表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から勇者を呼んだら、とんでもない迷惑集団が来た件(前編)  作者: 笹川 慶介
列国首都奪還・不死鳥の謀略
71/115

8話

 






≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


 時は遡り、湯垣と北郷が他の勇者たちには一言も告げずにネスティアント帝国を立ちソラメク王国に向かう為にリズ皇女らをともない帝都出発した翌日のこと。

 ネスティアント帝国、帝都。

 鬼崎たち富山班の他の勇者たちが湯垣と北郷が彼らには何も告げず、リズらとともに帝都を出発していたことを知ったのは、2人が出発した翌日のことだった。

 昨日から湯垣と北郷の姿が見えなかったことに不信感を抱いた鬼崎が、近衛大隊『オーディシャス』の大隊長であるユークリウスを問い詰めたことで、彼の口から鬼崎たちに湯垣と北郷がソラメク王国に向かったことが判明した。



 ユークリウスの話によると、どうやら湯垣と北郷の他に、2人の旅にはネスティアント帝国第一皇女であり次期皇帝でもあるリズ皇女を始め、財務大臣のアルブレヒト、リズの元護衛である一週間前のソラメク王国との西方国境騒動にて救出できた女性兵士のアンネローゼ、リズの専属の護衛を務める双子の近衛騎士、さらには近衛二個中隊など多くの同行者がいるという。

 ユークリウス自身、同行した近衛中隊の1つが所属している『ヴァリアント』大隊の大隊長のクリューゲルという人から聞いた話なので、詳細については知らないという。

 ただし、クリューゲルから聞いた話によると、リズにソラメク王国に向かうということを伝えた北郷は、他の勇者には話さないでおいて欲しいと伝えたらしい。


「何それ…」


 ユークリウスの話を聞いた私は、溜息を零した。

 いろいろと言いたいことや心配なこと、不安なこと、腹が立つこと、そう言ったものが複雑に絡み合って湧き上がった結果、疲れたため息が出てしまった。

 中間管理職の中年男性が零すようなため息である。20歳にもなっていない女性が出していいため息ではない。少なくとも、今の倍は年を重ねなければ似合わないため息だった。

 正直、自分でもこぼしてから思ってしまう。

 この世界に来る前、日本にいた頃から同級生には精神年齢が高いとか言われることがあったけど、ひょっとして私ってオヤジくさいのだろうか?

 だとしたらかなりショックである。

 思わずまたこぼれそうになったため息を飲み込む。


「だ、大丈夫ですか…?」


 ユークリウスが私のため息をみて、心配そうに声をかけてきた。

 それに対して、私は作り笑いを浮かべて大丈夫だと答える。


「ごめんなさい。大丈夫です。ちょっと、いろいろと複雑なものがこみ上げただけですから」


「そうですか…」


 ユークリウスは私の作り笑いを見破っているのだろう。

 口では私の気持ちを察して深くはつっこまないでくれたものの、明らかに私が大丈夫だと思っていない様子である。


 実際、私の心中はかなりごちゃごちゃになっていた。

 ユークリウスの話を聞いて、湯垣と北郷の旅と、そして2人が私たちに何も言わずに出て行ったことに対して、いろいろと思うことがある。


 まず、湯垣と北郷という組み合わせから、いろいろな不安を感じてしまう。

 皇宮でも、西方国境騒動でも、2人はいい意味でも悪い意味でも活躍していたからだ。

 特に北郷の出す物的被害は、堅物な性格で知られる彼が出すとは思えないほどに大きなものばかりだからだ。

 この世界に来てからというもの、初日で喧嘩の余波で建物を一棟丸ごと破壊するし、皇宮内では手当たり次第に色々なものを壊したし、西方国境騒動の際には城塞都市を半壊させ、障壁を複数箇所壊し、子爵領は焼け野原にしてしまうし、挙句山を削り取って地形を変えるということまでやってのけた。

