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47話 口に咥えるやつ

「おかえりなさいませ、市長」


 ふう、今まで最終決戦だと思っていたのは間違いだったな。

 拳一つでまさか領地と同じくらいのクレーターができるとは……しかも連撃。地形が完全に変わっちまった。

 領地の境界で鍛練してたお陰で、ほとんどが領地外だったのが唯一の救いだが。


「セリスさん、ただいま戻りました」


 とりあえず、まだまだ鍛練の余地はあるってことだな。


「おかえりなさい、ご主人さま。今日も精が出るわね」


 お、鳳仙さん。ちょうどいい、あの件を相談してみるか。


「ワタシを探してたって、セリスちゃんに聞いたんだけど何か御用かしら?」


「はい。先月私が行ってきた新しいエリアの探索について、少々相談したいことが」


「あらあら、なにかしら?」


「新しいエリアが海中なんですよ」


「あらあら。ご主人さまってば、また変わったところを訪ねたのねぇ」


 全くだ。


「攻撃も移動も大変ですし、何より呼吸ができませんからね」


「それで、水中でもなんとか行動できる方法はないのかってところかしら?」


「そうですね。特に呼吸の部分をなんとかしたいところです」


「まかせて。と言いたいところなのだけれど、なかなか難しいわね」


 うーん、さすがの鳳えもんでも難しいか。


 となると……どうしたもんかね。


「戻ったよ」


「戻ったぞい」


「おかえりなさいませ。ラクィーサ様、ムジィーカ様」


 お、丁度いいところに。


「おはようございます。ラクィーサさん、ムジィーカさん」


「お、大将。帰ってきてたのかい」


「おはようございますぞい、主殿」


 この二人なら何か案があるかも。


「お二人とも戻って早速で申し訳ないのですが、相談にのってもらえませんか?」


「改まって何事だい?」


「ぞいぞい」


「今、私が探索しようとしているエリアなのですが、海中というなかなか厳しい環境でして」


「化け物に囲まれた領地の次は水の中かい。ホントに難儀なことに巻き込まれる大将だね」


 だなぁ。一度でいいから世間一般で言うような、普通のエリアを探索してみたいところだよ。


「それで、その水中エリアの何に困ってるんだぞい?」


「一番の問題は呼吸ですね」


「たしかに、水中じゃ呼吸はできないね。息を沢山吸って止めとくってのは駄目なのかい?」


「流石にもって数分かと」


「たったそれだけしかもたないのかい?」


 は?


「少なくとも2~3時間くらいは持たせないと」


 いやいやいや、2~3時間とかあり得ないだろ。ありえないよな?


「そうねぇ、最低でもそれくらいはねぇ」


 うん、あれだ、もう構造的な差なんだろうな。そう思うことにしよう。

 そしてこの話の流れを変えよう。この流れだと息止める鍛練とか言い出しそうだ。


「ムジィーカさんは水中の相手との戦闘の際は、どのようにしていたのですか?」


「儂? 儂は基本的に自分で戦わないから、近くにいる水生の魔獣を操るか死霊系の魔獣を操って対応してたぞい」


 できるやつにできることを任せる感じか。たしかに理にかなってるんだが、いかんせん俺に出来ることじゃないのがな。


 うーむ、どうしたもんかね。


 空気、気流、風……風か。

 魔法で作った風って、酸素的なものも一緒に作り出したりしないのかね?


 ダメ元で試してみるか。


「鳳仙さん」


「何かしら?」


「小さな弱い風を作りだす道具を作ることは可能ですか?」


「それくらいならすぐに作れると思うわ」


「風の吹き出し口を、私が咥られる形に加工することは?」


「大丈夫、簡単よ」


 さすが鳳えもん。


「では、お願いしてもよろしいですか?」


「直ぐにできるから、ちょっとだけ待っててちょうだい。ラクィーサちゃん、ムジィーカちゃん、手伝ってもらえるかしら?」


「わかったよ」


「わかったぞい」


「水中での実験をしたいので、船着き場で待っていますね」


「わかったわ~」


 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


「ご主人さま、お待たせ」


 早っ!

 まだ、一時間くらいしか経ってないのに。流石は鳳えもん!


「こんな感じになったのだけど、大丈夫かしら?」


 見た目はうん、片手サイズの立方体に咥えるとこがついてるな。形は四角いけど、ダイビングで使う酸素ボンベの咥えるとこみたいな感じだ。


「ありがとうございます。早速試してみても?」


「ええ、どうぞ」


 まずはこの咥えるところを口にいれてっと。


「横にボタンがあるでしょ? そこを押すと風が発生するわ」


 えーと、ボタン、ボタン。これかな?


「おばぼべぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」


「ご、ご主人さま! 凄い顔になってるけど大丈夫?」


 はあ、はあ、はあ。


「な、なんとか。ちょっと風が強すぎるようなので、もう少し弱めに調整してもらえませんか?」


「わかったわ、もっと弱くね。ここをこうしてっと、はいどうぞ」


 早っ!


「では早速」


 スイッチONっと。お、今度はいい感じ。

 なら後は水中で試してみるだけだ。


 このまま湖にダーイブ!


 ………。


 呼吸ができる。

 水中での作動にも支障はなさそうだし、うん、これは成功かな。


 よし、これで最大の問題は解決だ。

 あとはもう少し詳しいスペックを確認して……探索再開といきますか!


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[気になる点] 死んでいないだと!? [一言] 風でぶっ飛んだりしないのか...
[一言] (チッ、破裂しなかったか…)
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