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第2話 籠の中に住む小鳥たち

「何だか面白そうなお話をしているわね。ねぇ朱莉さんはこの噂話についてどう思う?」

 雅さんは空いたカップに紅茶を注ぎ回りながらも興味を示してしまった様子。

「私はその……生徒会長の立場ですので。あまりそういったお話には興味ありませんわね。それに生徒の間でそうのような噂が囁かれているのも正直あまり……」

 体良(ていよ)く断りを入れたつもりだったが、雅さんは私の言葉を逆手に取るようにこんな言葉を口にした。


「だからこそ……ではありませんの? 生徒会長である朱莉さんが見事その噂の真相を暴くことによって、生徒の間にある不安と噂話を払拭する。それが()いては生徒のためになるんじゃないかしら?」

「それは……まぁ。確かに……」

 雅さんのその説得により、私は心が揺れ動いてしまっていたのだ。


 このような退屈で何事もない、そして不自由な学園生活はまるで監獄……いいえ、まるで『鳥籠(とりかご)』に閉じ込められた学園生活。空を自由に飛ぶことも許されずに一生をその籠の中だけで過ごす。私達はその小鳥たtのように卒業までの間ずっとそれが続くの。いいえ、卒業してからもそれは続いてしまうのよ。

挿絵(By みてみん)

 きっとこの場にいるみんな同じ気持ちを抱いているわね。その証拠に周りにいる子達は私が決断の言葉を口にすることを、今か今かと待ち望んでいる様子に見えるわ。


 私はその様子を見ながら頷くと、生徒会長なりの言葉を口にする。

「そうね。雅さんの言うとおりだわ。生徒の不安を取り除くのも生徒会長の仕事だものね。私もその意見に賛同させていただくわね」

『わあぁぁぁ♪』

 っと色めく歓声をあげる子を窘めるように言葉を続けた。


「でも危ないことは絶対にダメよ。それだけは最低限守ると約束してくれるかしら?」

「もちろん! ね? みなさんもそれでよろしいわね?」

『ええ』『私達で七不思議を解き明かしましょうね♪』『楽しみですわね♪』

 娯楽に乏しい彼女達はこうしたイベントを心底欲していた様子。


「こほんっ。それで、具体的にはどのようなモノなのかしら? この学園の七不思議というモノは……」

 私は話の続きを促すため軽く咳払いをする。

「ああ、そうね。それが分からないと事件を解決できないものね。具体的にその内容を知ってる方はいるのかしらね?」

 雅さんは私の代わりにみんなに知っていることを聞いてくれる。こうゆう時気心知れてる彼女のフォローは役に立つ。


「私が聞いたお話では、確か『講堂の歌姫』『カトレアの涙』『午前2時の合わせ鏡』の3つしか知りませんわね」

 私の隣にいるショートの女の子が意気揚々と興奮気味にそう語っていた。そこから次々に隣また隣へとを知っている七不思議についてを口にしてゆく。


「私は『アリシア先生の年齢』とあとの2つは先程の方と同じですわね。お役に立てなくてごめんなさいね」

「他にはそうですわね。『開かずの教室』それと『赤いプールの謎』くらいでしょうかね? 他に知ってる方はいらっしゃいますでしょうか?」

 最後に雅さんの隣にいる子がそうゆうとみんな『他には知らない』といった風に首を横に振っていた。


『スーッ……カチャ』

「み、みなさんお詳しいのね……」

 私はその間冷静を装いつつ、紅茶を飲み続けることでその話題を回避することに徹していた。だが、内心では顔をひきつらせながらみんなの話に耳を傾けていたのだ。正直こういった噂話にはまったく興味がなく、話題性にも乏しかったのだ。そしてそこで私は気づいてしまった。


「変ね。七不思議と言うわりに……6つ(・・)しかないの?」

「あら朱莉さんもそれにお気づきになりました? 私もちょうどそれを口にしようと思っていたの」

 雅さんは私の言葉に同調するように言葉を続ける。


「変よね。『学園七不思議』という前提なのにみんな6つ目までしか知らない。もし7つ目があるとするなら、それは……」

 雅さんが続く言葉を濁すと同時に私はカップを置き、その続きを口にする。


『カチャリッ』

「それはその七不思議すべてを暴き、理由なく学園を去る女子生徒……でしょうね。きっと」

 私は恐れることなくその言葉を口にした。正直不安もあったけれども、それだけは知っていたのだ。


 ここ最近何故か5月を過ぎた頃になると理由なく学園を去る生徒が毎年いたのだ。今までは単なる偶然と決め付けてはいたが、もしや今上がった七不思議の話がそこに結びつく話ではないか? っと思い口を挟んだのだ。

 みんな私がその事を口にすると緊張な面持ちで恋する乙女のような視線を私と雅さんに向けている。


「そうね。朱莉さんが今仰ったその可能性も十二分にあるでしょうね。まずは学園を回りながら、1つ1つ解決していきませんこと? ですが、今日は時間もありませんから明日の放課後……ということでよろしいでしょうか?」

「「はい!」」

 雅さんのその言葉を締め括りにその日のお茶会はお開きとなった。



第3話へつづく

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