 湯垣が付いているとはいえ、彼の場合は起きそうなトラブルの火種を消しにかかるというよりも、面白そうだったらむしろ焚き付けて散々に煽って被害を拡大させてからフォローに入る。日本にいた頃には何事もないと思っていたのだが、この世界に来てからというものトラブルが起きれば解決こそすれども余計な被害を出している破壊魔の北郷と、その来て欲しくないトラブルをむしろ探して引き込んでくる煽り魔の湯垣が揃っている旅を放置してしまっているとなると、何が起こるのか、どれだけの被害が出てしまうのか、考えたくなかった。

 人的被害に関しては治癒師の湯垣がいるし、北郷もそれに関しては細心の注意を払っているはずだから、きっと出ることはないだろうけど、それでも不安はぬぐえなかった。


 そして、その出るかもしれない多大な被害に対する不安の他に、私には2人がなぜ仲間であるはずの勇者には何も言わずに、ネスティアント帝国には旅に出ることを伝えてリズの同行までさせたのかという疑問が浮かんだ。

 ネスティアント帝国になんらかの事情があって帝都を離れることを伝えるのは、まだわかる。私たちはネスティアント帝国に召喚された異世界の勇者であり、私たちの班が曖昧な返答の引き延しで中途半端な立ち位置にあるとはいえ、ネスティアント帝国にお世話になっているのは事実だ。どこかに遠出をするようなことがあるなら、この国に許可を得なければならない。

 北郷とリズは恋人同士である。一応ネスティアント帝国や私たち他の勇者に対しては隠していることになっているけど、すごく分かりやすい。リズの実父であるネスティアント帝国の現皇帝フリードリヒ二世も公式には知らないということにしているが、半ば公認していると聞く。

 フリードリヒ二世と私たち協力を確約していない勇者たちが接触する機会はほとんどないので、北郷が報告に行ったのはリズだったのだろう。その際にリズが同行を申し出て、ならば護衛がいるだろうと近衛が声をあげて、ネスティアント帝国の皇族が隣国に行くならば理由があるだろうとアルブレヒトが手を回して…と肥大化していく面々に、生徒会に対する不当な訴えはバッサリを切り捨てるくせにこういったときの押しにはめっぽう弱い北郷が根負けして同行することになったというならばリズが同行することになったことは分かる。

 湯垣も面白くなりそうなら何でもいいと思ったのかもしれない。

 でも、それならば何故、仲間であるはずの私達には何も言わなかったのか。

 それが納得できなかった。


 日本にいた頃から、湯垣はフラリと消えては単独行動をすることがよくあった。かなり気まぐれなため、どこで何をしているのかわからず、過去を話すこともないし、素顔も絶対に見せてくれないし、何か理由があったのか教師たちも彼の能面には生成でふざけすぎた去年の冬の出来事を除いてとやかく言うことはなかった。そのため、彼は謎が多い。

 彼は人を助けて人に頼られることはあっても、自分のことで誰かを頼ることはしない。はたから見れば誤解を招くふざけているようにしか見えない態度とその能面が塗りつぶすから目立たないけど、湯垣は1人でどんな難題であれ何もかも飄々とこなしてしまう高スペックの持ち主だ。

 湯垣の場合は、特に危険なことに関しては誰かを巻き込むようなことはしない。1人で勝手に出て行って、1人で勝手に解決して、その手柄を誰かになすりつけたり自ら評価を落としたりしてうやむやにして終わらせる。正当な評価を受けたがらないのは彼の性格の1つと言える。


 今回は北郷に加えてリズたちが同行している。それをかんがえると、この件についての発端は北郷の方だろう。


 北郷の場合は、湯垣とは違い誰かに協力を求めることはある。

 堅物と言われる北郷の性格は、常に自分に厳しくあれというものだ。勉学も生徒会の仕事も真面目に、完璧に、そして早めに終わらせる。妥協をせず、何事も完璧な成果をあげようと真面目に取り組む。そういう人である。

 だが、自分に厳しくあれど、特に生徒会の仕事など遅れたり失敗しては誰かに迷惑がかかるようなことに関して、自身のプライドよりも成果を追求する北郷は、他人の手を借りることを惜しむことはしなかった。だから完璧な成果をあげてみせるのである。

