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 めっちゃ疲れた。

 率直な感想は、めっちゃ疲れた。

 考えて欲しい。今日、1700万+40万、合計で大体1750万殺した。能力、超使った。この世界に来て多分一番多用した。この世界限定にせず、俺の3世紀にも渡る経験の内でも、ここまで使った記憶が無い程だ。

 何故こんなに苦労しているのか、本当良くわからなくなってくる。

 一体俺は何をしているのだろう。アメジストが居なければ俺はこんな苦労を強いられなかった筈なのに。アメジストめ。許すまじ。

 そんな事を考えながらの風呂を終え、さてどうしよう、と外に出てみればとっくに夜。

 ヴィーヴルはあの後いつの間にやら帰ってしまっていたし、軍曹は街の死体を集める作業の指揮をとっているし、俺の周りをウロウロしていたアメジストは、俺が風呂に入る前段階で既に何処かに消え、ミゥ将軍なんてそれより前に何処かに消えていた。ピノに至っては、城に入る事さえ拒絶して、そのままルーン君に跨って何処かを放浪しているらしい。

 ゲルマニクス大帝国の城は中々広くて居心地も悪い。少なくとも玉座の間はもう使い物に成らないし、俺とミゥが暴れた所為で血液も多量に残ったままだし、予想こそしていたが、圧倒的な人員の不足が発生している。

 一応でエルフの国の様子を能力で眺めたりしてみているが、特に変わった事はない。平穏を維持したままだ。王様不在でも別段いつも通り。

 しかしどうしたものか。エルフの兵士達がこのままでは過労死する。資材を運び出すだの、そんな事をしている場合ではない。死体運びだけで粉々になる。

 何せ1万人の兵士しか居ないのだ。この国の馬を使いまくってはいるが、限度がある。1700万の死体を何処かに運ぶなど、普通に考えて無理だ。何日掛けて運び終えるのか、漠然とさえ検討もつかない。

 というか、食事の用意さえされないし、自分で作るしか無いのだろうか。

 そんなこんなで、大きな大きなベランダモドキに出た。この城にあった居心地最高に悪い椅子へと腰掛けて、星空を眺める事にする。

 夜風も何か気持ち悪いと感じる。勝利とはやはり虚しい物だ。俺が言えた義理ではないが。

 そう、終わった直後はテンション最高潮だったのだが、終わってみると面倒くさくてたまらないと思えてしまうのだ。お祭りの後片付けと同じ。限りなく面倒くさいし、静かなもの。

