34話 男二人の空騒ぎ その2
今日色々と激しい内容だった。というか、あれは本当にゲームなんだよな?感触がリアルすぎて……。くそ、シャワーでも浴びて頭を冷やすか。
なんか電話がなってるけど申し訳ない、取りあえず後回し!後でかけ直します。
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ふう、さっぱりだ。確か電話が来てたよな。えーと携帯、携帯……ソファーじゃないし、ベッドでもないし、トイレでもないし。どこに置いたっけか?
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あった、あった。あれだなこのカバーは変えないと駄目だな、ダイニングテーブルと同じような色なせいで、テーブルと同化して目の前にあっても気付かない。
着信7件に留守電2件か。着信は丸田、丸田、丸田、うん多分全部丸田かな? となると留守電もどうせ丸田だろ。電話かけたら説教されるんだし、留守電は無視だな。
「どうした丸田」
『やっと出たか。十四郎、お前、携帯をリンクさせたんだよな?』
「リンクさせたぞ」
『なら、なんで携帯に出ないんだよ』
ん? どういうことだ?
『ゲーム内で電話着信の通知来てたよな?』
「いや、来てないぞ」
『お前、本当に携帯とリンクさせたのか?』
「だからリンクさせたって」
お陰で、晴香さんから遠距離通信もらって大変な目にあったぞ。
『ならなんで電話の着信通知が来ないんだよ。お前こないだの俺との電話の後、リンクの設定きちんとやったのか?』
設定?
『きちんと説明書読んで、設定しろって言ったよな?』
「聞いた気はする」
『お前はわかったって言ったよな?』
「言った気もする」
『それで、実行はしたのか?』
……。
『実行はしたのか?』
「やったようなやってないような、多分やってるはずだと思う気もする」
『やってないよな?』
「そんなことはないと思いたいが、そんなことはあるかも知れなくもない」
『無駄に長い言葉で答えを濁すとか、お前は痛いところを突かれた政治家か』
「だってお前、あの人たちは素直に認めたら即辞職とかだぞ。それを言葉のマジックで回避できるなら、そりゃ無駄に長い言葉でお茶だって濁すさ」
『マジックでも何でもねえ。ただの言い逃れじゃねえか! その頭の回転の速さを他の事に使えよ』
「自由に使えるならとっくの昔に使ってるわ! お前は俺の担任か!」
『はあ、早坂先生もこんなのの進路相談とか大変だったろうな……』
く、痛いところを。たしかに早坂先生には苦労をかけた気はする。
『もしかして、先生があの年に急に老けこんだのはお前が原因か』
「いやちょっとまて、確かに日に日に老け込んだ気はする。だが全部が全部、俺が原因ではないはずだ」
『一部は自分だって認識があるのかよ』
「それはある。今の俺があるのは、あの時、早坂先生が骨を折ってくれたおかげだからな」
『……十四郎』
「俺は悪くないぞ、進路希望の紙を出しただけだ」
進路希望にやりたいこと書けって言われたから、一生徒として先生の言ったことを忠実に実行しただけだからな。
『ちなみになんて書いたんだよ』
「それは……だ」
『は? 本気でそれを書いたのか!?』
「それしか書かなかった。そしたら3か月後くらいに早坂先生が進路先を探してきてくれた」
『おいおい、まさかそれって』
「ああ、俺のキャリアの出発点だ」
『早坂先生、凄すぎるわ!』
その通りだ。あの時、早坂先生が担任じゃなけりゃ今の俺はどうなってたのやら。
「そうだぞ、早坂先生は凄いんだぞ」
『まあ、早坂先生の凄さはわかった。だがそれはそれとしてだ十四郎。あの時俺の言った説明書を確認しながらゲームと携帯のリンク作業についてはやらなかったんだよな?』
……。
「はい。あの直後にお腹が減ってご飯を食べに行きました」
『はあ』
「そして今まで綺麗さっぱり忘れていました、申し訳ありませんでした!」
『ったくもういいや。別に怒ってるわけじゃないんだ、最初っから素直にそう言えばいいだろうが』
よしよし。想定外の方に話が転んだが、かなり空気がマイルドになった。体力を消耗させたかいがあったってもんだ。
だいたいな、怒ってるわけじゃないなんて言うやつは大抵が怒ってるし、素直に認めたらさらに怒るだけだからな。
「すまなかった。それで今日は何かあったのか? 電話の件はついでだろ?」
『ああ、そうだった。もうすぐガロンディアオンラインの特集が放送されるんだか、何でも放送内で重大発表があるって話だから、お前にも教えてやろうかと思ってな』
「へー」
『また、うっすい反応だな。プレイヤー連中の間じゃ憶測飛びまくって、ちょっとした騒ぎになってるんだが』
「そりゃ、それなりにプレイしてる連中はそうなのかもしれんが。こっちは始めたばっかで、いまだにわからないことだらけだからな。これ以上新しい情報が増えたところで処理しきれん」
『そんなもんか』
「そんなもんだ」
『まあ、伝えはしたからな。時間があるなら、見ておくくらいはしても損はないだろ』
「ああ」
『よし、伝えたいことは伝えた。それと十四郎、携帯のリンクの設定は忘れずやれよ。今度こそ頼むぞ、そこまでお前がやらないと俺の紹介特典ももらえないんだよ』
そうなのか、どうりでうるさく言われるわけだ。まあ、誘ってもらえたことには感謝してるしな。
「わかった、今度こそ電話の後に直ちに取りかかる」
『たのんだぞ』
「ああ、それじゃあな」
『おう、またな』
さて、約束を果たすとしますかね。