 今回、北郷は湯垣を頼ったのだろう。湯垣は何をやらせてもうまくこなしてみせるし、何より人の頼み事を拒まないので、北郷も湯垣をよく頼りにする。


 そういう意味では仲間も頼ったのかもしれない。

 それでも、いきなり平和だった日本から異世界に連れてこられて、そんな不安でいっぱいな中で数少ない同じ日本から来たクラスメイトである私たちには何も言わずに出て行ったことが、まるで頼りにされていない、信用されていないと言われているようで、寂しく感じた。


 けれども、湯垣が信用されて、私が信用されないことに関しては、納得できる部分もある。

 一週間前の西方国境騒動。あれが発端だった。

 この世界に来る前。この世界に来たばかりの頃。それまでは、私たちは平和な日本という国に通う争いごととは無縁の学生でしかなかった。

 それが大きく変化したのが、西方国境騒動の一件である。

 あの事件の折に、平和な国の学生だった私たちの心情に変化が出た。


 あの時、殺し合いとは無縁だった生活をしてきた私たちは、初めて殺し合いというものに、勇者として召喚されたという事実に直面した。

 ネット小説などの架空の物語として異世界に召喚された日本の学生たちがチート能力を授かって魔王と戦う英雄譚となる。殺し合いの事実に直面してなかったから、勇者補正の恩恵で人族をはるかに超える力を持っていたから、私にはそんな甘い考えがあったのだと思う。

 黒い甲冑に身を包み、空を飛んで襲来してきた魔族。

 あの魔族に襲われた時、私は何もできなかった。

 目の前でアキちゃんが殺されそうになったのに。

 目の前でアキちゃんをかばった海藤くんが瀕死の重傷を負ったのに。

 その危険な魔族がその場から立ち去ったのに。

 …私は、その時何もできなかった。


 海藤くんのようにアキちゃんを守ることもできなかった。

 湯垣くんのように獣賞を追った海藤くんを助けることもできなかった。

 北郷くんのように迷いなく魔族を追って立ち向かうこともできなかった。


 あの騒動の時、私は城塞都市に突入して行ったみんなが命がけで戦っている中で、ずっと装甲車のところにいて動けなかったのだ。

 みんなには装甲車の中に残した2人を守ってくれたし、アンネローゼさんを助けたから活躍してくれたと言われたけど、私はあの時何もできなかった。装甲車には湯垣が防護魔法を展開して守ってくれていた。私は、その中に怪我人である海藤とショックで動かなかった富山と一緒に守られていたにすぎない。


 対して、城塞都市に突入して行った3人は、昨日までは争いと無縁だったのに、命をかけて魔族に立ち向かっていった。

 何もできなかった私と違い、北郷も湯垣も、あの時に殺し合いを経験している。


 今回の旅に危険が伴う可能性があるとすれば、北郷が私に頼らず湯垣を頼りにしたのは、西方国境騒動で何もできなかった私を信用していないから、だと思う。

 そう、思ってしまう。

 あの時、何もできなかったのは私自身とはいえ、信用されていないことが私の心には重く響いていた。

 信用されていないというのは、ひょっとしたら私の思い過ごしかもしれない。けれども、リズ皇女の同行は許したのに、私には一言も伝えなかった。誰かに、特に恋人に危険が及ぶような可能性がある中で、成果はもちろんだが安全を優先する北郷が押しに弱いとはいえ認めるとは思えない。

 なら、やはり私は信用されていないのだろう。

 それに湯垣も賛同しているということを思うと、落ち込んでしまう。

 私の思い過ごしかもしれないのに、嫌な方向に想像が膨らんでいく。


「はあ…」


 また、疲れたため息がこぼれてしまった。

 ユークリウスの表情まで曇ってしまう。


「…取り敢えず、話してみて下さい。何ができるかわかりませんが、人に聞いてもらうだけでも違うと思いますので」


「…すみません」


 結局、私は見かねたユークリウスに悩みを打ち明けることになった。


 湯垣がせっかく持ち上げてくれた英雄譚を汚すことになったけど、話を聞いてもらう以上、私は胸の内のことや西方国境騒動では結局何もできなかったことなどを話した。

 私が話している間、ユークリウスは一言も遮ることなく、ただ黙って聞いてくれていた。

 誰かに悩みを打ち開けるのは、例え何も変わらないかもしれなくても、ただ聞いてもらえるだけで気分が楽になっていくのを感じた。


 そして、そんなユークリウスの姿が、とある同級生の姿と重なる。

 その外見は優男のユークリウスと違い、仮面で顔を隠している変態だったけど。どちらかというと悩みを抱え込みがちな私が、よく悩み事や愚痴を聞いてもらっていた相手だった。