 この何とも言えぬ不快感、誰にぶつければいいのやら。

 軍曹の顔面にぶつければいいだろうか。

 でも一生懸命働いてくれているし、ちょっと横暴が過ぎるかもしれないし。

「ドラグーン……」

 俺のことをドラグーンで呼ぶのはミゥ将軍だけ。気怠さばかりの俺は適当に首を回してミゥ

将軍の顔を見る。

 どうやら他に誰もいない。ミゥはずっと一人で居たようだ。今まで何をしていたかは知らないが。

 ただその退屈そうな様を見ると、軍曹の手伝いをする元気もなければ、娯楽の一切が無い事にイライラもしているようで。俺にもイライラしているようで。

 何ならば漫画を貸してやってもいいが、空間を叩き割って取り出すのは激しく面倒だ。疲れているのだから、これ以上疲れる道理はない。

 いっその事、どこかの本屋か図書館に入って、本を拝借してくればいい。少しはこの詰まらなくて下らない、伸び伸びした時間を有効活用出来る事だろう。

「おう、将軍。気分はどないや?」

「別に…」

「そか」

 他愛も内容も何も無い会話をしてから、俺は背もたれに首付近を置く。足を大きく投げ出して、また空を眺める事にした。

「……」

「………」

 星が綺麗だなー。うんー、綺麗だなー。

 あー、静か。静か静か。うんうん。静かー。

「いやお前何か言いに来たんと違うんかい」

 当たり前のように隣に立って空を眺め始めるものだから、ついついツッコミを入れてしまった。だがしかし、いやしかし、俺の気持ちはまさにその通りなのだ。

 まさか本当に暇だからという理由だけでやって来ただけではあるまいな。

 何でお前みたいな毛むくじゃら族と一緒に天体観察せにゃならんのだ。俺は一人の時間を愛するのだ。何も用が無いなら上の方にある鐘の隣に座って月眺めて吠えていろ。

「……お前は人間、ではないな」

 …本当に暇だからやって来ただけのようだ。話題が何ともどうでもいいことか。

 とはいえ、語る相手が居るか居ないかで、時間の流れも変わってくる。俺もこの退屈な時間に嫌気がさしていた所だ。付き合ってやろうと思う。

「化け物とでも言いたいんか?」

「神のようだと、思った」

 凄いことを言い出すものだ。俺はそう思って、笑いを含めた言葉を吐き出す。

「おいおいおい、あんな馬鹿騒ぎしてる神様なんて居るもんかいな」

「結果が、凄まじい」

「能力を失えばワイもただの人間やで」

 そう、人間だ。能力を失えばの話だが、人間でしかない。

 能力を失う、というのもまた想像はしにくいのだが。

「…ピノが、下に居る」

「ん?どこ?」

 急にミゥがそんな事を言い始める。

 相当にお怒りだったピノの事が気にならないといえば嘘になる。実際かなり気にかけている。

 なのですぐに確認してみたが、俺が最高にだらけていた所為で、何処の辺りに居るのかが全然分からなかった。見当たらない。下に居るとは言っていたが、何処だろうか。もしかして城の1階に来ているのだろうか。

「あの、あたりだ」

 ミゥが今度は指をさす。あれ、角度が緩い。角度、60度、いや、55度…。

「遠ッ!遠すぎやッ!何してんのあの子!?」

 この城が国の大体真ん中に位置している。ミゥが指さした場所は、もう殆ど東の端。軍曹達が頑張っている付近だ。門も破壊したので出入り自由だが、逆に危険でもある。

 何者かの侵入を容易にしているのだから、あの辺りにピノが居るとなると不都合。危険過ぎる。面倒だが急ぎ迎えに行ってやるべきかもしれない。

「…ジューダス姫も、居る」

「あー……、なるほどなあ」

 能力を使って遠視すると、確かにアメジストとピノが居る。楽しげに会話して見えるが、本当に大丈夫だろうか。アメジストが相手というだけでとてつもなく心配になる。

 だがピノは笑っている。なら、まあいいか。

 アメジストが居るというだけで、ピノの安全はかなり保証もされている。俺が出向くまでもないだろう。

「………」

「…お前、もしかせんでもそれだけ?」

 足を組み直してミゥに聞く。

 先ほどから会話が継続しない。ブチブチ切っては新しい話題になり続けている。全然俺が落ち着かない。

 ミゥは急に俺へ身体ごと向けてくる。そして再び指をピノ達の方角へ向け、言った。

「……気になるなら、行け」

「んなこと言ったってお前、ピノは俺にカンカンや。行ったら切れるで間違いなく」

「ピノには、お前が必要だ……」

「いつもより喋るな、お前」

「………行け」

「はいはい。分かった分かった。お前もカンカンなんね」

 俺がいつまでものんびりしてピノの所に行かないから、ミゥは様子見していたという事か。

 お前は良いお父さんかよ、というツッコミを思いついていたが、言わないでおく。アメジストと仲良く出来ていないらしいミゥにそんな事を言った日には、首を締めあげられかねない。もしくは俺が疲れていても、もう二度と介抱してくれないだろう。それは怖い。恐ろしい。

