33話 新しい住人 その2
まあ、問答無用で選ぶんだけどな。魔獣転生っと。
眩しっ。
「あたしは音無舞影の化身、よろしく頼むよ大将」
「お初にお目にかかる、儂は音羽楽影の化身。以後よろしく頼むぞい、主殿」
今回は妙齢の銀髪の男女か。しかし二人ともえらい小さいな、身長2~30センチくらいか?
「これはまた、珍しい方々が」
「そうなんですか?」
「ええ、ですが市長。彼女達のあの外見に惑わされないよう、お気をつけ下さい」
「?」
「彼女達は数多の魔獣に力を与え、敵対するもの達の力を削ぐることができます」
バフとデバフ使いか。強力な支援系ってことかな?
「そして自分達はその姿を隠し、力を与えた魔獣達を手足のように使い、暴れまわらせて楽しむことを得意としておりますので」
その上テイマーでもあるってことか。さっきの魔獣達はこの二人に操られてたってことなのかな?
しかし暴れまわらせて楽しむって、うちの住民が強化されて、暴れ回るとか災害以外のなにものでもないんだけど……。
「ふん、安心しなよ大将。あんた達に向かってそんな無謀しないさ」
「そうだぞい。ここにおる連中は、儂らの力ではどうにもならん相手ばかり。主殿はどこからこれだけの力を集めたんだぞい?」
「全くさ、大将。あんた神々と戦でもするつもりなのかい?」
神々と戦って、また物騒な話を。というか、うちの住民はこの世界の神々に喧嘩売れる面子なのか。まあ、ソフィアさん筆頭にそんな気はうっすらとしてたけどな。
「そんな物騒な。今のところは領地開発に励むだけですよ」
「ふん、今のところね」
「必要があればそれも辞さないと。主殿はなかなか愉快なご仁だぞい」
そりゃあね。敵として神ってやつが出てきたら、戦わざるを得ないからな。
「市長。お話もよろしいですが、そろそろお二方にお名前をつけて差し上げては?」
く、やはりその業務はあるか。名前、名前、なまえ……。
駄目だな何にも浮かばない、もう少しヒントがほしいところだ。
「うーん。お二人ともなにか得意なものはありませんか? 名前の参考にしたいのですが」
「あたしは舞、踊りだね」
「儂はこれだぞい」
ツインネックのギター?バンジョー? なんか変わった感じの楽器が出てきたな。
「あたしとそこの爺は二人で一組なのさ」
なるほど音楽と踊りってことね。それなら……。
「踊り、踊り子……ラクィーサ」
「わかったよ。あたしはラクィーサ、これからよろしくたのむよ大将」
「音楽、楽器……ムジィーカ」
「わかったぞい。儂はムジィーカ、これからよろしくたのむぞい主殿」
ダメ出し無しだし、気に入ってもらえたかな?
「ソフィアさんの時と比べると、格段の進歩ですね市長」
お、この空気は本気で誉めてくれてる感じがする。
「ありがとうございます」
「それで、あたしらは何をすればいいんだい?」
何をといきなり言われてもな。領地開拓なんだけど、踊りと音楽ってどうすりゃいいんだ? 作業してるみんなの応援でもしてもらうか?
「市長。まずはソフィア様達に、紹介されてはいかがでしょうか?」
そうだな。まずは皆と顔合わせからだな。
「ラクィーサさん、ムジィーカさん、皆に紹介しますので外に行きましょうか」
「わかったよ」
「わかったぞい」
……。
「どうしたんだい、大将」
「どうしたんだぞい、主殿」
ムジィーカさんは肩でラクィーサさん頭の上か。二人ともナチュラルに人に乗ってくるのな。
「いえ、なんでもありません」
まあ、マスコットとかみたいで可愛いと言えば可愛いし、いいんだけどさ。
「それでは向かいましょうか」
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
「あらご主人さま、新しい住人の方かしら?」
「ええ、鳳仙さん」
「親分。ボクもボクもだぞ」
「ロカさん、流石にロカさんを肩にのせるのは難しいかと」
「ふむ、新たな屋敷もできたところだ。まだまだ増えても問題あるまい」
「ありがとうございます、紅さん」
そうだ、お屋敷が領地からはみ出してるんだった。いい加減、領地の拡張もしなきゃな。
ま、その前にラクィーサさん達を皆に紹介しないと。
「鳳仙さん、ロカさん、紅さん。あとソフィアさんはまだ戻っていませんか?」
「御屋形様ー! ご無事でしたかー!」
うんまあ、生きてるか死んでるかで言えば、元気に生きているんですが。あれを無事とは言わないとは思います。
とまあ、そんなことはおいといて。ソフィアさんちょうどいいところに。
「では改めて。皆さん、こちらはこの領地の新しい住人のラクィーサさんとムジィーカさんです。ラクィーサさん、ムジィーカさん、こちらがこの領地の住人のソフィアさん、ロカさん、紅さん、鳳仙さんです」
二人とも地面に降り……ずに宙に浮くのか。まあ、宙に浮いててくれる方が話しやすい高さではあるよな。それにしてもロカさんとおんなじ感じで空が飛べる人達なのかね?
「あたしはラクィーサ。これからよろしくたのむよ」
「儂はムジィーカ。これからよろしくたのむぞい」
取りあえず紹介はこんな感じでいいかな?ってなんか首回りに褐色の太ももきたー!
「ロカさん?」
「おお、高い! これはこれで楽しいぞ親分」
なんか後頭部に布越しだけど、しゃわしゃわっとしたものが……まさか!?
「あのロカさん。つかぬことをお伺いしますが、下着というものをご存知でしょうか?」
「なんのことだぞ?」
だあああああああ。
紅さんに続いてはいてないのかよ!ってことは、あの薄い生地のホットパンツみたいな服の下は素肌。つまりこのしゃわしゃわは……。
うん、あれだな、これは考えたら負けだな。無心無心む、し。
「おっと危ないぞ」
むしぃーーんっ。
なんでさらにガッチリ締め付けてくるんですか?しゃわしゃわ通り越して少し柔らかいんですけど!
「危うく落ちるところだったぞ」
取りあえず、ロカさんを下に下ろして。
「む? 大将、どうしたんだぞ」
こんなもん無理だ無理!この状況で冷静でいられるほど、俺は人間できてねぇっよ!
「いえ、少々野暮用を思い出しまして。少々席を外します」
もう、今日は店じまい。ログアウトだ、ログアウト! このゲームなんなんだよ、リアルすぎるだろ!
「俺は破廉恥なお「親分、そっちは危ないぞ!」」
は?え?しまっ湖。しかも女神像から落ちる水が。
「おばばばぼぼぼぼヴぇぇぽぽぽ」
「おやぶーん!」




