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魔王軍と一緒  魔王の魂と合体!?魔力無限でやりたい放題!  作者: おばっち
1章:セルクリッド編
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43:城で一息

 巨大アンデッド討伐からしばらく経ち、陸達は気を失っているテリスに護衛を付けて城に戻した。国の機能が回復するまで暇だったので、セルクリッド国の復興の手伝いをする事にした。犠牲者はバエル含むゴーレム達に護衛させていた甲斐があって少なかったが、建物の崩壊が思ったより多かった。アンデッドに放った魔法はアンデッドだけでなく、建物にも著しく影響があった。もちろん巨大化したテリスの通り道だけ綺麗に建物がなくなっている。


「あそこに1人いるな」


 陸は熱感知スキルで人間の体温感知し、何人か生き埋めになっている人を救出している。


「取りあえず瓦礫撤去と、人命の救出かな」


(ここまでこの国が派手に壊されたのは初めてじゃないかのぉ)


「やっぱり歴代勇者が強かった?」


(そうさな。魔族領でも何かと話題になるからな。攻め入ろうとは思わんよな)


「でも、デイルさんは攻め入ったのはなんでなの?」


(そりゃ強いところに勝負するのは戦士の性というものだろうな)


「なるほどねぇ」


 現場は思ったよりも混乱も無い。と言うのも人が城に篭っていて少ないのと、警備兵立ちの統率が素晴らしいからだと思う。この国の兵士も大変だなと人事のように陸は思いながら大通りにまで崩れてきている建物の屋根の残骸を撤去し、一服していると赤い服が良く目立つ騎士が近付いてくるのが分かる。


「君たちは見慣れない冒険者だね? とは言え尽力感謝する。私はセルクリッド近衛騎士の長をやっているメル・ローレンスだ。我々は国民を守るだけで精一杯で応援に行けずに申しわけなかった」


「御気になさらずに。我々も目的あっての事ですから」


「そういって頂けると助かる。だが、我々だけではあれを倒せたか考えると難しいものがありますな。ええっと……」


「あぁ、すいません。早乙女 陸と申します。陸がファーストネームになります」


「ほほぉ、見慣れないと思いましたが、文化圏が違う程遠い所から来ていたのですかな」


「えぇ、我々の国ではファミリーネームが先に来るんですよ」


「成る程。異国の冒険者であれど、私達の王国を救ってくれた事には違いは無い。救ってくれたばかりか休まずこのような作業を行なっているなんて、我々の仕事が無くなってしまいます。あなた方は英雄でありますので、後は我々にお任せ下さい」


「そうですか、分かりましたお任せします」


 陸が言い終わるとメル・ローレンスは「では!」といって踵を返し立ち去っていくのだった。


「一度城に帰るか~ 眠いや」


 徹夜で行なわれたアンデッド掃討作戦は陸にとっては初めての長時間の戦闘であった。体はそこまで疲労は溜まっていない筈だが、気持ちの持ちようだろう。


「新しく作った風呂にでも入ろう……」

 



★★★




 アンデッド襲撃から2週間が経過していた。セルクリッド王国も多少の混乱を残しつつも、行政の機能は復活しつつあった。街の復興も邪魔な瓦礫や家屋を陸たちによって撤去されたお陰でかなりスムーズに行なうことが出来たようだった。


 陸はと言うとあれから城に戻り、大浴場に入ったり、子供たちと遊んだりと寛ぎながら生活を送っていた。


「百目、湯船に浸かるときぐらいリラックスしててもいいんだよ?」


「何分、これが自分の性分なので……」


「風呂場でそこまで背筋伸ばしている人見たことないよ! はははっ」


「すいません。変ならば頑張って直します」


「いや、いいよ。今度から健さんって呼ばせてよ」


「健さんですか? 陸様が仰るのならば」


「そのうち自分、不器用ですからって言いそうだな」


 大浴場は基本的には全員に開放して入るが、幹部より下は遠慮してなかなか入ろうとはしない。まあ人数も多いし、全員一遍は流石にキャパシティーオーバーで入れないけどね。一応女子風呂と男子風呂を分けて作ったのだけれど、炎竜が誤ってか故意かは不明だが、女子風呂控え室で氷付けにされていた。どうやら動けないだけで生きているようだが、3日は動けなかったようだ。その間女子達の冷たい視線を浴びつづけたという。なんと恐ろしい地獄。目覚めてしまった人には御褒美と言われそうだが……炎竜が危ない趣味に目覚めない事を祈る。