 俺は立ち上がり、軽く背伸びする。背骨がパキリと音を立てるが気にしない。

 そのままバルコニーの手摺りを飛び越えながら落下。とりあえず向かってやる事にする。

 きっとピノは怒っているだろう。到着した途端に怒声を浴びせられるかもしれない。

 マクレーンの時とは大違いだ。規模も行動も、色々と大違いなのだ。怒っていても不思議ではない。流石のピノでも寛容にはなりきれないだろうとそう思う。

 本当は行きたくない。だがミゥにあそこまで言われて行かないと、俺はとんでもない甲斐性なしと同じ、な気がする。

 作業は意外と軽快に進んでいるようだ。大量の馬車が死体を何処かに運んでいるが、昼ごろから続けられている為、道が綺麗になっている。

 外でキャンプファイヤー再びだろうか。さてはて。

 というか、モンスター達が想像以上にやって来ないか少々不安だ。エルフの国はキャンプファイヤーの影響でかなりモンスター達がやって来ていたのだ。しかもこの国、門を誰かの手によって破壊されている。つまり無防備。少々、やばいかもしれない。対策の方を考えておかねばなるまい。

 とか言っている間にも到着だ。俺は減速し、歩く。

 まず気がついたのはアメジスト。二人は膝を立てて草むらに腰を降ろして居たのだが、アメジストが機敏に反応。身を捻ってギョロッとこちらを見るな怖いマジで。

 ピノもそれを見て、こちらを見た。だが、意外も意外。ピノは俺を見て表情を明るくした。

「あ、新しい王様、ガドロサ、こんばんは!」

「ベルデ様、こんばんは」

「こんばんはってお前……」

 グッドイブニング、と言っていいのか本当に。隣では死体が山のように運ばれてますけども。

 まあ、まあ挨拶は挨拶だ。あまり下手なことは言わない方がいいだろう。茶化すのも冷やかすのも、今の段階ではちょっとやりにくい。意識しているのは俺だけなのだし、変な事を言って彼女達の気分を阻害するのは何の得にもならないので止めておこう。。

 そう思ったくらいにアメジストが、

「今、ベルデ様の魅力をピノさんに教えていた所です」

「何余計な事してんねん」

 本当に余計な事をしていたようだ。自慢気な態度なのが相当腹立つ。

 だがピノも少し苦笑いを浮かべている。遠目では笑って見えたのだが、はて。

「ですが、ベルデ様はピノさんをとてもお気に入りのご様子。

 でしたらば私がピノさんをベルデ様の理想の女性に近づけようとするのは、至極当然の事」

「地獄同然のオオゴトなんやけど。俺の世間体が主に」

 クールなジャパニーズジョークを俺が披露したところで、ピノが話の腰を折った。

「あたしね、やっぱりガドロサの事、好きのまんまなの。

 ガドロサが本当にやりたいコトも分かったし、やめてくれないのも分かったの。

 それでもあたし、諦められないみたい。好きのまんまみたい。

 でも聞いてよ、このお姉さん、ガドロサのお話ばっかりするのよ?

 あたしの考えとかはゼンブ違う違うって言うの。失礼しちゃうわ」

 ぷりぷりと怒っている様子だが、俺に対してではないようだ。アメジスト、お前一体何を言った。今日の戦争より酷い話をしていたのではないだろうな。

 流石にそれはないか。というか無理だろう。今日の出来事以上など。

 …アメジストなら、やりかねないかもしれないと思う俺が居るが、無いと信じておこう。いいや、ここは疑うべきか。やはり疑うべきだろうか。

「……ピノ、意外と平気そうやな。あんな事あったってのに」

「ゼンゼン平気なんかじゃないよ。あたし、怒ってるんだから!」

「そら、悪うござんした」

 平謝り開始すると同時にピノは立ち上がり、俺を引っ張って、座らせる。そしてそのまま俺の腕に抱きつき、満足そうな表情で照れ笑い。

 良かった。俺、アメジスト隣じゃない。ピノが壁になってくれている。アメジストに抱きつかれるのは勘弁したい所だった。ミゥ将軍がきっと城から見ているだろうし、アメジストは絶対変な行動もオマケでつけてくるだろうから。

「もう。ガドロサってゼンゼン分かってないわ。

 でも、でもね、助けてくれたときのガドロサね、素敵なナイト様だったわ。

 守られてるって本当、幸せな気持ちだったわ。いっつもそうだったらイイナズケなのに」

 まだ俺を諦めていないと聞いた時点で既に驚きだったワケだが、許婚を諦めていない事にも驚きだ。

 しかし、あんな事があってもこの程度の怒りで留まるのか。持ち直すのが異様に早い。挙句は俺のやりたい事だ何だと言っている時点で、理解者になろうとしている事さえ分かる。納得するかしないかはともかく、理解だけは出来ている様子でもあるのだ。

