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53話 マーリダーレ王

 そして何故か牢屋にいる俺。


 いや、うん定番といえば定番なんだけどさ、流石にこれはひどい。

 ラモーンさん役者すぎるわ。完全に騙されてしまった。


 さてそれはそれとして、どうするか?


 直ぐにイベントが進んでくれればいいんだが。長期抑留されないと進まないイベントだと厄介だよなぁ。


 …………。


 この牢屋って壊せるんだろうか?


「も、申し訳ない領主殿」


 ラモーンさん?


「丁重にもてなせと伝えたはずが、何をどう勘違いしたのか衛兵の連中め!」


 ?


「国の恩人に対して重ね重ね申し訳ありません。この償いは確実にさせていただきます」


 とりあえず、牢屋に入れられたのは間違いってことか? なんかゲームっぽかったしこれはこれでって、それよりも……。


「国の恩人?」


「はい、領主殿が討伐された魔獣は、その力であの辺一帯の海域を支配しておりまして。近付くものは全て海の藻屑に変えてしまっていたのです」


 あの骸骨達は藻屑の成れの果てってことか。


「マーリダーレ周辺は見ての通り、食料生産にあまり向かない土地柄でして」


 見ての通りなのか……。海中の土地柄とかさっぱりわからん。


「その為、多くの住民の胃袋を満たすため、食料を他の街から仕入れているのですが」


「あの魔獣が輸送ルートを塞いでいたと」


「はい。さらには私達兵士の輸送ルートも押さえらましたので、各地の町村が魔獣や盗賊の被害を受けてもまともに討伐隊を送り込むこともできず……」


 国土が荒れ放題ってことか。


「輸送される食料は減り、兵士に回す余裕もなくなっていく。結果として各地へ派兵できる兵がさらに減る、という悪循環に陥っておりました」


 ガッツォさん、なかなかやらかしてるのな。こりゃ、益々ガッツォさんの名前は出せないな。


「ですがそれも今日まで。確認にいかせましたが、確かに魔獣も骸達もいなくなり、海の色も元にもどっておりました」


 どうやら誤解は解けたってことかね?


「それで領主殿。マーリダーレ王が是非にお礼を申し上げたいと。もし、よろしければ一度王に会ってはいただけませんでしょうか?」


 おお、城に入れてもらえるのか。

 いいね、いいね。ボスを倒して王様に謁見とかまさに王道!


「救国の英雄である領主殿に散々無礼をはたらいた上で、この様な申し出。虫が良いのは重々承知しておりますが、是非ご一考いただけませんでしょうか?」


「構いませんよ」


 むしろ、こちらがよろしくお願いしますって感じだ。


「ありがとうございます。早速ご案内させていただきます」


「よろしくお願いします」


 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


 これが謁見の間ってやつか。

 家具やら調度品の良し悪しはよくわからんが、なんとなく圧倒されるこの感じが荘厳ってやつなのかね?


「領主殿。直ぐに王が参りますのでこちらでお待ち下さい」


「あのラモーンさん、申し訳ないのですが私は皆様の流儀や礼儀を存じませんで、無礼な振る舞いをした場合は直ぐに教えて下さい」


 王族とか、ほとんど会ったことないからな。

 しかも礼儀作法も勝手も何もわからないような国の王様とか、失礼をはたらかない自信が全くないぞ


「わかりました。っと王が参られたようです」


 さてどんな王様が出てくるのかね?


 って女性!?

 しかも頭部が魚じゃない!

 そして下半身も魚じゃない!


 そしてなんか2人いる!


「領主殿。こちらが私達の王である、ファウスティーナ様です」


 こっちの綺麗な女性が王様ね。

 それじゃ、もう1人のこの眼力の強い美人さんは宰相かなんかかね?


「ラモーン! 何度も言っているがここは謁見の前だぞ。その兜を外せ!」


 兜?


「おっと、これは申し訳ありません」


 魚頭が外れた!?


「気が急きすぎて。申し訳ありません領主殿、ファウスティーナ様」


 中からダンディな髭のおっさん!?


「領主殿?」


 は?え?


「領主殿、どうかされましたか?」


「い、いえ、その申し訳ありません、その魚形の兜に少々驚いてしまいまして」


「これにですか?」


「ええ、まさか兜とは思わず」


「本物の頭部と勘違いされましたか?」


「ええ。瞬きもしませんし、表情も変わらないのでなかなか意思疏通が大変そうだなと」


「ぷぷ」


「クスッ」


 なっ、宰相さんと王様に笑われた!?


「はははは。なるほどそれならば驚くのも無理はないですね」


「申し訳ありません」


「謝る必要はありませんよ英雄殿」


 王様?


「英雄殿は陸地から来られた方とお見受けします」


「はい」



「初めて出会ったのが我が国の兵士。そして防壁から直接ここまでいらっしゃったのならば、そのような勘違いも仕方ありません」


 そうなんだよ。俺この国のいわゆる一般人をまだ見てないんだよ。

 お城が壁の直ぐ後ろに建ってるせいで、ここに来るまでに城下町の中を見ることもできなかったしな。


「ですから、どうかお気になさらず」


「ファウスティーナ様」


「わかっています、グラツィエッラ」


 宰相さんはグラツィエッラさんっていうのか。


「英雄様、なにか?」


 っと、睨まれてしまった。


「ふう、グラツィエッラ。そのように睨んでは領主殿が萎縮してしまうではないか」


「なっ、私は睨んでなど!」


「いえ。睨んでいますよ、グラツィエッラ」


「ファウスティーナ様まで」


「申し訳ありません、領主殿。悪気はありませんので大目に見てやっていただけないでしょうか?」


「ラモーン!」


 グラツィエッラさん、実はいじられ担当?


「ほらほら二人とも。いくら仲のよい良い夫婦でも、ここは一応公務の場ですよ」


 しかもラモーンさんのパートナーだったのか。


「ファウスティーナ様! べ、別に仲良くなぢょ!」


 噛んだ。


「……」


 赤くなった。


「…………」


 涙目で睨まれた。


「英雄様、違いますかりゃ」


 また噛んだ。


「……………」


 なんかプルプルしだした。

 何この可愛い生き物。


「っ」


 あっ、逃げた。


「ふう。やはりグラツィエッラの破壊力は最強ですね」


「全くです。自分の妻ながら、毎日のように思い知らされています」


 あざとさが一ミリもないのにあの悶えたくなるような可愛さ。


 うん、あれはなんかヤバい。


「初対面ですが、その意見には私も賛成します」


「ファウスティーナ様やラモーンだけでなく、英雄様までそのような!」


 お、帰ってきた。


「なんですか英雄様」


 うん、あれだ。もうどんな怖い顔されても、微笑ましいものにしか見えない。


「さて、いつまでもグラツィエッラを愛でていたいところですが」


「ファウスティーナ様!」


「冗談よグラツィエッラ。さて英雄殿この度の魔獣討伐、この国の王として「失礼します!」」


 ?


「控えろ! このような時に何事だ!」


「は! 申し訳ありません。ですが、ぐっ」


「私の進む邪魔をするな、一兵卒」


 おおう、大丈夫か伝令さん。結構な勢いで壁にぶつかったぞ。


「皆の者、喜べ。王の凱旋ぞ」


 ……。


 誰?


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― 新着の感想 ―
[一言] 兜!?そんなんアリ!?
[一言] 頭と下半身が魚じゃない…つまり胸と腕が魚?アリだな!(多分違う)
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