42話 お願いの顛末、花火となりて弾けとぶ
デスペナルティは回復した。
鳳仙さんに必要なものは作ってもらった。
被害がでかくてもいいように、領地も広げた。
よし、やりますかね。
「御屋形様、良い顔でござるな」
「?」
「意外と好戦的なのだな、我が主は」
「そうですか?」
「でも、ボクはそういう親分もいいと思うぞ」
「ありがとうございます」
「うふふ。普段のご主人さまとの落差に、四人ともメロメロね」
メロメロって、またなんとも言えない言葉を。
「大将、あんた馬鹿だったんだね。ますます気に入ったよ!」
「うむうむ。あえてソフィア殿に挑むとは、まさに阿呆ぞい」
いえ、挑んだというよりは挑まれたというか、お願いされただけなんですよ。
「熱戦を期待しています、市長」
そして、この人にはめられただけですよ。
「さて、この辺まで離れれば大丈夫そうですかね」
ソフィアさんの力の上限がさっぱりわからないからな。戦いの余波で屋敷や小屋が、吹き飛ばされないとも限らんし、広げた領地を目一杯使って離れても損はないだろ。
「では御屋形様」
「はい」
「よろしくお願いいするでござる」
って、挨拶と同時に仕掛けて来るのかよ!?
だが、前よりも見える! 直線の動きくらいなら、避けられうがぁ!
側を通った余波でダメージとかどんな威力の突進だよ。あんなもん、ちょっとでもかすったら即アウトじゃねーか。
くそったれ、赤い時のソフィアさんとは比べ物になんねーぞ。
「くくく」
ソフィアさん?
「流石でござる。流石でござるよ、御屋形様!」
く、次も早い!
右拳、からの回し蹴り二連続。 避けてみせる!
ぐぁああ。
触れてもないのに、痛てぇー!
「あははははははははは!」
ひいいいいい。理性あっても、あんまりかわんないじゃねぇかぁ!
「最高でござる!最高でござるよ!」
右拳、左拳、右拳って、なんで拳なのに斬擊が発生するんだよ!
もともと爪があったからってか? もう意味がわかんねぇよ。
「御屋形様素晴らしいでござる! ここまで無傷で拙者の前に立っていられたのは、御屋形様が初めてでござる」
違うシチュエーションなら嬉しい言葉なんだが、この状況だと一ミリも嬉しくないな。
まあ、そんな下らない話は置いておいて。いつまでもやられっぱなしも癪だからな。一矢ぐらいは報いて見せますかね。
「はて? その足元に転がる丸いものは?」
「鳳仙さんに作ってもらった、私の武器ですよ」
「ふむ」
ちっ、躊躇なく飛び込んでくるか。どんな武器でもそれを上回れば問題なしってか。流石は破壊の化神。
「む?」
うん、やっぱりな。ソフィアさんでも動きだしの動作の癖ってのはあるみたいだな。
そうとわかれば、ただ速いだけのタックルなんぞに、いつまでもやられてられるかっての。
「ならば」
一瞬下がる動きと、右肩に力み。
さっきと同じ拳のコンビネーションか。そんなザルなディフェンスに早々捕まるかよ!
「拙者を翻弄するでござるか! その丸いものと一体となった不思議な技は一体?」
「企業秘密ですよ」
「ですが御屋形様、かわすだけでは!」
左肩に力み、それ意外はなし。単純に左ストレートか? そんな捻りのない動きでは。雑なディフェンスではもう捕まりませんよ、ソフィアさん。
「な? 拙者をすり抜けた?」
背中ががら空きですよソフィアさん!
「む!」
あたった、あたった。
しかし、ぶち抜いた相手の背中にボール蹴るとか、初めての経験だな。
「拙者の背中を取るでござるか」
あらら、全然効いてない。しかも、なーんか不味い空気が漂ってきたかな。
ソフィアさんの表情がきえっ、くっ、さらに速くなるのかよ! だがっその素直な動きでは!
「ぐっ」
くっそ、動きが読めてかわしきっても、余波からもらうダメージが半端なくでかい。これは不味いぞ、このままじゃ、持久戦に持ち込まれるまでもなくこっちの負けだ。
体が微妙に後退した? タックルか。なら、もう少し驚かせてやろうじゃないか!
ソフィアさんをかわすと同時に、ここだ! ボールを蹴りあげてソフィアさんの正面に。
「!?」
うおおう。思ったより派手に爆発したぞ。しかしソフィアさんのタックル洒落にならん威力だな。完全にかわしたのに腕一本持ってかれたぞ。
どうやら驚かせるのは成功はしたみたいだけど……。
あれだけの速度であのボールに激突して、あれだけの爆発になっても、ほぼ無傷かよ。強すぎるにも程があるだろ!
って、さらに速く。
右拳!
「が」
攻撃はさらに単調になったはずなのに、受けるダメージが!
左拳!
「ぐ」
右拳、左拳、回し蹴り。からの上!? 踵落としか!
おぶぉっおお! 吹き飛ばされた?
って、いやいやいや、なんだよあの踵。なんでクレーターが出来上がるんだよ。
あんなもんもらったらこっぱ微塵になっちまうぞ!
「御屋形様、どこを見ているでこざるか?」
な、しまっ。拳、直撃!?
「おぶおごおおおお」
な、なんだこれ何か大きな力の波が体に入って。ってあれ? 体の中からその力を打ち消そうとする波が……打ち消せずにあっさり飲み込まれたぁ。
か、体が弾けっ
……。




