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70:報告書

 「ご主人! 家の外でさっきの騎士団員がうろついてました!」


 「おいおい。だから感の良いやつは嫌いなんだよなぁ」


 「どうするんです?」


 「せっかく作った組織だ。暴れさせて、その隙に逃げるぞ」


 「逃げ足の速さはピカイチですね!」


 「長生きの秘訣だ。準備するぞ」


 「あいあいさー」


 「狙いは教会だ。人間共の精神の支えを潰すのさ」


 「どうやるのです?」


 「先ず、教会の支柱といっても良いミーヤとかいう女だな。ここを押さえる」


 「小娘一匹にそれほどの影響力が?」


 「まぁ、今回が上手くいかなくても良いんだが、聖女が居なくなればこの国は病で崩れる。俺たちは何年でも嫌がらせし続けるからよ」


 「流石ご主人!」


 その晩に、少なからず集まった同志たちに号令を掛けて、国家転覆を狙う。彼らは周辺の町村から、商人に扮したハーメルンから、わずかな治癒薬をもらい信じさせた者たちである。多くの人間が、ハーメルンのマッチポンプによって騙され、捨て駒として使いつぶされるとは知らずに。

 

★★★


 「お疲れ様です(ワタル)様」


 「あぁ、お疲れミーヤ」


 「何か浮かない顔をしてますね。患者さんの自宅はわかりましたか?」


 「そのことなんだけど、どうも怪しくてさ。建物内から禍々しい魔力が感じ取れるんだ」

 

 「それは引っ掛かりますね。調査するにあたって、本国の法律に照らし合わせると、魔法及び魔術に関する法の第56条魔法及び魔術の不適切使用第3項無届けの魔法及び魔術の使用及び実験が当てはまります」


 「ほ、ほう」

 

 「この法律で立ち入り調査する場合は……先ず不正な魔力を感知した場合の措置として、警邏隊魔力検査部に報告書を製作し、検査部に検査をしてもらい、検査結果に基づいて突入許可を、元老院から貰う手続きになります」


 「直ぐに突入できないんだね」


 「騎士団を嫌う貴族が作った法律で、騎士団職務執行法というのがありまして、第三者の見識無しに、むやみに敷地を侵害してはならないというものがあるんです。もちろん緊急時や、生命の危機といった緊急避難は適用外になりますが」


 「昔、嫌な事されたんだろうね」


 「過去に騎士団の暴走により多くの無罪である貴族の屋敷に突入を仕掛けたことが背景にあるので、身からでた錆といいますか、必要な時に直ぐ動けないのが悔やまれますね」


 「なるほど。では報告書の作り方を教えてもらえますか」


 「はい! 先ずは日時場所と……そうですね。あとはここにうちの隊長のサインを貰って逓送係に渡せば大丈夫です」


 「ありがとう! あと3,4日くらいかかりそうだね」


 「それぐらい見積もってもらえれば手続きも終わるかと思います」


 「了解。じゃあ、ちょっと整理してから帰るからミーヤは先に上がってよ」


 「わかりました。お疲れ様です」


 (相談してよかった。むやみに入っていったら処罰されるところだったよ……でも気になるなぁ。早く調査してもらえると助かるな……)


 幸か不幸か、皮肉にもハーメルンが嫌うラベンハルドの法により助けられたことになる。



★★★



 とある洞窟のアジトには二体の魔物が節奏無く騒いでいる。


 「おい、ハーメルン様と連絡は取れないのか?」


 「駄目です。伝達用の蝙蝠達を送る度に消されていきます」


 「なんでそんなことができる。ありえんだろ! 敵なのか野生なのかどう判断していうるんだ」


 「飛んでいるもの全て撃ち落としています。下手に使いを出せばアジトがバレる恐れがあるので、伝達も命がけです」


 「そ、んな……バケモンだろ」


 「しかも虱潰しに山脈ごと燃やされるか、氷漬けにされるかしてますよ。ここも時間の問題です」


 「そんな……慌てて出て行けば思うつぼじゃないか」


 「何か良い手は……」

 

 「攻めることも守ることも封じられた……死ぬのを待つのは性に合わん! 一か八か逃げるぞ」


 「よ、よし。鼠共を巣穴を通じて一斉解放する。その隙に行くぞ」


 「おう」


 ★★★


 セル子とベースケが次の敵拠点を選定していると、おびただしい数の巨像鼠が複数の洞窟からあふれ出し、たちまち囲まれる形となった


 「おいおい、かくれんぼに飽きてくれたか。こちらも飽きてきたところだあ!」


 紅の炎弾は接敵した瞬間弾け飛び、地形は捲れ、溶岩が流れ込む。


 「あなたって本当無鉄砲ね」


 「なんだよ。頭が足りねーっていうのかよ」


 「あら、自覚あるのね」


 「自覚してねーよ! 腹立つ!」

 

 ベースケたちの知らないところで、ハーメルンの部下たちが範囲攻撃の巻き添えを食らってしまったことは悲しい末路である。危機管理が下手とは今回のケースで行くと言い辛いところではあるが、ときたま戦場では起こりうる事故みたいなことである。

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