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魔王軍と一緒  魔王の魂と合体!?魔力無限でやりたい放題!  作者: おばっち
1章:セルクリッド編
44/74

44:祭

遅くなりまして……

盆休み入ってぼーっとして、小説漁って読み始めたら戻って来れなくなってしまったすまぬ。

「あ、スケベの炎竜君だ~。スッケベだ~」


「やめろ! 赤い暖簾だったから入っちまったんだ」


「あんた……闘牛じゃないんだからさ」


 炎竜はミニスにも煽られ始め、今この城の中で女性陣から一番信頼を失ってしまった男だろうな。セルシウスの目もかなり冷たい。この信頼を取り戻すにはかなり時間がかかるだろう。


「ねぇベースケ、今日魔法の練習付き合ってよ!」


「ベースケってなんだよ……練習? いいけどよ」


「やり~! ベースケはミニスから信頼を取り戻したよ!」


「なんでこうなった……」


「ふっ、頑張ってね。ベースケ」


「セルシウスくそっ……」


 何より仲良くやってそうでよかったよ。ミニスの魔法も大分出来るようになってきたようだね。タンニールのお陰だろうな。魔力を当てて反応を見て楽しんでいたからな。感覚が掴めて来たのかもしれない。


「タンニールから古代詠唱魔法っていうの教わったの! 長いからメモ見ながらやるね!」


「おう、流石長寿な竜だけあって物知りだな」


「えっと……古の焔に宿りし魂……怨恨の渦は混沌の序章……万物の霊長は繁栄と共に森羅の胎動を滅ぼすだろう……えっと」


「お、おい。まだ続くのか? 嫌な予感しかしないぞ……」


「……導きに叛きし堕天の女神は……えっと、汝、消え逝く魂に何を願う……」


「ん? 新しい遊びかいミニス?」


(これはまた、珍しくも懐かしいものだなぁ)


「陸様! 危険です!! ミニス、その詠唱は危険だ! ぐわぁ」


 炎竜がミニスに近寄り、強引に押さえようとしたが、ミニスに触れた瞬間に弾き飛ばされた。


「防御結界だと! 詠唱中に展開するのかよ」


「お、魔力吸われてるぞ?」


「マジっすか!?」


「……紅蓮の業火よ、酔い痴れ! ―豪炎大輪華ゴウエンダイリンカ―」


 詠唱が終わった瞬間、ミニスの体から炎が体から立ち上り、複数の炎弾が夜空で炸裂する。炎の色も様々で、球体に広がった炎は輝きを残しながら広がり落ちた。さらに炎弾が断続的に発射され、轟音と光の重なりが増えていった。


「これは花火だな。しかもスターマインだ」


流星炎弾スターマイン!?」


(知っておったか。昔は魔族領にも花火職人が多くいてな。詠唱の発音や魔力の波長で色や形が変わるようだ)


「デイルさんも見たことが?」


(おう、幼い時は良く見に行ったものだ)



「おぉーミニス! 凄いではないか! 古代魔法を発動させられるとは」


「タンニール、この魔法は?」


「うむ、これは古代人が良く祭りの時に使っていたものだ。ミニスには詠唱だけ教えたが、教えろ教えろと五月蝿いのでな。無理難題を押し付けて飽きさせようと思ったのだが、たまげたものだのぅ」


「……はは」


「詠唱中に防御結界と、他人からの魔力を強制供給? 他人の魔力の波形を術式で変換できるのか? かなり高度な魔術だね」


「まぁ、我のクラスになればこのような術式はお遊びよ! 見直したかな?」


「ねぇ、これ止まんないよ?」


 その後、陸の魔力を吸い続けながら続けられた花火大会は、音に驚いた魔族達が外庭に集まり、次第に宴会騒ぎと変わったのだっった。




★★★




「こんな所にいたのか」


 花火大会が終わり、魔物立ちでごった返していた外庭は閑散としていた。


「楽しそうでいいわね」


 テリスは外庭の淵に座って外を眺めるようにして座っていた。遠くにはセルクリッド王国の町の光も見えてくる。


「寝かせていた部屋から居なくなったと聞いて探してみたらここに居たのか。こいつら娯楽に飢えてるからな。ちょっとしたことでお祭り騒ぎさ」


「そう、これから私はどうしたらいいのかしら?」


「俺はベルゼブブに頼まれてあなたを助けただけだ。報酬も貰ったし、どうこうするつもりはないよ」


「でも、あなたは私の仇よ。ここで逃せばまた襲いにくるわ」


「なんだ。まだ会ってなかったのか?」


「何いってるの?」


「ほら」


 陸の指差す方には霊体のベルゼブブが他のエンティティと混じって、肉体自慢ならぬ霊体自慢をやっている。


「はっはっは! 我のこのポージングに勝る者はおるかな?」


「「「「おおぉ! 美しい」」」」


「拙者が参ろう。ふぬっ!」


「「「「「おお!!!」」」」


「やりおるな服部どの!」


「ふっふっふ。若いものにはまだまだ負けておれぬ!」


 若いものってあんた死んでるじゃんか……


「なっ、何してるのよ!」


「おぉ! 目覚めたかテリス。こやつらもなかなかやりおっての! 競っておったのだ」


「競ってって……じゃなくて、なんで!? こんな生命力のある霊体は見たことがない……」


「そうとも、我もテリスの術を知っておるから分かるが、自然ではけして生まれえることの無いレベルだの」


「というあなたもそうなのだけれども、どういうことかしら? 術者から魔力を供給しないがかぎり彼らはここまで自由に動けないわ」


「あぁ、それは勘違いだ。あんたら死霊魔術師ネクロマンサーは魔力を使って操るからそう思うかもしれないが、俺らみたいに高位の霊体を手に入れた俺たちは実態と変わらない」


