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34話 男二人の空騒ぎ その2

 今日色々と激しい内容だった。というか、あれは本当にゲームなんだよな?感触がリアルすぎて……。くそ、シャワーでも浴びて頭を冷やすか。

 なんか電話がなってるけど申し訳ない、取りあえず後回し!後でかけ直します。


 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


 ふう、さっぱりだ。確か電話が来てたよな。えーと携帯、携帯……ソファーじゃないし、ベッドでもないし、トイレでもないし。どこに置いたっけか?


 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


 あった、あった。あれだなこのカバーは変えないと駄目だな、ダイニングテーブルと同じような色なせいで、テーブルと同化して目の前にあっても気付かない。

 着信7件に留守電2件か。着信は丸田、丸田、丸田、うん多分全部丸田かな? となると留守電もどうせ丸田だろ。電話かけたら説教されるんだし、留守電は無視だな。


「どうした丸田」


『やっと出たか。十四郎、お前、携帯をリンクさせたんだよな?』


「リンクさせたぞ」


『なら、なんで携帯に出ないんだよ』


 ん? どういうことだ?


『ゲーム内で電話着信の通知来てたよな?』


「いや、来てないぞ」


『お前、本当に携帯とリンクさせたのか?』


「だからリンクさせたって」


 お陰で、晴香さんから遠距離通信もらって大変な目にあったぞ。


『ならなんで電話の着信通知が来ないんだよ。お前こないだの俺との電話の後、リンクの設定きちんとやったのか?』


 設定?


『きちんと説明書読んで、設定しろって言ったよな?』


「聞いた気はする」


『お前はわかったって言ったよな?』


「言った気もする」


『それで、実行はしたのか?』


 ……。


『実行はしたのか?』


「やったようなやってないような、多分やってるはずだと思う気もする」


『やってないよな?』


「そんなことはないと思いたいが、そんなことはあるかも知れなくもない」


『無駄に長い言葉で答えを濁すとか、お前は痛いところを突かれた政治家か』


「だってお前、あの人たちは素直に認めたら即辞職とかだぞ。それを言葉のマジックで回避できるなら、そりゃ無駄に長い言葉でお茶だって濁すさ」


『マジックでも何でもねえ。ただの言い逃れじゃねえか! その頭の回転の速さを他の事に使えよ』


「自由に使えるならとっくの昔に使ってるわ! お前は俺の担任か!」


『はあ、早坂先生もこんなのの進路相談とか大変だったろうな……』


 く、痛いところを。たしかに早坂先生には苦労をかけた気はする。


『もしかして、先生があの年に急に老けこんだのはお前が原因か』


「いやちょっとまて、確かに日に日に老け込んだ気はする。だが全部が全部、俺が原因ではないはずだ」


『一部は自分だって認識があるのかよ』


「それはある。今の俺があるのは、あの時、早坂先生が骨を折ってくれたおかげだからな」


『……十四郎』


「俺は悪くないぞ、進路希望の紙を出しただけだ」


 進路希望にやりたいこと書けって言われたから、一生徒として先生の言ったことを忠実に実行しただけだからな。


『ちなみになんて書いたんだよ』


「それは……だ」


『は? 本気でそれを書いたのか!?』


「それしか書かなかった。そしたら3か月後くらいに早坂先生が進路先を探してきてくれた」


『おいおい、まさかそれって』


「ああ、俺のキャリアの出発点だ」


『早坂先生、凄すぎるわ!』


 その通りだ。あの時、早坂先生が担任じゃなけりゃ今の俺はどうなってたのやら。


「そうだぞ、早坂先生は凄いんだぞ」


『まあ、早坂先生の凄さはわかった。だがそれはそれとしてだ十四郎。あの時俺の言った説明書を確認しながらゲームと携帯のリンク作業についてはやらなかったんだよな?』


 ……。


「はい。あの直後にお腹が減ってご飯を食べに行きました」


『はあ』


「そして今まで綺麗さっぱり忘れていました、申し訳ありませんでした!」


『ったくもういいや。別に怒ってるわけじゃないんだ、最初っから素直にそう言えばいいだろうが』


 よしよし。想定外の方に話が転んだが、かなり空気がマイルドになった。体力を消耗させたかいがあったってもんだ。

 だいたいな、怒ってるわけじゃないなんて言うやつは大抵が怒ってるし、素直に認めたらさらに怒るだけだからな。


「すまなかった。それで今日は何かあったのか? 電話の件はついでだろ?」


『ああ、そうだった。もうすぐガロンディアオンラインの特集が放送されるんだか、何でも放送内で重大発表があるって話だから、お前にも教えてやろうかと思ってな』


「へー」


『また、うっすい反応だな。プレイヤー連中の間じゃ憶測飛びまくって、ちょっとした騒ぎになってるんだが』 


「そりゃ、それなりにプレイしてる連中はそうなのかもしれんが。こっちは始めたばっかで、いまだにわからないことだらけだからな。これ以上新しい情報が増えたところで処理しきれん」


『そんなもんか』


「そんなもんだ」


『まあ、伝えはしたからな。時間があるなら、見ておくくらいはしても損はないだろ』


「ああ」


『よし、伝えたいことは伝えた。それと十四郎、携帯のリンクの設定は忘れずやれよ。今度こそ頼むぞ、そこまでお前がやらないと俺の紹介特典ももらえないんだよ』


 そうなのか、どうりでうるさく言われるわけだ。まあ、誘ってもらえたことには感謝してるしな。


「わかった、今度こそ電話の後に直ちに取りかかる」


『たのんだぞ』


「ああ、それじゃあな」


『おう、またな』


 さて、約束を果たすとしますかね。

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