 アメジストと類する所がある、とか前に思った記憶があるが、やはりその通りらしい。

 多分俺がやった事だから、こんなにもピノの怒りの程度が低いのだ。他がやらかしたならばもっともっと怒っているだろう。そしてその意見を是が非でも曲げようとさえしないだろう。

 何というべきか、難しい子だとは思う。

 だが決して俺を赦しているワケではない。俺の行為が最悪だったとピノはそう思っている。

 それでも別に無理しているだとか、空元気だとかではなく気にしていない様子。へこんでも居ないし、俺が好きだと思って抱きついてきているのも、また本心なのだろう。

 普通ではない。この娘もまた狂人になる資格を持ちえている。

 で、その狂人に成り果てて終わっているアメジストがここで言葉を挟んでくる。

「まあ、とても羨ましいです。きっとピノさんは幸せになれますね。

 ベルデ様、そこの家を簡単に掃除しておきました。ベッドも準備も万端です」

 何余計な事してんの?

 おいなんで頬染めてんの?

 お前俺に一体何させようとしてるか分かってる?

 犯罪ですよ?この国では犯罪ではないのだとしても犯罪的ですよ?

 ピノ、お前も何でそれを容認してんの?

 とめて?アメジストをとめといて?

 だって可怪しいじゃん絶対そんなの。ね?そう思わない?

「アメジスト、とりあえずお前の顔面に蹴り入れていい?」

 そう言ってやるとアメジスト、そんな言葉に驚愕している表情をする。

 寧ろその表情にビックリな俺だが、アメジスト、すぐに幸せそうな笑みを浮かべる。

 そうやって俺をいじめるのやめて下さい。

「お望みとあらば私はそれさえ受け入れてみせます。どうぞ、ベルデ様、遠慮なさらず」

 何故か両腕を広げて、準備OKだとと待ち構えるアメジスト。

 勿論だが、ピノ、ドン引きである。

「なんで蹴られる事に積極的やねん。お前絶対可怪しい。狂ってるわ」

「ありがとうございます」

「やかましいわ」

 思い切り腕を擦る俺。鳥肌凄い。寧ろ痛い。

 一方のアメジストは首を傾けて疑問符を浮かべている。なんでやねん。

 思えばコイツ、俺が1700万殺しを達成して馬鹿笑いしていた時に、嬉しそうに惚けて笑っていたような。その時の俺はテンション上がりすぎててよく覚えていないが、笑っていたような。ああ素敵……とか言い出しそうな感じの、ああいうイメージの。

 もうそういう所含めて絶対可怪しい。俺に言う権利ないかもだが、お前可怪しいぞ絶対。

「ふふ、お姉さんって変なの。ガドロサもアンガイ、セッキョクテキなの苦手なのね。

 でもねガドロサ、お姉さんもイッパイに愛を考えてるのよ?