 彼に初めて悩みを聞いてもらった時も、確かこんな風に2人きりで聞いてもらった。


「ヨホホホホ。何やらお困りのようですね〜。自分でよければ話を聞きましょう。悩みというのは1人で抱え込むよりも、誰かに愚痴をこぼしてみれば意外と解決の糸口が見つかるかもしれませんよ?」


 それは、去年の夏頃にモデルをやらないかなどという勧誘から始まり、しつこくつきまとうのがエスカレートしてストーカーとなっていた人に悩んでいた頃、偶然街中で会った湯垣にそう言われて、私は学校やクラスメイトたちに相談できなかったことを相談した。

 夏季休業中だったけど、湯垣は今のユークリウスのように一言も口を挟むことなく私の悩みを聞いてくれた。

 親に心配されたくない、学校に知られて問題になりたくない、クラスメイトたちに被害が行ってほしくない。だから1人で悩んでいたけど、湯垣には打ち開けた。

 話を聞いた湯垣は、そのあと私に協力もしてくれた。


「なるほど、そんな事が…。では、第三者の立場として自分が説得してみましょう。ヨホホホホ。ストーカーとはいえ鬼崎さんに脅迫や誘拐といった犯罪行為に走っていないとすれば、まだ話を聞いてくれる余地はあると思いますので」


 そして湯垣が説得に向かったという翌日から、住所を突き止め、秒刻みで携帯に着信を鳴らしてきて、時には私の下駄箱に手紙どころか鳩や猫の死体を入れることもあったストーカーは、まるで存在が消えたようにめっきり接触してくることが無くなった。

 あのことがあってから、私は湯垣にはよく悩みなどを聞いてもらうようになった。


 ユークリウスは湯垣とは違う。今の私の悩みを打ち開けても、さすがに解決してくれることはないだろう。

 それでも、聞いてもらえただけで胸のつかえが取れたような気がした。


「…ありがとうございます。なんだか、スッキリしました」


「そうですか。それはよかった」


 先ほどのつくり笑いとは違う、感謝の笑みが浮かぶ。

 それを見たユークリウスも大丈夫そうだと判断してくれたようだ。

 そして、長々と話してしまった私は席を立つ。


「どちらへ?」


 軽くなった気分と足取りとなった私の背中に、ユークリウスの声がかかる。

 それに対して、私は振り向いてこう答えた。


「私も、止まってばかりはいられないと思いまして」


 湯垣と北郷は、彼らの役目がある。だから旅に出たのだろう。

 私たちには何も言わずに行ったことは悔しいけど、それに対して信頼されていないとうじうじしていては余計に信用してもらえなくなる。

 なら、私は私でできることをすればいい。

 成果を重視する北郷なら、悩みはするけど立ち止まることはないと思う。

 そもそも悩みを抱えるように見えない湯垣なら、頼られなくてもやるべきことを見つけて勝手に動き回ると思う。

 だから、私も立ち止まることなく、やれることをやろうと思った。

 ユークリウスと別れた私は、ネスティアント帝国内務大臣であるヒッペルのもとに向かった。


 私が私なりに考えてできること。

 それは、ソラメク王国のように魔族に対抗するための人族国家の同盟の構築だった。

 もちろん、一朝一夕でできることではない。

 それでも、勇者として諸国に接触して、同盟に対する最初の一歩につなげられればそれでいい。

 西方国境騒動で、魔族に対する脅威の認識が東方大陸の国々では改まっているという。

 これを機に、人族同士で戦争をするのではなく、手を携えて魔族という共通の敵と戦えるようにしたい。人族同士で争っている時ではない。

 私は、西方国境騒動を直に見て解決に当たった1人として、ネスティアント帝国の使節となることを決めた。

 まずは、国境を接する国から始めていきたい。

 西方のソラメク王国はすでに同盟関係を構築しているし、北のジカートリヒッツ社会主義共和国連邦は私たちとは別の勇者が召喚されている国だ。ネスティアント帝国同様に魔族大陸を隔てる海洋に接しているため、魔族の脅威を晒される国でもあるから接触すればすぐに話を聞いてもらえるだろう。

