表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/74

72:暴徒鎮圧作戦Ⅱ

性懲りもなくコツコツ始めます。

 前線はどこも地獄である。命の重さが微塵も感じられない。弱い者。運の無い者からどんどん死んでいく。そこに公平性や平等は存在しない。

 

 「矢が足らんぞ。補給急げ」


 「警備隊本体と合流した! 負傷者を救護しろ」


 「空いた隙間は直ぐに詰めろよ!」


 現場指揮官が声を張り上げ部隊に指示を出す。一部の住民の暴動と思われた規模間を想像していた現場指揮官は冷や汗をかいていた。何よりも想定外だったのが、訓練された兵士と対等どころか圧倒してしまう住民もおり、現場は浮足立っていた。


 「中央から引いて引き込め!」

 

 「敵左翼からの敵止まりません」


 「どれ程だ」


 「1名ですが、矢を素手で掴むなど、人間離れした身体能力で手に負えません」


 「一人だろう? 囲めないのか?」


 「深手を負わしても平然としているのです。人とは思えません」

 

 「アンデットか魔族が絡んでいるか? くそが。これより対魔族戦へシフトする。後方支援が来るまで前線を維持しながら後退するぞ。現状の装備では魔族戦は不利だ。本部へ伝令を送れ」


 「了解」


⭐︎⭐︎⭐︎


 配置場所から見える闇夜を照らす焔は、彼にとっては絶望としか言い表せないものであろう。道等は、敵拠点を回り込むようにして後方に陣を引き、敵軍の退路を封じる配置である。


 「ミーヤ・・・・・・」


 「信じよう。上位の神官は皆結界術式が使える。耐え

ている間に俺たちが愚者共を片付ければいいんだ」


「そうだな。切り替えよう」


 「報告! 敵兵接近!距離500。50人程です。なっ、

速い! 来ます!」


 「うおおおがああああああ!!!」


 けたたましい叫びが陣地に響き、それに呼応するように暴徒から叫び声が蔓延した。


 「狂乱状態だ。抜刀し、各々対応しろ!」


 奇声を上げながら迫り来る暴徒の手には槍様の凶器が握られており、陣地にへ突撃体制で突っ込んでくる。騎士団は初撃を鉄盾で受け、その後槍や剣を用いて反撃を開始するが、反撃するも敵暴徒は怯む事なく第二撃を繰り出す。


 「くそ、こいつら痛覚が無いのか! 厄介すぎる」


 殆どの生物には痛覚があり、斬られたり、殴られれば痛いもので、その痛みに驚いたり怯んだりする事が、自らの防衛になるのだが、この暴徒の群衆においては腕を切り落とされようが、腹を突かれようが、血をいくら流しようが攻める手を休めない。しかも攻撃を受けた時に、剣を振り抜いた騎士は無防備であるからして、致命傷は避けるものの怪我人は続出した。


 「怪我人は後方で治療を行う! 油断するな!」


 時間が経つにつれ、訓練された騎士たちは落ち着きを取り戻し、動きが効率化され、攻めくる敵を確実に倒して行った。


 「急所か、首を切り落とせ! 打ち損じると反撃が来るぞ」


 流石に腕を失った者は武器を握れる訳もなく、危険度は落ちるものの、なお噛み付こうとのしかかり、振り払おうとすると、隙を突いた第二陣の攻撃に間に合ってしまう。

 

 「ゾンビより動きが遥かに速い。厄介だな」


 指揮官は舌打ちをしながら状況を分析していたところ、戦場に突風が吹き付ける。


 「待ちわびたぞ」


 指揮官が見上げる上空には緑竜が隊列を組んで地上への殲滅魔法を展開する。

 

 昇竜疾風の騎士団が誇る地上への支援攻撃である。

 上空から放たれる真空の刃は、群衆で襲い掛かる暴徒を撒き散らし、肉塊が散乱する。撃ち漏らしは飛竜の急降下から繰り出されるスピアーや飛竜の鉤爪で粉砕されて行く。

 絶望と思われた前線は、一度の支援攻撃で息を吹き返し、強固な防御陣を築き上げ、兵士たちの士気も回復した。

 

 「このまま押し返せ! 街を取り戻す!」


 「「「「「「応」」」」」」」


 昇竜疾風の騎士団の度重なる支援攻撃で暴徒は霧散し、地上部隊が各個撃破していった。


☆☆☆


 教会ではミーヤ指揮のもと消火活動と並行して結界魔術の構築を進めていた。結界魔術は対魔術、対物理と分類的には二種類だが、属性を加えたり、強度、柔軟性など術式によって千差万別である。

 ミーヤは結界術式を得意とする中で、特徴的なのが重ね掛けである。各々術式の弱いところを別の術式でカバーするよう組んでいく。

 

 「もうすぐ結界が完成します。皆さん持ちこたえてください」


 「ミーヤ様、火の手が早まりました。このままでは……」


 「なんとか間に合わせます。私がいる限りやらせません」


教会関係者は聖堂に集まり避難はしたものの、炎が逃げ場を奪い、黒煙がじわじわと迫りくる。周囲は暴徒で囲われており、脱出も不可能。頼りはミーヤの結界魔術しかないが、おのが危機的状況に焦れる関係者はパニック寸前であり、早急な結界術の立ち上げが急務であった。

 

 「東西を流れるる聖脈よ。母なる大地ランハルドを守りたまえ。南北に走るハルド山脈よ。我が声に呼応し、悪しき者より救いの力を。」


 ミーアの詠唱は、空間を振動させ、教会そのものに干渉し、魔力と同化させていく。外壁や天井に走る魔法陣は青白く共鳴し、教会と一体化していく。


 「なんとか間に合いました。これでしばらくは持つでしょう。救援を待ちます」


 ミーアの一言で緊張が解れたのか、その場にへ垂れ込む関係者や、大きく息をつく者など、不安が解消され安堵につく者など様々であるが、依然として周囲の暴徒は解散しておらず、緊張感が続いている状況であった。


☆☆☆

 

 「なんてことだ……」


 救援で教会付近に臨場した水上 道含む警備隊は教会の状況に息を飲んだ。教会は既に炎の渦の中であり、その周りを何百という暴徒が囲んでいる状況である。

 

 「ミーヤ……ゆるせない……」


 救援に遅れて絶望的な状況を目の当たりにした道は、ふつふつと絶望から怒りに身を震わせていた。全身からは聖魔力と思われる白色の光が沸き上がり、道の体は自然と咆哮し群衆に突っ込でいた。周囲の静止は間に合わず、聖魔力で身体を強化された運動能力は通常止められる者は同じ能力者だけである。


 「うおおおおおおおおおおおおおおおお」


 道の特殊スキルはラーニングであり、見ただけで相手の動きを模倣することができる。まさに見取り稽古するだけで強くなれる能力であるが、ここまで騎士団の稽古で培われた動きに、覚醒した聖魔力の身体強化が加わり動きに力が加わった。

 

 群衆に対しての初手は後方からのショルダータックルが、ボーリングのピンを弾くが如く弾け飛ぶ。拳は煌々と光り続け、胸に打ち込んだ聖拳はあばらを砕き解放させ、血飛沫を起こした。顔面を殴れば顔が砕け、足を蹴り飛ばせば、骨がひしゃげた。不意に頭部を殴られようとも動きは止まらず、怪我はたちまち回復し、攻撃を受けながら殴り砕き血に染まるその姿は悪魔的な立ち振る舞いであった。

評価、ブックマークよろしくです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