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陸話 《不合理な規則》

 1限目のクラス紹介を終え、2限目の学校説明に入った。


 配られた分厚い冊子を前方の席に座るイニシエールから受け取る。

 学校の規則や設備、行事などが細かく記されている。


 エロースに指示された生徒は順に、その冊子の重要な部分を読み上げて行く。

 そして、悠斗も読むことになった。


「風間君は〜、学校規則のページを読んでくれるかな〜! 」


 悠斗は少々緊張気味に椅子から立ち上がり、冊子の学校規則のページを読み始めた。


「学校規則十ヶ条。

 の一、生徒間での戦闘の際は、正式な審判を置き、正しく行うものとする。

 其の二、戦争時には教員の指示に従うこと。

 其の三、戦争時に死亡した場合、その生徒の存在を無かったものとする。

 其の四、現実世界に戻る場合、必ず教員の許可を得ること。

 其の五、生徒会長は必ず特選クラスの生徒が請け負うこと。

 其の六、【魔神派】に通じた者は、何人たりとも罰せられる。

 其の七、神選高校を中退若しくは転校する場合、在校時の記憶は全て消去される。

 其の八、座学、実技共に試験の成績不良者は、長期休業期間中に行われる合宿に強制参加しなければならない。

 其の九、自分より上の序列の生徒を戦闘で破った際には、上の序列の生徒と序列が入れ替わる 」


 そして十ヶ条目、悠斗は読み上げる直前に凍る様に固まった。


「其の十、1年後序列No.101以下の生徒は、強制的に退学処分とする 」


 それを読み上げると、ニーナ以外のクラス全員が凍り付いた。


「ごめんね〜! 理事長と校長の意向で決まっちゃったんだよ〜!

 だけど、皆も頑張れば必ずNo.100に入れるから、これから頑張って行こ〜ね〜! 」


 エロースは必死にクラスを盛り上げようとするが、クラスは重い雰囲気になっている。

 しかし、

「下らないわ。風間悠斗、あなたが序列を上げない限り、私も上げることは出来ないわ。

 私はいつでも何位にでもなってあげるから、あなたは早いとこ序列を上げてよね 」

 と、クラス全員に聞こえる声で、一つ後ろの席からニーナが言った。


「そ、そうだよ〜! 皆もニーナちゃんを見習って、一緒に頑張ろ〜ね〜! 」



 *********************



 3限目を終えると、昼休みの時間となった。

 午後にもう2限残っているため、今は昼食をきちんと摂るようにイニシエールと話し合った。

 必然的にニーナも一歩下がった位置を保ち、一緒に食堂に向かっている。


 食堂に向かう最中、イニシエールが何かに気付いた。

 廊下の壁にある掲示板のチラシが目に入った様だ。


「おい悠斗、見ろよ。

 校外警備員のアルバイト募集だってよ。俺、ここの学費で殆ど貯金が無くなっちまったんだよなー。

 悠斗はどうよ? 俺はやろっかなーって考えてるんだけど 」

「僕もお金は全く持ってないんだ。だから僕もやるよ! 一緒に担当の先生に応募しに行こうよ! 」


 話が簡単に決まった2人だったが、

「いや、君達はダメだ 」

 と、担当の先生に即座に断られてしまった。


「え? 何でっすか!? だってここに“応募資格不要”って書いてあるじゃないっすか!? 」

「あーそれなんだが、校則でE組の生徒はアルバイトが出来ないことになっている。あの冊子には書いていないが、E組の生徒は、アルバイトしている時間も勉強と訓練をしろ、という意味だろうな 」


 あしらわれた2人は、悄気しょげながら職員室を出た。


「どうだった? ……って、聞くまでもないわね。

 ……やはりここは差別化の強い学校の様ね。任務が無ければ私、真っ先に校長を倒しに向かっているわ 」


 職員室の前で待っていたニーナが2人の様子を見て察した。


「まずはD組以上に上がるしか無いか〜。先は長そうだけどなぁ 」


 イニシエールは頭の後ろに手を組み、弱音を吐く。


「お主達、アルバイトを探しておるそうじゃな? 」


 すると、背後から突然ヒュプノスが現れ、イニシエールの肩に手を置いた。

 それに驚いたイニシエールは、尻餅をついている。


「こ、校長先生いつの間に!?

 ……確かにアルバイトは探しているんですけど、E組だからって断られちゃって…… 」

「ならば儂の依頼を一つ聞いてくれんかのぉ? 勿論報酬も渡すぞ? 」


 悠斗とイニシエールは顔を見合わせ、二つ返事でヒュプノスの依頼の説明を聞き入った。





「あー面倒くせー! アルバイトって、倉庫掃除じゃねーかよー! 」


 イニシエールは愚痴をこぼしながら、倉庫の棚を整理して行く。

 ヒュプノスの依頼とは、校長室に隣接する倉庫の清掃だった。

 初めは断ったが、ヒュプノスに押し切られ、安い給料で引き受けてしまったのだ。


「折角日本に来たんだから、もっと日本の街を見てみたいよなー 」

「そう言えばイニシエールは日本は初めてだったよね 」


 神選高校には世界各国から、人間を超えた人間が集められる。悠斗はその中で、上手くやって行けるか不安だった。


「話していないで、早く手を動かしなさいよ。

 ……何で私まで手伝うはめに…… 」


 せっせと棚にバラバラにして置かれた資料を整理して行くニーナ。ニーナ自身もまた愚痴をこぼしている。


 すると、4限目の予鈴が鳴った。

 5分後には4限目が始まってしまう。


「げっ! もう4限目始まっちまうじゃねーかよ! 」

「大体片付いたから平気でしょう。

 ……授業に遅れたくは無いわ 」


 急いで残りの資料を片付け、悠斗とニーナは倉庫の外へ出る。

 イニシエールも向かおうとしたが、ある1枚の資料が目に入った。


「何だこれ?

 ……日付けは3年前、長野県で大量殺人犯捕獲。この犯人は、特殊能力を有していた。その犯人の名前は…… 」


 イニシエールがその資料を読もうとする。

 しかしその途中、咄嗟にニーナが飛び出し、イニシエールからその資料を奪った。


「な、何するんだよ!? ビックリさせるなよー! 」

「授業に行くわよ。

 ……いいから早く!! 」


 ニーナは突然イニシエールに向かって怒り出し、悠斗とイニシエールを押して教室に向かい出した。

 悠斗は、ニーナが怒っているよりも、何か焦っていると感じ取った。


 ……ニーナは一体、どうしたのかな?


 しかし悠斗には、怒りの表情を見せるニーナに尋ねるなど、到底出来なかった……

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