 私が最初の目的地に選んだ国は、ネスティアント帝国とソラメク王国、西方国境騒動の舞台となった2つの国と国境を接する南の群島国家であるアウシュビッツ群島列国である。

 私の話を聞いてくれたヒッペルは、外務大臣であるレーダーとも相談して、すぐに皇帝フリードリヒ二世に掛け合ってくれた。

 フリードリヒ二世もこの件は承諾してくれた。

 それどころか、方面軍総司令のヒンデンブルクに働きかけ、ソラメク王国との同盟でひとまず落ち着いている西部方面軍の一部を私の護衛としてつけてくれた上に、皇帝直筆の同盟の親書を書いてくれた。同盟交渉の大きな味方である。

 外務大臣であるレーダーも、私の旅に同行してくれることになった。外交のプロがついてくれれば、私もとても心強い。

 西部方面軍からは、西部方面軍司令官であるラインハルトをはじめとする帝国軍が付いてきてくれることになった。ラインハルトは皇宮でも何度か話したこともあり、それなりの親交もある。少々ナンパな性格だけど、腕も頭も頼りになる。

 また、南部方面軍のデーニッツがアウシュビッツ群島列国にて護衛の傭兵海軍を雇ってくれた。

 傭兵海軍は4隻の潜航戦艦で、その指揮官はアイゼンハワーという。

 アウシュビッツ群島列国領のパルミノ島という島で合流予定となっている。雇い主としてデーニッツも南部方面軍とともにパルミノ島まで同行してくれるという。

 そして、航路についての足は村上が用意してくれた。

 村上から渡された艦名のメモには『伊号四〇二』と記してあったけど、艦名を見るまでもなくそれはすぐに見つかった。

 何しろ巨大な潜水艦である。一目で分かった。

 ネスティアント帝国の潜航戦艦とは明らかに形状が違う。


「えらく巨大な軍艦だな…」


 特型潜水艦、伊号四〇二を見上げて、ラインハルトが驚嘆の息を漏らす。

 確かに、私も初めて見るけどネスティアント帝国の艦艇と比べてもなお巨大だ。私はその方面には詳しくないけど、村上の話だと第二次世界大戦において最大の大きさを誇った潜水艦であり、攻撃機を搭載できる事から潜水空母とまで言われていたというらしい。

 丁寧にも、使えないのになぜかその攻撃機まで搭載されていた。しかも3機。

 村上の趣味はよくわからないけど、戦争に行くわけじゃないのだから、あの見るからに戦うための飛行機に関しては要らないと思う。

 しかし用意してもらった手前、文句は言えない。

 一応、魔導剣士の職種である私は魔力を動力や制御に用いる乗物は操作できる。

 これは厳密には村上が召喚した魔力により動き、魔力によって制御される伊号四〇二の贋作だというので、私でも操舵が可能だ。

 当然『晴嵐』というらしい飛行機も同様である。使わないけど。


 出航準備が整った。

 艦橋にて、舵を握り魔力を込める。

 隣には、ラインハルトが立っている。


「行こうか」


 私の言葉に頷いたラインハルトが、大きな声を上げた。


「出航だ!」


 こうして、私たちは南方アウシュビッツ群島列国に向けて出航した。

 南に広がる海と、その海峡の先にある南方大陸で何が起きているのかを知る由もなく。

伊号四百型潜水艦と、大和型戦艦は帝国海軍においては極秘の存在とされており、当時の日本国民にも認知されていなかったそうです。

しかし、伊号四百型潜水艦…調べてみると駆逐艦どころか軽巡洋艦を上回る排水量を持ち、当時のアメリカ軍の潜水艦を大きく上回る全長122メートルの巨体を持ち、その上地球を一周半補給無しで進める航行性能、1分程度で潜航できる潜航能力、その性能も巨体に似合わず高いです。調べてみると潜水艦として他と明らかに一線を画すすごい性能を持つ潜水艦ですね…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