表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

捌話 《格差》

『……合同授業? 』


 翌日の1限目、エロースは授業を開始する前にそう言った。


「そうだよ〜! この後の2限目と3限目は〜、1年D組との実技の合同授業をやりま〜す! パチパチパチパチ〜! 」


 教室でそう拍手しているのは、エロースただ一人だけだ。

 それ以前にE組の生徒達はその発表に、只々呆然としている。


「先生、それだとD組の生徒との実力差を見せつけられるだけじゃないんですか? 」

「そうだよ先生! D組の奴ら、デカい顔して俺達を見下すに決まってる! 」


 クラスの生徒から非難の声が飛ぶ。

 悠斗は賛同しなかったが、それと同時に反対の声も出せなかった。

 しかしそんな中、エロースを庇う者がいた。


「お前らそんなんで良いのかよ!? D組の奴ら見返すチャンスじゃねーか!

 ……最初っから諦めてたんじゃ、一生掛かったって上には上れないと俺は思うけどな 」

「イニシエール、あんた…… 」


 そう立ち上がったのはイニシエールだった。熱い言葉でクラスを盛り立てようとする。

 しかし、クラスの生徒全員が格好付け、決めポーズを取るイニシエールに向け声を揃えて言った。


『……だっさ!! 』

「ええっ!? 」


 ショックを受けたイニシエールは、そのまま固まり、膝から崩れ落ちた……



 *********************



 予定通り、2限目と3限目の実技の実技をD組と合同で行うことになった。

 2クラスの人数では普段の実習室が狭いため、校舎の外の高原で授業を行うことにした。


「何でウチらがE組の落ちこぼれなんかと合同授業なんてしなくちゃいけないのよ。

 ……あーあ、かったるーい 」


 授業前、エロースもD組の担任教師もいない状態で、やはりD組の生徒達はE組を見下している。

 D組のリーダー格の様である、1人の女が頭の後ろで手を組み芝生に寝そべった。


「おい悠斗、あいつだよ。D組のリーダー、No.62のミランダ。

 実力だけならB組レベルだって噂だぜ 」


 悠斗の耳元でイニシエールが囁く。

 そして、

「ただやる気が無いんだとよ。たちも悪いらしい 」

 と、付け加えた。


「おい、テメーらD組だからって調子乗ってんじゃねーぞ? 」


 するとただ1人、そのミランダに立ち向かう者がいた。

 教室でシェイドに蹴り飛ばされた、肥満黒人のハルメドである。ハルメドはまだ強気な性格を貫き通している。

 D組の生徒達は、ミランダに立ち向かうハルメドの姿に嘲笑している。


「誰よあんた? ウチ、むさ苦しい男大っ嫌いなの。あっち行ってくれる? 」

「あん? 何でテメーの言う事なんて聞かなきゃならねーんだよ! 」


 そう言って、ハルメドは突然ミランダに殴りかかった。

 しかし突然、

「ぐ、ぐあぁぁぁぁ!! 」

 殴りかかった拳を抑えてハルメドが倒れたのだ。


「あれがアイツの能力か。なるほど、確かにB組レベルってのは間違い無さそうだな 」


 ミランダは確かにイニシエールの言った通り、レベルの高い能力を保持していた。

 恐らく今のE組の生徒では、誰一人撃ち破ることは出来ないだろう。


「どう? 分かったかしら?

 ……これがウチの能力、そしてD組とE組の実力差よ 」


 全身鋼鉄化したミランダがハルメドの顔面を蹴り飛ばす。ミシッと骨の鈍い音が聞こえた。

 ミランダの足元は、鋼鉄化したことによって急増した体重で、地面が少しえぐれている。

 その能力値の差を誰もが感じたその時、漸くエロースとD組の中年太りの担任教師が到着した。


「D組の皆、集まっているな。

 ……ん? 君はどうしたのかね? 」


 D組の担任教師は、足元で蹲っているハルメドの姿に気付いた。


「すみませーん先生ー! 何か私ー、突然その人に殴りかけられて、だから能力使ったら倒しちゃいましたー! 」


 ミランダは手のひらを返す様に、今までとは違い、D組の担任教師に甘えた態度を示した。

 胸中では嘲笑している。しかしそれが分かるのは生徒達だけだった。


「そうか。それなら仕方が無いな。

 ……ほら、いつまでもそこで寝ているな邪魔くさい。あっち行け 」


 突然その教師は有ろう事か、ハルメドの腹を蹴り上げ、吹っ飛ばしたのだ。

 これにはエロースも黙ってはいられなかった。


「モロス先生〜、いくら何でもやり過ぎてませんか〜? 」


 エロースはいつもの笑顔を見せているが、その胸中は底知れない怒りに満ちている。悠斗はそれを瞬時に察し、少しエロースの本性を知った。


「まあまあ先生〜、授業始めましょー! 折角E組さんと一緒に授業出来るんですからー! 」


 ミランダはD組担任、定業神モロスには良い顔して媚びを売っているのだ。つくづく性悪である。



 授業が始まると、基礎の護身術までは大していつもと変わらなかった。能力者相手に本当に役に立つのか分からないが、授業である以上受けなければならない。

 イニシエールはいつも護身術の練習の時ふざけていた。そして、毎度エロースの代わりに、ニーナがイニシエールの頭を叩くのだ。


「じゃあ次は、D組の生徒とE組の生徒全員で、こいつを倒してくれ 」


 モロスが指を鳴らすと、突然悠斗達の目の前に、1匹の赤色と金色に輝く翼を持った、美しい姿形の巨鳥が現れた。その美しさは誰もが魅力される。

 体長は5mにも及び、くちばしや爪は鋭く伸びている。

 嘴は鶏、額は燕、頸は蛇、背は亀、尾は魚である。

 誰もが見たことの無い、幻とも思える姿形をしている。


 本当にこんな巨大な鳥を相手に戦わなければならないのか?


「神選高校の授業では命を落とすこともある。それはお前達も勿論覚悟の上だろう?

 今日の授業の課題は、この巨鳥の討伐だ。それが出来なければお前達が学校に残る必要は無い。

 ……エロース先生 」

「は〜い! それじゃあ皆〜、頑張ってね〜! 」


 エロースは返事をすると、天に向かい投げキッスをした。

 すると、薄白い膜が張られた。恐らく外に被害を出さない為の結界の様な物だろう。

 いつの間にか結界の中にモロスとエロースの姿は無くなっていた……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