 子供たちも皆元気だ。旧魔王軍の千人隊長のベッケルは男の子2人に剣を教えている。最近ではソルジャーゴブリンなら二人掛りでまともに戦えるまでに技も覚えてきている。流石に1人では体格が違いすぎるのでまだまだだけど、将来性はあるな。そもそも剣術を子供のうちから習うなんて貴族だろうからな。冒険者は皆自己流だしね。


「あ、陸様。お疲れ様です」


「お疲れ様です!」


陸を見るや否や駆け寄って挨拶にきた。レオとルッツだったかな。とても体育会系に教育されているなと思う。今は技の型と精神を鍛える時期なのか素振りがメインのようだ。あんまり運動部に縁がなかったけど、友人は上下関係が厳しいと言っていたのを思い出した。


「よし、俺に打ち込んできな!」


「「え!」」


 陸が木刀を軽く中段で構え、レオとルッツに向き合う。


「躊躇うな! 戦場では格下も各上もない!」


 ベッケルの檄が飛ぶ。


「訓練で強くても、戦で勝たなければ意味がない! 真の強さは心にある!」


「う、うおおおおお」


「やああああああ」


 それから訓練場には気合の入った声がしばらく聞こえたと言う。



 ゴブリンにとっての料理とは、生で齧るか、焼いて食うという原始的な物でしかなかったが、強化に伴い知能が付いて料理を覚えた。覚えてからというもの自分達で試行錯誤を繰り返し、陸の知識も上達への手助けにもなってはいるが、短期間で多くのバリエーションを増やしていた。農業で作られる品種も増え、香辛料、調味料の開発も進み、陸の世界での料理も再現可能までに至っている。だがしかし、周辺に海は無く魚介の料理は未だ川魚を焼いたりする程度であった。唯一塩は隣国のベルセルドにて、山脈から赤塩と呼ばれる岩塩が大量に採掘されている。故にこの周辺では塩は山から取れるものという認識が強かった。


「コレ、カワ、ムイタラ、コレ、キル」


「「はーい」」


 今まで「ギギギ」「ガウガウ」しか喋れなかった下級のゴブリン達も片言ではあるが、言葉を使えるようになり、集団作業での効率がかなり向上したように思える。今ではマルシア邸より保護した彼女達アリアとマリーで料理の勉強中であった。

 アリアは金髪が脱色して白に近いプラチナブロンドのショートカットでウエーブのかかった髪。マリーは金髪に灰色が混ざって明るいサンディブロンドのロングをバックで纏めてポニーテールにしている。二人は保護されてから料理に対する関心がかなり高かった。と言うのも保護される前では料理と呼べるような物は口には出来ず、食べ残しの残飯が貰えれば当りの様なものだった。彼女たちは、自分達で覚えられれば、何処でも美味しい料理が食べられると思ったのかもしれない。最近ではテンサイという大根のような植物の栽培を大規模に行なっている。というのテンサイから砂糖が抽出されるからである。テンサイは温度、雨量、日照量などが細かい為、栽培が難しいとされているが、陸のダンジョンでは環境も全て変えられてしまう為、大量に作る事ができた。第一次御菓子ブームの到来だった。砂糖菓子、水あめから始まり今では勢いそのままにショートケーキまで作り出すまでになった。手際良く作業するゴブリン達のステータスを覗き見た陸は、ゴブリンの名前がクック・ゴブリンになっていたのには苦笑いするしかなかった。



毎度遅くなって申しわけない。



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