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弐話 《違える正義》

 5分も歩けば校舎に着いた。

 神選高校の敷地は広く、その他には何も無いのだから当たり前だろう。


 悠斗達が校庭に入ると、何やら人集りが出来ているのが見えた。どうやら何か揉めている様だ。


「何か争い事かな?

 早速勝負心全開だねー! 行ってみようよ! 」


 イニシエールが人集りに向かって走って行く。それを見たヴォルトも渋々着いて行く様だ。

 悠斗も着いて行くしかない。


「よくもテメー俺様の斧を蹴飛ばしてくれたな? どうしてくれんだよ? 」

「す、すみません! 」


 身体付きの良い乱暴そうな白人男と、か弱そうな小柄のアジア人女が

 揉めていた。と言うよりも、白人男が一方的に責めていた。


「何があったんだ? 」


 イニシエールは周りの野次馬に事情を聞いてみる。隣にいた黒人男が質問に答えた。


「ああ、あの白人の持ってる斧を、あのアジア人の女が蹴飛ばしたって言い掛かりをつけているんだ。俺は現場を見ていたが、実際あの子は全く斧には触れてい無いよ 」


 恐らく白人男は、入学式が起こる前に争いを起こして名を売りたいのだろう。

 それにしても、か弱そうな女を狙ったのは許せない。


「ちょっと! この子もさっきからずっと謝ってんじゃん! いい加減許してやんなよ! 」


 1人の正義感の強い女が白人男の前に飛び出した。その女は、目が青く綺麗な顔立ちをした白人女だった。

 それが気に食わない白人男は、その女に矛先を向けた様だ。


「ああ!? 女は出てくんじゃねーよ! テメーから殺ってやろうか!? 」

「お前がさっきまでキレてたのも女だったぞー 」


 イニシエールは小声でそうツッコんだ。確かに入学式早々、いざこざに巻き込まれるのは御免だ。

 その場から立ち去ろうか迷っていると、なんと、

「おいてめえ、さっきからずっと偉そうにごちゃごちゃうるせえんだよ。女相手にして。ったく、気分悪い」

 と、ヴォルトが喧嘩腰に白人男へ近付いて行った。

 そう言われた白人男と黙っていない。


「何だと!? 俺様に刃向かう奴は殺す! 」

「……やってみろよ。クズ野郎 」


 ヴォルトがそう言うと、白人男が斧を振り回してヴォルトに襲い掛かった。


「おらおら! 死ねー!! 」

「……バーカ 」


 すると、ヴォルトはその男に右手の人差し指を向けた。

 そして、その指先から大きな雷を迸らせた。


 う、うわあぁぁぁ!!


 白人男は雷をもろに浴び、身体を少し焦がして気を失った。

 周りの生徒達は、その状況に戸惑いを見せる。


「いやー、さっすがヴォルトだねー! こんな雑魚相手なら楽勝楽勝!

 俺でも簡単だったけどね! 」

「てめえは傍観してただけだろうが 」


 見た目とは裏腹に、ヴォルトは女に優しい様だ……



「な、一体何だ!? 何が起きたんだ!? 」

「今の凄い! どうやったの!? 」


 すぐにヴォルトは他の生徒達に囲まれた。ヴォルトは表情を変えないが、後頭部を掻く仕草から少し照れていることが分かる。


「アレがヴォルトの能力、雷神トールから受け継いだ雷を操る能力だ。正直な話、アイツがいる限り、この学校でトップになるのは無理そうだ」


 イニシエールは悠斗の耳元で、そう囁いた。



 すると、

「おー、やっぱり今年も入学式から決闘か!

 コイツとやったの誰だー? 」

 と、上級生と思われる生徒が2人やって来た。


「おっ、いきなり3年生の登場だぞ!

 あの胸元のバッジ見ろよ。俺達は青、2年生が黄色、3年生が赤なんだ 」

「へー。イニシエール君は、どうしてそんなにこの学校に詳しいの? 」


 初めてイニシエールとまともな会話をした気がする。


「俺の姉さんがここに通ってるって言ってたからな。ここに来るまで、あんまり信じてなかったんだけど、色々姉さんから聞いた情報はあるんだよ 」


 3年生の前にヴォルトが立った。


「コイツとやったのは俺だけど? 」


 いきなり揉め事を起こしたからには、きっと懲罰が……


 そう思った悠斗。


「お前かー! 確かに見るからに強そうだな!

 ……じゃあお前、今日の入学式とその後のホームルームには出なくていいぞ 」

『……はぁ!? 』


 そこにいた全員が声を揃えて驚いた。勿論、悠斗とイニシエールも。


「……分かった。なら寮に案内してくれ。荷物を整頓して、部屋作りをしたい 」


 そう言ってヴォルトは3年生と共に、寮へと向かって行った。


「い、一体どうなってるんだ? 」



 *********************



 先程の事の意味が、入学式に出席したことで判明した。

 それは神選高校校長の挨拶によるものだった。


「諸君、おめでとう! 儂はこの学校の校長、眠神ヒュプノスじゃ! 」

『あ! あのお爺さん! 」


 悠斗とイニシエールが声を揃えて立ち上がり、校長に指を指した。

 大きなホールで行われたため、会場全体に声が響き渡る。


「これ! 指を指すな!

 ……2人共、言いたいことは分かっとるから、取り敢えず今は……眠れ! 」


 ヒュプノスが右手の指を鳴らすと、イニシエールは立ったまま眠ってしまった。

 しかし、

「ん? 何でアイツ眠らない? 」

「ヒュプノス校長の【眠り】の能力を食らったはずなのに、何故平気なの!? 」

 と、出席していた2、3年生が驚いている。確かに悠斗は全く眠りにつかない。


「ま、まあ良い。風間君、座るのじゃ 」


 悠斗は座ると同時に、立ったまま眠ってしまっているイニシエールを起こし座らせた。


「……さて、本題に入ろうかの。

 ……この学校では様々な神々の後継者を探すのと同時に、魔神派に対抗する勢力の兵士としても活躍してもらう。神になれば、人類に崇められ、最高の人生を送ることが出来るじゃろう。

 ……そして、何よりも大事なのは【強さ】。この学校の理事長である戦神アレスの主義の通り、【強さ】を探し、鍛え、そして大切なのは強さを何に使うか。

 それをこの学校では学んでもらう。既にその【強さ】を証明した者が諸君らの学年で5人おる。彼らはこの入学式には出席しておらん。自らの【強さ】を十分理解しておるようじゃからの。一部自らを過信しておる者もおるようじゃが 」

「それってきっと、あの白人男のことだよな! 笑っちゃうぜ! 」


 イニシエールと悠斗は2人して小声で笑った。

 すると、イニシエールは突然再び眠りに落ちた。

 壇上を見ると、ヒュプノスがこちらを見ていたのだ。


「……アレスの方針により、ここでは【強さ】こそが正義とされる。勝者は正義、敗者が悪。

 ……もしこの方針を嫌がるならば、学年毎の成績で上位3名までに入り、儂とアレスを倒せば良い。方針上、勝てば正義なのだから、学校方針を覆すことも可能じゃ。

 ……成績は夏と冬に発表されるからの、楽しみに待っとるぞー! 」


 そう言ってヒュプノスは壇上から姿を消した。


「勝者こそが正義……それは間違ってる! そうだよね、イニシエール? 」


 しかし、イニシエールは眠っている。

 独り言を言っている様で、悠斗は少し恥ずかしさで顔を赤くしていた……

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