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四話 《序列》

 ホームルームを終え、悠斗達1年生は全員、寮に案内された。

 学年毎に寮館があり、1年生は1番古い寮館に住むことになった。

 古いと言っても、内装はかなり綺麗な木造の寮になっている。


 食堂で早めの夕食を摂る。

 午後8時には普通クラスのクラス分けが発表されるため、それまでに寮の部屋の中を整理して置きたかった。


「風間悠斗君……だっけ? 相席しても良いかな? 」


 そう言って悠斗の前に来たのは、背の高い女。

 スラリと手脚が長く、パッチリとした二重瞼。何よりも綺麗なのは、黒く長く伸びた髪。綺麗な目をしているが、日本人だった。


「あ、どうぞ! 」

「ありがとー! 他の席の男は、何か強面だったり雰囲気暗そうだったりして……。

 あ、風間君は違うからね! 」


 その女は悠斗の前に座りそう言うと、誤解を解こうと両手を必死に振っている。

 その姿を見た悠斗は、その女の雰囲気からは感じられ無い、気さくな性格に思わず吹いてしまった。


「あー! 風間君酷いよ!

 ……あ、そうだった! 私、久能亜樹! 木神と呼ばれた久久能智の末裔なの! ……聞いたよー! 入学早々、空色髪の美女を射止めたんだって? 」

「僕は風間悠斗。

 ……その話はあんまりして欲しくないなー。僕、本当にあの人とは関係ないんだもん 」

「冗談よ冗談! 風間君って、あんまり冗談通じ無い人なんだね! 面白ーい! 」


 亜樹は悠斗に意地悪をして楽しんでいる。悠斗はそれに苛立つことなく、亜樹が楽しんでいることに満足していた。


「風間君は何のテストをやったの? 」


 夕食の豪華なハンバーグの定食に手を付けながら話す。

 神々の持て成しとでも言うべきか、悠斗には見たことも食べたことも無い、最高級の料理だった。


 悠斗と亜樹が話をしていると、鋭い視線に気付いた。周りの男達の視線だ。

 ニーナとの誤解が、ここまで広がるとは思っていなかった。


「うわー、怖いねー! 風間君、早速他の男子に目付けられちゃった様だね! 」

「笑いごとじゃないよ久能さん! 僕、争いごと好きじゃないんだよ 」



 そして、夕食を終え、食器を片付ける。


 部屋に向かおうとすると、別れ際に亜樹が、

「同じクラスになれたら良いね! 」

 と言って去って行った。

 その時の亜樹の笑顔を見た悠斗は、思わず見惚れてしまった……



 *********************



「201号室……201号室は……あ、ここだ 」


 階段を上がり、1番右端の部屋が悠斗と、もう1人の誰かの部屋である201号室だった。

 全部屋2人部屋である以上、誰かと一緒は仕方が無い。


「よろしくお願いしまーす……!? 」


 悠斗は一言挨拶をして201号室のドアを開ける。しかし、そこで悠斗は凍りついた様に固まった。


 そこにいたのは……


「お帰りなさい。あなたの荷物も届いているわよ 」

「え……? に、ニーナさん!? 」


 部屋の中にいたのは、驚くべきことに、ニーナだった。

 ニーナは驚くことなく部屋の中で落ち着き、明日の授業から使用する教科書をスラスラ読んでいる。

 対する悠斗は状況を把握できず、ドアを開けたまま固まっている。


「そろそろドアを閉めたらどう? 何だか開けっ放しは落ち着かないわ 」


 ニーナに言われるがまま、悠斗は部屋のドアを閉め、恐る恐る部屋の中へ入って行く。

 ログハウスの様な木の香りのする内装で、広さは1LDK。人が2人生活するには十分過ぎる広さである。

 ニーナはリビングにある白いソファに座り、教科書を読み進めている。

 どうやら授業を受ける前に、予習をしている様だ。


「に、ニーナさんは僕と一緒で嫌じゃ無いの? 男だし、特に勉強も実技もダメなのに 」

「私があなたと同室にして、と頼んだのだから驚くわけが無いわ 」

「そーかぁ、ニーナさんが僕と同室に……って、ええーっ!? な、何で? 」


 ニーナは読んでいた教科書を閉じ、悠斗の目を見て言った。


「ったく、何で何でってうるさいのよ! あなたは黙って私の監視下にいなさい! 」


 初めて聞くニーナの怒声に悠斗は驚いた。



 荷物は自分で整理する必要も無く、既に自分の部屋にきちんと配置されていた。ここにある荷物は、全てヒュプノスが特別に買ってくれたものである。

 必要最低限の物しか無いが、それでも有難い。


 部屋の中を眺めていると、玄関をノックする音がした。

 ニーナはソファに座り、予習を続けて動く気配は無い。

 仕方なく悠斗が玄関の戸を開けた。


「はーい? 」

「あ、風間く〜ん! 君とニーナちゃんのクラスを教えに来たよ〜! 」


 ドアの前に立っていたのは、エロースだった。

 クラス発表を前に、悠斗は少し緊張する。


「えーっと、2人共……1年E組だよ〜! 」

「い、E組!? 先生、僕そんなにテストの結果悪くなかったはずじゃ…… 」


 悠斗はエロースに聞き返す。それもそのはず、クラスの順番には意味があった。

 悠斗の心境を語る様にして、ニーナが話し出す。


「毎年111人の実力者が神選高校に入学する。そして、その中でも特に選び抜かれた11人しか入ることの出来ないA組、残りのB組からE組までは一クラス25人が振り分けられる。

 A組の11人は、【ナンバーズイレブン】と呼ばれ、普通クラスと比べて遥かに強い力を秘めているわ。

 B組からE組の生徒にも順位が付けられ、B組に近付くに連れて順位も上がる。

 だから、現在私達は最高でも87位だってことね 」


 ニーナはあっさり説明を終えた。悠斗の様な、不平不満は無い様だ。


「風間く〜ん、君は少し勘違いをしているよ〜?

 あのテストはね〜、採点基準は順位じゃなくて、能力のレベルなんだよ〜!

 ……君はあの時、全く能力を使わなかったよね〜? “能力の無い者は神にさせるな”って言うのが理事長の方針だからぁ、ごめんね〜!

 確かに君の体術や戦闘に関する素質は認めるよ〜。

 だけどね〜、これだけは憶えておいて〜。それだけじゃあ神を相手には全く歯が立たないんだよ〜 」


 エロースに指摘されることは、悠斗の胸に突き刺さる。それが正論だから。

 ただ、このまま諦めるわけにも行かない。


「先生、僕頑張ります! 【ナンバーズイレブン】にも負けない様に、もっともっと鍛えなくちゃ! 」

「頑張って〜! 期待しているよ〜、風間く〜ん! 」


 エロースは天使の様な微笑みで手を振り、帰って行った。


「見惚れすぎよ 」


 エロースが見えなくなるまで手を振っていると、ニーナは悠斗を細目で睨んでいた。


「頑張ってエロース先生に認めてもらうぞー! 」


 悠斗が独り言を言って拳を強く掲げると、ニーナは、

「男って、皆こうなのかしら? 」

 と言って、溜息をついた……


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