表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/74

66:綻び

 「久しいなメイルハ辺境伯。あのレッドワイバーンの献上以来か」


 「もう4年前になりますか。今回はご面会いただきありがとうございますラベンハルド国王」


 「わざわざ遠くから参ったのだ。何かあったのだろう」


 「左様でございます。国王様は最近の流行り病についてご承知ですか」


 「うむ。死亡率も高く警戒しておる」


 「その病が我が領土においても蔓延し始めております」


 「おぉ、そちの所まで広がっておるか。苦労をかけるな」


 「いえ、ところで、我が領民の声で、王都では流行り病を感知する特効薬が開発されたと聞く者がお 

 りまして、本日はその事実確認を行いにまいりました。」


 「なるほど。そのような噂が……薬ではないが、完治する術は得ておる」


 「おお! 流石数多の大国を統べおられたお方。是非教えていただきたいのです」


 「それがなぁ、安全保障上できぬ相談なのだ。王都での治療はできるので連れて参られよ」


 「それは無理でございます。魔物がでる山道もあり、王都まで1週間かかるので、病人には耐えられ

 ぬ旅路にございます」

 

 「うむ。こちらも調査研究を急がせる故、待たれよ」


 「……承知いたしました。話は以上でございます」


 「下がってよい」

 

 「ははっ」


 

 ★★★


 

 メイルハ辺境伯は怒りに拳を振るわせた。


(なぜ王都の民は助かり、我々は苦しまねばならぬ)


 王宮の長い廊下を歩く速度は自然と早くなる


(あまりに不平等で不公平だ。目の前で苦しんでいる人を前にしていないから悠長なことが言えるの 

 だ)


 支度をしてるメイド、植木の剪定をしている庭師、立ち話してる貴族、目に映る全ても者に敵意を向けてしまう。


(調査が終わるまで待てと? 明日死ぬかもしれない領民の前でもそれが言えるものか)


 メイルハ辺境伯は怒りに身を震わせながら馬車に乗り込み帰路に着いた。



★★★



 「なぁ丞相。これでこの手の面会は何回目だ?」


 「15回目でしょうな」


 「多くはないか?」


 「ふむ。誰かが流布して回っていると?」


 「今になっては確かめることは出来んが、あり得るかもしれん」


 「(ワタル)あっての感染対策ですからね」


 「うむ。王都から出すのは勇気がいる。なんとか教会が掴んでくれればよいのだが」


 「現在一団となって行っております」


 「あぁ、そうさな。天下泰平となると思ったのだがなぁ……」


 「弱気になさらず。いつの時代にも困難はございます」


 「うむ」



 ★★★


 

 「ある程度敵を引き込んでから溶岩で流す方がいいよな」


 (陸よ。我よりも残酷なことを思いつくではないか。魔族に染まってきたな)


 「いやいやいや、何をおっしゃいます」


 (ここを坂道にして、下った先に流し込むのもいいかもしれんぞ)


 「なるほど。」


 防衛用のダンジョンの設計と増設を行っている陸であるが、はたから見ると独り言を呟いてあれこれやっているので、とても近寄りがたい。時頼ダンジョン内で農場を営んでいるゴブリン達が挨拶してくるのもどこかの親分のようで陸自身面白がっている。

 現在城壁をセルクリッド王国を一囲いしており、その城壁内部がダンジョン化しているため、細やかな設計が求められる。


 「国民ように冒険者が探索できるダンジョンと、ガチガチの防衛用で分けたいな。農業スペースも取っておかなければならないし」


 セルクリッド王国を乗っ取った時からダンジョンで囲う計画は頭にはあったのだが、城のダンジョンをそのまま移行すればよいと思っていたが、思いのほか領土が広かった。


 「多少対空設備も欲しいしな。唯一の侵入経路になりそうだし」


 (多少攻められなければつまらんだろう)


 「いやいや、デイルさんみたいに戦闘狂ではないのですよ。レーダーやらセンサーみたいな魔法をタンニールに聞いてみるか」


 (うむ、余はそのような細かいのは知らんからな)


 「そうでしょうね」


 (しかし、このダンジョンを作るスキルがあれば余程のことが無ければ突破は無理だろうな)


 「そうですか? イケイケだったデイルさんが言うんだからそうなんでしょうけど」


 (あぁ、本来ダンジョンを維持するだけでも莫大な魔力が必要になるのだ。それを運営させるなど、 

 本来生物に宿る魔力では補えない) 


 「天然のダンジョンとかはどうやって動いているんですか」


 (天然のダンジョンはその土地の魔力の水脈や、中に入ってきた魔物、魔族、人間なんかのありとあ

 らゆる魔力から成り立っておる。集められた魔力は結晶体となり、巨大な魔石、所謂コアと呼ばれて 

 いる)


 「そうなんだ。時たまできる大き目な魔石は、魔力の余剰なんだなね」


 (そうさな。ここまで大きいダンジョンで余剰がでるのも驚きであるが)


 「入口は広くして、だんだん狭くっと……あ!」


 (どうした? またよからぬ事を考えてないであろうな)


 「遅延性の毒を散布しよう! 天井にスプリンクラーつけなきゃ」


 (このダンジョンは生物では突破できぬな。ところでなぜ遅延性なのだ?)


 「即死では直ぐ逃げられてしまうでしょ?」


 (殲滅目的ならば間違いない選択だの……)


 頭に浮かべた構造図を元にダンジョンをいじりながら、凶悪な防衛設備を強化していく。デイルには無邪気な子供の様に映っていた。 

ブックマーク、評価★★★★★、レビュー、暖かな感想お待ちしてます!

大変喜んでクルクル回ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