「馬鹿な……」


「はっはっは! どうも陸の魔力に当てられるとそうなるらしいぞ。我も御覧の有様だ! はっはっは!」


「全くっ! もう呆れた。私もしばらくここに居させてもらうわぁ」


「あぁ、かまわないよ。部屋は結構余ってるんだ」





★★★




「陸様、メリア・ベリオットと名乗る女性が見えておりますが」


「来たか」


 花火大会から夜が明けて日が昇った頃、メリアが陸の城に訪ねてきた。メリア・ベリオットとは、セルクリッド王国の貴族で、陸軍幹部のアルドレット・ベリオット侯爵の愛娘であった。彼女は武に長け、勇猛果敢に単騎で突っ込む姿は猪武者と呼ばれ、アルドレット・ベリオットは頭を悩ませていた。敵陣に突っ込んで、罠に嵌められては敵わないと娘思いの父ベリオットは偵察部隊に娘を一時配属させ、冷静さを見に付けて欲しかったのだが、冷静さを身に付ける前に、ミニスの虫取り作戦を見事妨害に成功させる事件を起こしてしまうのだった。そんなこんなで陸と面識を持ち、アンデッド襲撃の際にはメリアが陸に救援交渉を行なうことで、セルクリッド王国の一命を取り留めたのだった。


「お久しぶりです。陸様」


「お久しぶり、メリア卿。大分国のほうも落ち着いたようだね」


「えぇ、お陰様で。殆どの瓦礫を撤去していただいたので、部隊が迅速に動けました」


「たいした事じゃないよ。今日はどうしたんだい?」


「はい、非公式ではありますが、セルクリッド王との面談の取り付けが出来ましたのでそのお迎えにあがりました」


「そうか、そんな頃だと思ったよ。うちは護衛を何人か付けて同席させるけどいいかな?」


(カチコミにいった国から感謝されるってのも変な話だわな)


「えぇ、此方も王護衛の為、軍部の方に同席させますので」


「よし、じゃあいこうか」


(政治の場での話合いの発言は命取りだ。心せよ)


(頼りにしてるよデイルさん)


 

 

 馬車に揺られること2時間。そもそも走ったり、飛んで行った方が圧倒的に速いのだが、折角迎えに来てもらったのでと好意に従うことにした。隣に座るメリアは妙にそわそわしていたが、陸は彼女が大きな勘違いをしている事に気付いてはいない。馬車での移動中、何度か魔物、野犬の類に追いかけられたが、馬車を護衛する騎士達が追い払っていた。


「俺らも手伝おうか?」


「いえ! これは我々の任務ですので。お客様に手を煩わせるわけにはまいりません」


「そうですわ、陸様はここでのんびりしていて下さい。」


「そ、そう」


 2時間もの間、少し異様な雰囲気のなか、暇を持て余した陸の気分転換さえもさせて貰えず、ゴトゴトとただ馬車に揺られる陸であった。来賓ようの馬車といってもサスペンションなども無く、道も舗装されている訳では無い為、乗り心地はけして良くないのだが、此方の世界ではこれが持て成しなのだから、甘んじて受けるしかない。


「街の被害はどうだった?」


「えぇ、多少の犠牲者は出ましたが、勇者エミリー殿達の避難誘導もありまして、多くの国民が城に非難する事が出来ました。あと、魔王襲撃の際に現れたゴーレム達に助けられたという人も多くいて、魔法省は現在そのゴーレムを調査しております」


 あぁ、そう指示してたしな。バエル達お疲れ!


「謎のゴーレムね……」


「実は陸様の御力では? わが国にはゴーレムを扱う魔術師は居ませんので」


「え? いないの!?」


「え、えぇ。では本当に?」


「いやいやいや」


 フェブル、他にも術者は居るって言ってたじゃんか……


「国は術者に対し、名誉と恩賞を与える準備があると名言しております。今まで名乗り出てきた似非魔術師も居ましたが、特徴が異なる為、確定した人物が現れていないのです」


「似非魔術師ね……」


「お恥ずかしいながら、我が国にも他人の功績を奪い取ろうとする輩が存在しているのも事実。審査は厳しくやっております。大概の者が見かけ倒しであったり、数が足りなかったり、動きが悪かったりなど」


「成る程ね」


「それでは陸様なのですね!?」


「……お、城が見えてきたぞ!」


「そうやって誤魔化すのですね」


 否定しても信じてもらえそうもないので、陸は肯定しない事にした。メリアは白々しい陸の横顔を見ながら心の中で溜息をついたであろう。それ以上追求は無かった。




★★★




「報告します。先ほどメリア卿を乗せた馬車が城に到着したとのことです」


「そうか、不可思議なことも多いが、一度会って見るのも良いか」


 兵士からの報告を受け、魔法省大臣デルメルは咥えていたパイプを放し、白い煙り溜息交じりに噴出した。


「あんたの護衛はどうするんじゃ?」


「殺そうと思えば、今頃この城ごと吹っ飛ばしてるだろうよ。お前さんと、軍部の手練を数人でいい」


「魔王と人間が話し合うなんぞ、非公式でも初めてじゃろな」


「そうだろうな。鬼が出るか蛇が出るかだな」


 それからしばらくして、魔族と人間の恐らく初めてであろう会談が行なわれる事となった。

詠唱は厨二全快で!

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