Sweet and sour
短編形式のシリーズ作品にしようかなと考えています!短編胸キュンをお楽しみください!
講義の教室に入るときとはまるで別人のような弾む足取りで私は廊下を歩く。そしてその教室を前に少し上がる口角を押さえつけながらそのドアノブを回す。
「こんにちはっ!」
「…うわ、」
「ねえ、うわって言ったの聞こえてますよ?!ねえ。」
「何か来たし…。」
「おい?おい?聞こえてんぞ?おい?」
「んだよ、やかましいなあ。」
「やかましくさせてんの誰だっつの。」
そんな言葉を言いながら、先輩の目の前の椅子に腰掛けて、いつもと違う部室を見回す。
「あれ?先輩一人ですか?」
「んあー、他の奴は皆購買。」
「あ、なるほど。」
二人きりの部室。沈黙になり、携帯をいじる先輩とそれを見つめる私の間を、時計の音が進んでいく。聞きたいけど、聞きにくい。時計の音が心音と重なり始めた。大きく息を吸う。
「あの…先輩いつになったら連絡先教えてくれるんですかー?」
「…気が向くまで教えない。」
「何でなん?!」
「別に?」
「教えてくださいよ。」
「んー?やだー!」
そう言う先輩の顔は明らかに笑っている。でも、こっちだってこんなに引き延ばされたのにさらにこのまま引き下がるわけにはいかないのだ。
「ほらほらーQRコードですよー!ほらほらー!」
自らのQRコードを先輩の前に突き出してみる。
「ずっとそうしてな。追加しないよー。」
「ねえ、何でですか?」
先輩は答えることなく携帯をいじっている。最初は楽しんでいたこのやりとりもここまで回数を重ねるとシンプルに傷つくようになってくる。何で交換してくれないの?何で?とはそれ以上聞けず。そうこうしているうちにドアノブが回って、買い物に行っていた部員が帰ってきた。
「あ、やっほー!あ、はいお使いしてきたよ。」
「…お疲れ様です。」
「お、さんきゅ。」
お使いを頼んでいたらしく先輩がソファから立ち上がる。もう無理か。諦めよう。大人しくしておこう。最初の勢いは消え、泣きそうになりながら携帯を自分の方向に戻そうとしたとき、携帯のバイブが鳴った。
-「先輩」がQRコードからあなたを友達に追加しました
「…え?」
ふと顔を上げると、携帯を掲げていた先輩と目が合う。
「気、向いたから。」
そう言って少し口角を上げてにやつきながら先輩は立ち去る。部員が買い物から帰ってくるまでのたった3分。好きな人と過ごすには短すぎる3分。-でも、だけど、されど3分。好きな人を諦められなくなるには十分すぎる3分。




