はあ、私たちは名前もないような国に完敗したのね」


「名前は強さの証ではありませんから」


「確かにあなたの言う通りね、えーと……」


「私は市長の秘書のセリスと申します。今後とももよろしくお願いいたしますジャーメレナ様」


 秘書ね。

 他の4人とは少し空気が違う、なにかしらこう相手に考えを読ませないというか、腹の中で何を考えているかわからない怖さがあるわね。


「よろしくお願いするわ、セリス」


 でもそういう人間は嫌いじゃないのよ。それに、なぜかはわからないけどうまくやれそうな気がするわ。


「拙者はソフィア、これからよろしく頼むでござるよ、ジャーメレナ殿」


 来たわね、私の目指す頂。

 それにしても……戦場のあの迫力が完全に影を潜めてるのね。


「よろしく頼むわね、ソフィア」


「ふむ、良い眼でござるな。力で頂を求める眼でござる。どうやらジャーメレナ殿とは仲良くできそうでござる」


「ええ、是非とも」


 まあ、影を潜めていてもジラーテよりもさらに迫力があるのは変わらないけど。


「妾は紅、よろしくたのむ」


 どうやらお仲間がいたようね。というか他の3人が大きすぎるだけよね。まあ、セリスはよしとしてソフィアのあれは反則よね。


「ふむ。安心しろ、我が主は一部分のみに価値を求める男ではないからな」


「ふん、価値観なんて人それぞれよ。そんなもの気するほど暇じゃないわ」


「ボクはロカだぞ」


 そう、彼女はロカというのね。


 …………。


「? どうかしたのかだぞ」


 これはもうあれよね、凶器よ、凶器。


「???」


「なんでもないわ。これからよろしく頼むわねロカ」


「よろしくだぞジャメ姉!」


 じゃ、ジャメ姉……。

 というかもしかして年下なの? こんな凶器を2つも持ってるのに?


 …………。


 世界は広いわね。


「みんなとも楽しくやれそうね」


「そうね、退屈はしなくてすみそうだわ。ありがとう、貴方の忠告にしたがったおかげよ」


「うふふふ、素直な娘は大好きよ。ワタシは鳳仙、これからよろしくねジャーメレナちゃん」


「ええ、これからよろしく頼むわ鳳仙」


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「それでだ鳳仙、妾達をここに集めた理由はなんだ?」


「言ったでしょ、今日1日のというよりは今日の戦闘の反省会よ。みんな注目してちょうだいな」


 ?

 宙に浮かぶ動く絵?


「まずは、なぜかご機嫌な紅ちゃん」


「む? 妾か?」


「そうよ、まずはご主人さまが砲撃された時の件よ」


 は? なにこれ?


「ねえ鳳仙、この動いてる絵ってもしかして」


「そ、今日の海戦の記録よ」


「記録って……これって海戦の様子そのものよね? 一体どうなっているの?」


「う~ん、ご主人さまからの借り物の力だからワタシも詳しいことはわからないんだけど。見ているものを一定時間の間だけ任意に記録できるのよ」


 任意に記録できるのよって……。


「もし興味があるならジャーメレナちゃんもご主人さまにお願いしてみたら?」


「検討してみ、えっ!?」


 あの男が空中戦艦の主砲で撃たれた? しかもこれ直撃!


「我が主には傷一つつけさせていないが」


 はあっ!?

 あの砲撃が直撃して無傷なの? ちょっとどうなってるのよ?


「そうね、無傷だったわ。それにあの程度の攻撃なら、今のご主人さまなら耐えられるでしょうしね」


 あの程度!?

 仮にもエンデルベ最強の一撃なのよ!?


「でも問題なのはそこじゃないわ」


 問題じゃないって……。

 仮にもこの国の最高位の人間が撃たれてるのよ、それが問題じゃなったら何が問題なのよ?


「どうしてあのお船を沈めちゃったのかしら?」


「威力はどうあれ、我が主に牙を向けたのだ。それなりの報いだ」


「それにしたってこれはやりすぎじゃない?」


 ちょっと……何……これ。


「セリスちゃんが言っていたでしょ、私たちの役に立ちそうなものはなるべく回収するようにって」


 空中戦艦が切り刻まれて最後は消し炭、あの船が一瞬でチリになるなんて……。


「あれじゃあ、部品一つ回収できないじゃない」


「それは……」


「ご主人さまが撃たれて、頭に血が上る紅ちゃんの気持ちはわかるから、次は気を付けてね」


「うむ、わかった」


 反省の理由がまさか船を撃沈させたことだなんて……。

 エンデルベ最強のはずの空中戦艦が只の獲物扱い、強い強いとは思っていたけど本当に想像以上ね。


「自分は大丈夫みたいな顔してるけど、次はソフィアちゃんよ」


「なんと拙者もでござるか?」


「ござるかじゃないわよ、全く」


「うーむ、特に身に覚えがないでござるが」


「はあ、これを見てもそんなことが言えるかしら?」


 こんどは大きなお城と城下町?

 結構距離があるからよく見えないけど、あのお城に翻ってる旗の紋章は……これってもしかしてエンデルベかしら?


 ソフィアがエンデルベのお城に突撃して……


 !!!!!


 ちょ、え、はあっ!?


 あ、ありえない、ありえないわ。だ、大地が……大地が割れる。


 城が街が……エンデルベが……


「全く何てことしてくれるのよ」


「何か問題があるでござるか? 御屋形様に牙をむいたのだ、当然の報いでござる」


「問題だらけよ!」


「む」


 大地が割れた余波で今度は津波が……


「津波やらなんやら抑えるのにワタシとロカちゃんがどれだけ苦労したと思ってるの?」


 ぇ……つ、津波を拳で砕いた!?

 って今度は何!? 砕かれて小さくなった津波を竜巻が吸い上げて霧散してる!?


「むむむ」


「むむむ、じゃないわよ」


「ソフィ姉のおかげでボクは怒る元気もなくなったんだぞ」


「ソフィアちゃん、ご主人さまが襲われて頭に血が上ったのはしょうがないわ」


 は!? しょうがないの? これが? 大地が割れて文字通り国が一つ消える、まさに天変地異そのものをおこしたのよ!?


「でも次からはなるべくなら何をやるかを教えてほしいのよ。そしたらワタシ達もうまく手助けできるじゃない」


 手助け!?

 天変地異を手助け……もう違いすぎて訳が分からないわ。


 でも……


「確かに。ロカ殿、鳳仙殿、申し訳なかったでござる」


「うふふ、そんなしょんぼりしないで」


「そうだぞ、次はもっとうまくやればいいんだぞソフィ姉」


「拙者、まだまだ修行が足りないでござる。これからも精進せねばでござる」


「妾もだな」


「あはははははは」


 悪くない、悪くないわ。


「あら、どうしたのジャーメレナちゃん」


「なんでもないわ。私が目指そうとした頂があまりにも高くて、笑うしかなっただけよ」


「頂が低いよりは良いでござろう?」


「全くその通りだわ」


 あの男と鳳仙には感謝しないといけないわね。

 こんなありえない世界に引き込んでくれるなんて。


 当面退屈の二文字とは無縁でいられそうだわ。

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― 新着の感想 ―
[一言] たぶん毒されていくんだろうな。 慣れないとやってけないだろうし。
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