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58:もう1人の王

更新、遅れたぁああ

分岐が多くて悩みます。

 敵城内が騒がしくなるにつれ、諜報部隊『月下の蝶』の団長マルフェル・ドットの顔は緩み、この戦の手柄の分け前の交渉材料など考えていた矢先、マルフェルの笑みは鬼の形相に変わるのだった。


 聞こえてくるは、敵国の王であるメルド国王の賛歌の嵐。暴動を狙っていたマルフェルにとっては訳が分からない。情報を集めるにも、部下からの応答は無し。


「馬鹿な! ありえん!!」


 手塩にかけて育て上げた小数精鋭の諜報部隊の全滅。作戦の主導を握っていただけに、大きな泥を被ってしまった形となったマルフェルは、怒りと悲しみ拳を震わせた。


 軍議中であるにもかかわらず感情を露にするマルフェルに対し、皆関心を集めるが、結局の所固い守を内から崩す策は失敗に終わった。ならば本来通り外から攻める事しかないが、不安要素が多い為か、誰もk口を開こうとはしない。しばらくの沈黙が訪れる。が、滅炎槍龍騎士団のダルスの鼾によって破られる。


「起きろごらああぁあああああ」


「あ、あん? もう終わったか?」


「寝ぼけてっど脳みそ凍らせて摩り下ろすぞ」


「穏やかじゃねーな! 諜報屋の作戦はどうしたよ。あんだけ息巻いてたんだからな! お、そうか、これから突撃だな!?」


「状況が変わった。敵城の鉄壁は変わらず。マルフェルの策は何らかの魔術で阻止された」


「あんだよ~ならこれからは誰が先陣切るかの話し合いだな」


「あぁ、お前は気楽で良いな……」






★ ★ ★ ★






「刃を交えなければ相手も引かないか……」


 城壁の上にて、敵陣を一望する陸は、次の状況を想像する。


「いかにこちらの被害を出さず、奴らを追い払うかなんだけど、大将単騎なんて皆反対するだろうしな~」


(なあに、大将単騎駆けなんぞ魔王の宿命よ! はっはっは)


 のどかな青空の下、敵陣と睨み合いの最中に緊張感のないボヤキが木霊するが、本人はいたって無自覚である。


「黙って行ってこよっかな……」


「なにやらお困りの様子!」


 陸が振り返るとそこには壁のような巨漢。ゴブリンの王が聳え立つ。陸と目を合わせると、直ぐ様跪いた。


「我らゴブリン一同。陸様の配下に加わってからというもの、戦での戦果は皆無。のうのうと暮らし、ただ数だけ増やしているだけの存在。ここは我らに日ごろの恩を報いさせていただきたい!」


 陸が魔王として転生して、初めての部下である彼らを、陸は意外にも愛着が沸いていた。彼らの人海戦術で行なわれる農業や、個体によって千差万別の能力を発揮する者もいる。その著しい成長を傍から見ているのは面白くもあり、頼もしくもあった。


 だが、今こうして王自ら戦いに直訴し、命を散らそうとしている。上位種はともかく、普通のゴブリンと、多少成長した者達は戦火の渦に耐えられないだろう。


「陸様が心配されるのも承知! 戦える者達だけで挑みます故、どうか我らに報いの場を!!」


「わかった。そこまで言うのならば好きなだけ暴れてくるがいい」


「おおぉ。ありがたき幸せ!」


終始圧倒されながらも、陸は彼らを送り出す決意が生まれた。







★ ★ ★ ★






「敵、城内よりゴブリン多数!」


 偵察兵の声が天幕に響く。会議を遮る形となったこの知らせでの各隊長の考え、行動は様々だ。


「まってましたぁああああ! 緊急時防衛処置の1つ、我ら滅炎龍槍騎士団が敵を迎撃する!」


 団長ダルス・ニッケル捨てセルフを吐き、天幕を飛び出すと自分の部隊を即座収集し、迎撃に向かう。性格に難有りと思われている彼だが、部下からの信頼は厚く、兵の統率力は群を抜く。血の気の多い荒くれの集まりだからかもしれないが……


「都合がいい時だけルールを守るのね」


「それしか覚えてないんだろ? 我らは敵の動きを見つつ後方支援だが、敵は何を考えている。出てくる場面ではないと思うのだが」


「敵さんにも事情があるのでは? ゴブリンだけを見ると痺れを切らして暴走か、もしくは数の多さを利用して消耗戦に持ち込むのが狙いか」


「確かにどれ程の魔物がいるか分からんからな。硬い守りに数を言わせた消耗戦か。だが、雑魚がいくらいようが、同じだがな」 

 


 急速展開した滅炎龍槍騎士団が陣を敷き、迎撃態勢を取る。遅れること、各隊も魔法による迎撃態勢に入る。




――嫌な予感しかしない。


 鳳晶氷水騎士団の団長アクリ・メイヤは小隊長を集め指揮を取りながら疑念を払拭出来ずにいた。


――何故ゴブリンなのだ? 最下級にランクしている魔物が出てきた真意とは……


 


★ ★ ★ ★





 戦況は動く。湧き出るゴブリンの襲撃を滅炎龍槍騎士団の騎馬群が炎を纏い一つの塊りとなって迎撃を開始する。

 それを見るや、ゴブリン軍は左右に隊を分かれ、突撃を交すように道を開ける。


「城門を背に敵を避ける!? やはり下級。臆したか! このまま敵城内に突撃だ!!」


 団長の一声に団員が声で答え、勢いが増す。上空では魔法の打ち合いが激しく行なわれており、いくつもの破裂音が木霊する。


 滅炎龍槍騎士団が城門までもう少しの所で、今までに見たことの無い大きさのゴブリンが出現。人間の倍はあるであろう巨体に、巨大な盾と剣はその存在を圧倒的なものとする。


「ゴブリンキングよりもでけぇ、おもしれえええじゃねぇえか!! この勝負乗った!!」


 盾を前にどっしりと構えるゴブリンの王は、下半身の溜めのみで敵騎馬隊に弾けた。一瞬で間を詰められ、不意を撃たれた滅炎龍槍騎士団の面々は、目を点にさせていたが、盾と騎馬が衝突した衝撃が団員を襲った。


 炎は衝撃で消し飛び、突き出された槍は砕かれ、馬の首は折れ、騎乗していた人間は勢いそのままに投げ出された。その後は騎馬同士が玉突きを起こし兵が宙を舞う。その先には多数のソルジャーゴブリンが構える槍の針山。


「ぐ、くそがぁあああああ!」


 苦し紛れの火属性魔法も、火耐性を積み上げたレッドゴブリンには効果が薄かった。兵の断末魔と共に槍が無残にも人間を串刺しにしていく。


「魔法騎士、怖るに足らず!! 蹴散らせぇえええええ!!!」


「「「「「「「「ぐおおおおおお」」」」」」」」


 王の鼓舞は戦士を高ぶらせ、戦場を震わせた。

 


 

滅龍は炎龍とぶつけようかと思いましたが、ゴブリンのとっつぁんが暇そうだったから……てかこの気を逃すと彼らの活躍も無いかなと思い戦わせて見ます。多分泥臭くなりそうですが……

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