 それはきっと、ガドロサのコトをとっても好きってコトなの。愛なんだと思うわ」

「愛でしょうね。愛でしょうとも」

 個人的には認めたくな

「ありがとうございます」

「いいから黙ってろ」

 いいから、もういいから黙っていろ。ただそこに座っていろ。

 お前さっきから余計な事しかしてないのだから座ってろ。本当大人しくしてろ。頼むから。

「あたしの愛はこのお姉さんに負けてるって思っちゃうの。

 それでも、あたしの愛も本物なの。愛ってムズカシイのね」

 というかピノはかなり見る目があり過ぎる。見る目が無いとも言い換えられるが、その本質を見据える力が俺よりも確実に高い。

 何せピノ、アメジストの異常な部分を無視し、完璧にアメジストの真っ直ぐさを理解出来ているのだから。

 俺であってさえ、アメジストのそれが本当に愛なのかをキツイ手段で調べたくらいだ。そうしてやっと、ああ本物なんだな、色々な意味で、と思った次第なのだ。

 ピノはもしかして、天才なのだろうか。

 これは、この物の見方は、誰にでも出来る事では絶対にない。少なくとも経験も判断材料もあまり多くない、10歳程度のピノにこれだけの的確な判断が出来る道理はない。

 魂の形でも見えるのだろうか。だから俺がどういう人間なのかも、分かっているのだろうか。

 中々に不服だが、本来は誉れであるべきだろう。実際よく見えていると言える。

 ただ言わせて欲しい。

「アメジストのは難しいを通り越し過ぎて、完全に破綻しとんやけど」

 愛し過ぎて脅しになっているので、ピノは全然負けてない。俺は少なくともそう思う。

 だって、ピノとアメジスト、どちらを選びますか?という状況に陥ったならば、俺は躊躇いなくピノを選ぶだろう。年齢がどうの、そんなものは弊害にさえならない、と言ってのける。ロリコン扱いされてもいい。アメジストを選ぶよりも、そんな過酷そうに見える道の方が俺はいい。全然マシだ。いっそロリコンになってもいいと真剣に考え始めるに違いあるまい。

 それほどに俺はアメジストが怖いのだ。ピノを選んでしまう程にアメジストが恐ろしいのだ。

 あえて言っておくが、別にピノを選ぶ気なんてさらさら無いので、この話自体、実にどうでもいい。

「でも愛なの。それだけは知っておくべきよ?レディには優しくしなくちゃメだわ」

「はいはい」

 適当に返事しておく。アメジストの愛を受け入れるつもりは無いのだ。優しくする気さえ正直無い。優しくしたら絶対アメジストは大喜び、結果、愛と偽った呪いはより深く俺に刻まれる事となる。嫌だ、そんなの。俺を赦してくれ。助けてくれ。ONMYOUJY様、どうかこの呪いを完膚なきまでに払ってやって下さい。成仏もさせてやって下さい。

「ガドロサ様、すみません、ちょっといいですか?」

「おうサンドイッチ軍曹、どないしたんや」

 突然に兵士達をかき分けてやって来る、大忙しの筈の軍曹。名前はラハンドだったと思う。

 俺を見つけたからやって来た訳ではなく、俺がここに居る事を理解していて、門の外からやって来たように見えた。そうにしか見えなかった。

 流石は元エルフ王、そして元君主様。エルフ族というのもあって、位置特定も簡単か。

 ただ、少々慌てているような。何か急ぎの用事だろうか。。

 にしても勘弁して欲しい。俺は疲れているし、今深夜だし、つまり業務時間外というヤツだ。残業代が出るにしても俺は嫌だ。面倒な事ならば俺は何もしないし動かないぞ。

「こちらへ、ちょっと来てください。ジューダス様とピノ様の前では、ちょっと…」

 どうやら動かないと話してくれないらしい。

 付いていく義理はない。俺は動かないぞ、と、豚の王様みたいな駄々をこねるのも厭わない。

 だがそういうワケにもいくまい。本当は嫌で嫌で仕方ないが、軍曹がかなり焦っている所を見る限り、余程の話なのだ。程度は全く分からないが。

「へいへい、何やの」

「こちらです」

 立ち上がってみれば、すぐに誘導される。

 馬車隊の間を抜け、駆け足でどんどん遠くへ遠くへと足を運ばされていく。

 これで下らない事だったならば軍曹、お前の首をへし折ってやるぞ。覚悟は出来ているな?

 と、馬車隊を間に挟み、100歩も歩かぬ内に停止。

 おいおい、60ヤード程離れただけで大丈夫か。アメジストには聞こえてしまいそうな距離だぞ。そんな程度の話が来るとは思えない程、軍曹の剣幕は鋭いのだが。

 それとも、そんなに切迫した状態なのだろうか。

「人狼族を多大に逃したようですね、ガドロサ様」

「……あ、確認してなかったなそういえば。で、それがどないしたん」

「今回の一件は、各国に知れ渡りそうです。恐らく現君主の情報操作により、各国がエルフの国や色々を総攻撃しかける事でしょう」

 なんだ、そんな事か、と思うと、無性に腹が立ってくる。

 嫌味を言いたいだけならば、さっさと仕事に戻ってしまえ。俺の知ったことではない。

 エルフ族がどうなろうと、本来俺には関係がない。いっそ今から馬車馬の如く働かせ、俺の手で絶滅させてやろうか。

「そんな事はなんて事はないがな。予想通りでしかないやんけ」

 俺がかなり怒ったのを察したらしく、軍曹は首を何度か横に振るった。

「ああいえ、すみません。それとは関係ない話を、いえ、関係はあるのですが、とにかく微妙な事が起こってまして」

「はあ?」

 一体ここからどのように派生するというのか。是非とも聞かせて頂きたい。

 実際、軍曹は焦っている。焦って俺に会いに来たのは理解している。だがその事を伝える前に嫌味を述べてくれているのだ。少々の事では絶対に許してはやらない。

 馬車馬のように、は撤回しておいてやるが、本当にくだらなくて詰まらない話をし始めるならば、お前の顔面一発くらいは殴ってやる。絶対に殴ってやる。奥歯をへし折るくらいに思い切り殴ってやる。

「本物なのかは定かではないのですが、門前に君主らしき存在が、入れてくれって叫んでます」

 え、ごめんちょっとまって。余計な事を考えてて、イマイチ理解出来なかったんだが…?

「……何て?」

 今、君主って言った?

 君主って、あの君主?

 君主様、と呼ばれてる、あの、アイツ。

 マクレーンやユードリナ、シュンの上司であり、ミゥ将軍の元上司でありつつ、軍曹の次に君主に成り代わったっていう、ソイツの事?

「ですから、ガドロサ様が殺しそびれた人狼族約1000名を引き連れて、君主がやって来ているのです」

「……はい?」








ジューダス・アメジスト 2巻分終わり



おはようございます、こんにちは、こんばんは、370mLです(´・ω・`)

約一年経過してからの更新になりました。ごめんなさい。


果たして前作のミスし放題の作品を読みきったなんて人が居るのか、まずそこからですが、気にしないでおきましょう。

読破おめでとうございます。でもすみません。何も無いのです。


前作(というか前話)から変わった事は、一人称が「ワイ」だったのを「俺」に直した事ですね。正直私自身が面倒くさいだけだったので、俺で統一させてもらいました。これによってこの作品の尖った部分は消え失せたと言ってもいいでしょう。是非はともかく。


かなりアレーな内容を多大に含んでいますが、ギリーギリだと思いたい所です。

今回登場しました幼女ピノちゃんかわいいですね。実は服装もかなりかわいいです。でも挿絵どうやって挿入するのか全然調べてないので、きっと未来永劫公開することはないでしょう。

そもそも、ガドロサやジューダス姫、ミゥ将軍にノヴァちゃん、軍曹のキャラ原案しっかり作ってるのに公開する意思が欠如しているこの作者、作者としての自覚があるのでしょうか。(謎の問いかけ


言葉は魔法です。

という話を前回のあとがきでも書いていますが、やはりその通りだと思う私の気持ちは変わりません。

言葉は魔法です。

だから、魔法のない我々の世界では、言葉は嘘そのものなのでは、と常々思っております。

でもその嘘は嘘ではなく、でも本当でもなく。

これを巧みに扱える人は本当に凄いのだと。

私はまだまだですね。いや全然です。文字数だけ多い限りです。

というか本編中、ガドロサのオヤジギャグが多かったような気がしますが、ええ、寒いですね。エターナルフォースブリザードですね。(謎


まあ置いといて、今回もまた妙なタイミングで話が途切れてますね。

次回更新が本当にあるのかさえ分かっていません。1年後に更新があるかさえ分かりはしませんね。ええ。酷い^p^


さて、そろそろ終わらせてしまいましょう。余り長々語っても冗長。

本編も冗長さ加減が憤慨甚だしいですけどねえへへ^p^

それでは、こんな具合の悪いあとがきですが、おいとまさせて頂きます。

ご閲覧、誠にありがとうございました。370mLでした。

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